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(写真:「日本ラグビーをもっと盛り上げていきたい」と語るリーチ主将)

 13日、ラグビーW杯イングランド大会に出場した日本代表選手団が帰国し、都内で会見を行った。予選プールBを戦った日本は3勝1敗と過去最高の成績を残したが、惜しくも決勝トーナメント進出はかなわなかった。日本代表のキャプテンを務めたFLリーチ・マイケル(東芝)が「3年前に立てたベスト8という目標は達成できなかったですが、W杯で3勝したことは日本ラグビーにとっては大きなステップ。このチームのキャプテンとして誇りに思う」と語れば、今大会限りで退任するエディー・ジョーンズヘッドコーチ(HC)は「新しいラグビーの歴史をつくりました」と胸を張った。

 

 エディーHCは自らが選んだ31人の戦士たちを「日本の新しいヒーローたちです」と称した。「ゴロウ(五郎丸歩)の真似をして子供たちが練習をしているでしょう。ハタケ(畠山健介)のようにスクラムを組んでいるでしょう。ホリエ(堀江翔太)のようなスローイングの練習をしているでしょう。モールからのトライ。フジタ(藤田慶和)の真似をしているでしょう。このヒーローたちの功績です。日本ラグビーを変えることができました」

 

151013rugby6 FBとして最後の砦となり、キッカーとしても多くの得点を積み重ねた五郎丸(ヤマハ発動機)は全4試合にフル出場した。プレースキック前のルーティンは国内でも大きな話題を呼んだ。「4年前、廣瀬(俊朗)前キャプテンたちと『憧れの存在になりたい』と話していました。小さいことの積み重ねでやってきた結果が子供たちに憧れられる存在になったことはうれしい。2019年に向けて、国内を盛り上げることが最大の任務だった。まずはその任務を果たせた」。19歳で初キャップを刻んでから、10年かけてW杯の大舞台に立つことができた。五郎丸は自身初のW杯を「楽しく最高な時間だった」と振り返った。

 

151013rugby4 優勝候補の南アフリカを撃破し、サモアと米国にも白星を重ねた。これは31人の戦士たちが一丸となったことで掴み取った勝利とも言える。多くの選手がチームの絆や結束力を口にした。SO廣瀬(東芝)とHO湯原祐希(東芝)はいずれも一度もピッチに立つことはかなわなかった。それでもベンチ外となった悔しさを押し殺し、チームのために尽くした。その姿を他の選手はしっかりと見ていた。SH日和佐篤(サントリー)は「試合に出てない人も嫌な顔をひとつせず、チームのために頑張ってくれましたね。終わってからゲームに出ていたメンバーだけでなく、ゲーム外のメンバーも泣いていた。すごくいいチーム」と口にすれば、チーム最年少のWTB藤田(早稲田大学)は「(2人は)ひとつも文句も言わず、一番ハードなことをやっている。相手の研究をして、アタックをAチームの人たちにぶつけている。そういうところがあったからこそ、勝てた。結束力がジャパンの一番の強みじゃないかと思います」と語った。一方の廣瀬は「みんなでしんどい練習をして、つらい時は仲間が助けてくれる。そういうチームのロイヤリティーが強み」と述べれば、湯原「31人みんなで勝ちを獲りに行く。サポートできればサポートする」と毅然とした態度で話した。

 

 過去最多の3勝を挙げた日本だが、多くの選手が「ここで終わりではない」「ここからがスタート」と口にした。強化を任される岩渕健輔ゼネラルマネジャー(GM)も「3勝1大会で挙げたことはない。それを成し遂げた選手を誇りに思う。これから2019年にW杯があることは幸運であると同時に、気を引き締めてもう一段階強化を進めていかないといけない。今回のチームがやってきたことはもう過去のことなので、これから違うステージに向かっていかなければいけないと思います。今回の4年間の経験を次に生かしてやっていきたいと思います」と、視線は先を見据えている。

 

151013rugby3 エディーHCは「イングランドよりも上位で大会を終えたのは素晴らしい偉業です。ですがサクセスストーリーは次のチャプターが大事。新しい能力のある選手を発掘すること、今回のグループも向上し続けることが必要です」と継続と進化を訴えた。その一方で「日本のラグビーは優秀な選手はいるけれども、ラグビー文化はパフォーマンスをすることにはない。高校、大学、トップリーグで高いパフォーマンスをするための練習をしていない。規律を守らせるため、従順にさせるだけでは勝てない。選手の質は高い。この先、正しい方向に進むにはマインドセットの変化が必要です」と辛辣な意見も。とはいえ、これは指揮官が度々口にしてきたことだ。

 

 ラグビーはピッチの上では継続と破壊の連続である。イングランドで得た自信を継続しつつ、日本に向かって壁を突き破る。文化を根付かせるため、ゲインあるのみである。

 

(文・写真/杉浦泰介)