窃盗は犯罪。殺人も犯罪。どちらも罰に処せられるのは当然のこと。

 違法賭博は犯罪。八百長も犯罪。どちらも罰に処せられるのは、これまた当然のこと。

 

 ただ、窃盗と殺人では求刑の重さに違いがあるように、国によっては合法どころか「紳士の嗜み」とされることもある賭博と、スポーツの根幹を破壊しかねない八百長行為とでは同じ「罪」でもその重さはずいぶん違う、とわたしは思う。巨人・福田投手の行為を擁護する気はさらさらないが、八百長と同列に論じる報道には違和感を覚える。

 

 さて、サッカー界の方でも6日に、注目すべき動きがあった。来季のJリーグが2月に開幕する、というニュースである。

 

 ご存じの方もいらっしゃるだろうが、Jの日程についてはずいぶんと長い間、討議がもたれてきた。中でも、開幕時期を現行のままでいくのか、欧州に合わせた秋開幕にするのかという問題は、地域によっては死活問題となりかねないこともあり、答えの出ないまま前例踏襲の形をとってきた。

 

 だが、2月の開幕が決定的になったということは、Jリーグとしては大きなハードルを越えたことを意味する。というのも、天皇杯の決勝が行われるのは1月1日。決勝に進出した2チームにとっては、1月の残り30日間と、2月の何日間だけがオフシーズンということになるからだ。

 

 これならば、欧州のチームとあまり変わらないではないか。

 

 最近では過密日程の影響もあり、J同様に多くのリーグが日程の前倒しをするようになったが、元来、ブンデスリーガなどはクリスマスのあと中断期間に入り、再開幕は2月中旬というのが常だった。開幕の時期こそ違え、リーグ戦が行なわれている時期はほぼ日本と同じだったのである、

 

 2月の開幕が決定的になったということは、今後、欧州のカレンダーに合わせた開幕時期を設定する際、常につきまとってきた「冬場の日本ではサッカーができない地域がある」という問題が、曲がりなりにもクリアされたことを意味する。

 

 2ステージ制が取られている現在、開幕時期を動かす意味は以前より減った。ただ、Jとしても現行のシステムに固執するつもりはないだろうし、もし再び1シーズン制に戻すことになった場合、2月でもサッカーができるようになっているのは大きい。1カ月半程度の中断であれば、リーグとしての継続性を維持できることは、ブンデスリーガによって証明されているからである。

 

 ただ――。

 米国のNFLは、氷点下の中でも普通に試合が行われる。寒い時期に試合ができないのは、日本のスポーツ・インフラが貧しいから、でもある。夏冬4度目の五輪を開幕する国ならば、寒冷地のファンが冬でも試合を楽しめる道路、スタジアムがある国であってほしい。

 

<この原稿は15年10月8日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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