9月29日(火)、クラブライセンス交付第一審機関(FIB)から、愛媛FCに対して「2016シーズンのJ1クラブライセンス付与の決定がなされた」との通知があった旨が、クラブ事務局より発表された。これにより、残りのリーグ戦、およびプレーオフと公式戦においてチームが頑張り、ピッチ上で結果を残して成績面での昇格条件を満たすことができれば、晴れてJ1リーグへの参戦が認められる運びとなったのである。

 

 一時は、選手たちの頑張りがあり、成績面で結果を残したとしても、現状における各種の環境面での不備が露呈してしまった場合、J1への道が閉ざされてしまうのではないか……と心配していた。今回、その不安な状況を回避できて本当に良かったと胸を撫で下ろしている。

 

 混乱の中、スタートした2015年のシーズンだったにも関わらず、J1クラブライセンス付与にまでたどり着けたのは、ひとえに地域の自治体や支援者(スポンサー)、サポーターや事務局スタッフなど、たくさんの方々の理解と支援があったからこそであり、その点に関しては、ご努力いただいた皆さんには感謝の気持ちでいっぱいである。おかげさまでシーズンの最後の最後になって、「選手たちの努力が報われない」というような非情な事態には陥らずに済みそうだ。

 

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(写真:松山市野外活動センターのサッカーグラウンド)

 しかし、今回の「J1クラブライセンス付与」については特記事項が付随しており、今後、クリアしていかなければならない大きな問題も数々残っているのが事実である。たとえば、トレーニング施設の整備。クラブハウスに隣接した常時、使用できるフルサイズの天然芝ピッチ1面以上が必要なのだが、準備段階という状況だ。現在、準備を進めている当該のトレーニング施設は、松山市野外活動センター(松山市菅沢町)にあるサッカーグラウンド。美しく整備された天然芝のピッチではあるが、肝心のクラブハウスはなく、建設中となっている。

 

 クラブハウス建設や室内備品の購入には、当たり前だが多額のお金が必要で、事務局では建設費用の支援金募集を行っている。サポーターや支援者だけでなく、多方面に協力を呼びかけてはいるが、目標の金額までには届いておらず、厳しい状況と言える。来年の1月31日(日)までに、上記のトレーニング施設が整備されていないと、ライセンスを取り消される可能性もあるので、それまでには費用の問題も解決しておきたいところだ。

 

 さらに大きな課題として立ちふさがるのが、スタジアムの問題。提示された特記事項には、「ニンジニアスタジアムの屋根のカバー率の基準未充足」が謳われており、改善策の提示が必要となっている。クラブライセンス交付規則では、「スタジアムの屋根は、観客席の3分の1以上が覆われていなければならない」と定められているそうだ。『いや待てよ……。それでもニンジニアスタジアムは全面改修工事で、ゴール裏席やバックスタンド席も立派になったし、大きな電光掲示板も完成している。メインスタンドは、まだ改修中だが、大きな屋根が設置されるのでは?』と素人考えを巡らせていたのだが、それは甘い考えだったようである。

 

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(写真:ニンジニアスタジアムの屋根の新設工事)

 ニンジニアスタジアムの改修計画を閲覧してみると、工事後のメインスタンドの屋根は、とても小規模でカバーする範囲も小さいものだったのだ。改修により、メインスタンド全体をカバーするような大きく立派な屋根がつくのかと思いきや、私の想像よりも、ずっと品疎な感じの屋根で残念としか言いようがない。

 

 やはり、2017年開催のえひめ国体に間に合わせるための安易な改修計画だったのだな、Jリーグのホームスタジアムとしての機能は想定していなかったのだな、と改めて落胆している次第である。これでは、基準となる「3分の1」のカバー率など、夢のまた夢のようにも思えてくる。愛媛FCがJクラブである以上、スタジアム問題は今後も私たちを悩ませ続ける障壁なのかもしれない。

 

 J1昇格プレーオフ進出が見えてきた今、愛媛FCを見つめる世間の目も変わりつつあり、サポーターや支援者も徐々にだが、その数を増やしつつある。前述以外にも、J1クラブライセンスを維持するために必要な課題が山積しているわけだが、注目を浴びている今こそ、何かひとつでも課題をクリアできるチャンスなのかもしれない。郷土を愛する大勢の方々に、これらを認識していただき、この機会に少しずつでも解決に向けて前進できるように努めていきたいと考えている。

 

【お知らせ】

 愛媛FCでは「クラブハウス建設支援金募集」を行っております。J1クラブライセンス維持のために必須となるクラブハウスの建設に何卒、皆様、ご協力の程、よろしくお願い致します。

 詳しくは、下記ホームページをご覧ください。

http://ehimefc.ecgo.jp/page0214.html

 

<松本 晋司(まつもと しんじ)プロフィール>

1967年5月14日、愛媛県松山市出身。愛媛FCサポーターズクラブ「Laranja

Torcida(ラランジャ・トルシーダ)」代表。2000年2月6日発足の初代愛媛FCサポーター組織創設メンバーであり、愛媛FCサポーターズクラブ「ARANCINO(アランチーノ)」元代表。愛媛FC協賛スポンサー企業役員。南宇和高校サッカー部や愛媛FCユースチームの全国区での活躍から石橋智之総監督の志に共感し、愛媛FCが、四国リーグに参戦していた時期より応援・支援活動を始める。


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