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(写真:2015年の世界選手権混合団体で銅メダルを獲得した葛西<左>と伊藤)

 26日、全日本スキー連盟(SAJ)は都内で会見を開いた。所属チームで選手兼監督を務めるジャンプ男子・葛西紀明(土屋ホーム)と、その葛西の指導を仰ぐ伊藤有希(土屋ホーム)の2人が登壇し、2015-2016シーズンに向けて抱負を語った。伊藤は「今シーズンは大きな大会がない分、W杯に集中できる」と話した。葛西は「W杯最年長優勝記録を伸ばす」と自身の持つ記録の更新に意欲を燃やす。ジャンプのワールドカップは男子が11月20日にドイツ・クリゲンタールで、女子が12月4日にノルウェー・リレハンメルでシーズンの幕が上がる。

 

 新シーズンに向けて、師弟コンビが意気込みを語った。伊藤は世界選手権でしか表彰台に上がれなかった昨シーズンを悔やんでいた。その分、今シーズンにかける思いは強い。今夏は陸上トレーニングに重きを置いて過ごしたという。

 

「体で“ここが優れている”と自信を持てる部分がない。スピード、パワーといったジャンプの技術に繋がるトレーニングをしてきた」と課題克服に時間を費やした。さらに、昨シーズンの世界選手権前に替えたスキー板について「最初はあまりなれなかった。コツを掴んだらスキー板と一体になって飛んでいるような感じがする」と手応えを口にした。

 

 一方の葛西は、記録にこだわりを見せる。「W杯での最年長優勝記録(42歳5カ月)を更新したい」と目標を掲げた。W杯個人の出場回数は477試合。節目の500までわずか23試合だ。「今シーズンで500試合に達するんじゃないかなと思っている。そこの記録も狙っていきたい」と大台突破を目指す。

 

 大ベテランが見据えるのは、これだけではない。「去年は1勝しかできなかった。2勝、3勝、もしくはもうちょっと勝てれば、ワールドランキングの総合優勝も見えてくる」。トップの座を狙う目は鋭い。

 

 そのためには、厳しい調整も欠かさない。43歳になり既に4回も断食を行っている。「11月に5回目をやろうかなと考えている」という。トレーニングと並行して行なう断食は精神的にきついはずだが、「決して負けたくない。勝ちたいという気持ちが強いから耐えられる」。不惑を越えた今もなお、レジェンドであり続ける理由を語った。

 

 今シーズンのルール改正も「僕には有利」と葛西は考えている。両足を40センチ幅に広げて身長、股下を計測しスキー板の長さに反映させるルールになっている。その結果、葛西は股下が2センチ下がった。しかし、スキー板の長さは変わっていないという。「その分有利に働いていると思う。微々たるものだが、凄く大事。世界のトップに立つためには、この微妙な数センチが勝敗を分けるんじゃないかなと思う」

 

 数々の記録を打ち立てた葛西に、迷いはない。

 

(文・写真/大木雄貴)