現地時間11日、ラグビーW杯イングランド大会予選プールBの日本代表(世界ランキング11位)は、米国代表(同16位)に28-18で快勝した。PGで先制を許した日本は、7分にWTB松島幸太朗(サントリー)のトライなどで逆転。28分にはWTB藤田慶和(早稲田大)にもトライが生まれ、17-8で前半を終了した。後半はPGを互いに決め合うと、22分には途中出場のNO.8アマナキ・レレイ・マフィ(NTTコミュニケーションズ)のトライで日本がリードを広げる。31分に1トライ1ゴールを返されたが、37分にはFB五郎丸歩(ヤマハ発動機)がPGを決め、10点差で白星を手にした。日本は通算成績3勝1敗、勝ち点13。予選プールB3位で大会を終えた。

 

「とても満足している。いいプレーをし、素晴らしい勝利だった」。今大会限りで退任するエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は胸を張った。10日にスコットランド代表がサモア代表を下していただめ、目標であるベスト8への道は既に閉ざされていたが、日本ラグビーの新たな歴史を刻んだ。

 

 先制したのは米国だった。5分にSOアラン・マクギンティ(ライフ)にPGを決められ、日本は3点のリードを許した。だが日本も2分後に試合をひっくり返す。右サイドで起点をつくると、SH田中史朗(パナソニック)が左に展開、クレイグ・ウィング(神戸製鋼)、HO堀江翔太(パナソニック)とつないで、最後は松島。インゴール左へと飛び込んだ。松島が今大会初トライを挙げ逆転に成功する。コンバージョンも五郎丸が着実に決め、7-3とリードを広げた。

 

 今大会初勝利を目指す米国は、3日前の南アフリカ戦のメンバーを落としてでもこの試合に懸けてきた。波状攻撃を仕掛け、22分に飛ばしパスから右サイドに振るとWTBタクズワ・ングウェニア(ビアリッツ)がトライを挙げる。7-8と再びリードを許した日本。28分に日本の至宝が輝きを見せる。ゴール前でモールを組んで、押し込んだ。インゴール目前で後方に入ってきた藤田がボールを奪うようにして掴むと、間をすり抜けてインゴールへ滑り込む。藤田は「全員でとろうと言っていた。みんなで押してのトライ。あそこは僕のトライじゃなくてFWのトライだと思います」とチームメイトたちに感謝したが、今大会初出場となったチーム最年少が機転を利かせたプレーだった。コンバージョンも決まり、14-8と日本はリードを奪い返した。33分にもPGで加点し、17-8で試合を折り返した。

 

 後半に入ると、五郎丸とマクギンティがPGを決め、3点ずつ加える。その後、互いに得点を奪えぬ、膠着状態から抜け出したのは日本だった。22分、敵陣深くで得たラインアウト。堀江のスローイングからLOトンプソン・ルーク(近鉄)がボールと掴む。そこからモールが崩れたところをマフィが抜け出し、インゴール左へと飛び込んだ。しかし、米国も意地を見せる。31分、マクギンティが右サイドへの飛ばしパスを送ると、フリーで受けたFBクリス・ワイルズ(サラセンズ)にトライを挙げた。コンバージョンも決め、25-18。1トライ1ゴール差に迫られた日本だったが、試合終了間際に正面やや右の位置で米国が反則を犯す。約40メートル以上の距離も迷わずショット選択した。蹴るのはもちろん五郎丸だ。時間をかけてルーティンを行い、落ち着いてPGを決めた。

 

 残り時間を5分を切り、米国の攻撃を日本は今大会再三再四見せてきた低いタックルで凌ぐ。ラスト1分で途中出場のWTBカーン・ヘスケス(宗像サニックス)がタックルを突き刺し、ボールを奪取。日本は攻撃を継続しながら、時間を使う。80分を超えたところで、五郎丸がサイドに蹴りだしてノーサイドの笛が鳴った。28-18――。これまで7度のW杯で1勝しかできなかった日本は、今大会だけで3つの白星を重ねた。決勝トーナメント進出はかなわなかったが、大きな手応えを掴んだはずだ。優勝候補の南アフリカを破るなど、世界を驚かせた。パスワークだけでなく、パワーも必要とされるラインアウトとスクラムはでも十分通用することを証明した。世界を相手にキャプテンのFLリーチ・マイケル(東芝)は「世界から日本の戦いを見て、リスペクトしてくれると思います。このまま続けていきたい」と語った。

 

 次回の2019年W杯は自国開催を控えている。松島が「僕らのスタイルはアタッキングラグビー。このままジャパンの定位置となって、歴史を継続させたいです」と口にすれば、藤田は「ここで終わりじゃない。次は日本でW杯が行われる。それのステップだと思うので、ハードワークしてベスト8、ベスト4に行けるよう頑張りたいです」と豪語した。22歳の両翼が誓った“継続と進化”。それが、ここからスタートする日本ラグビーのテーマとなる。

 

(文/杉浦泰介)