飲みたい1二宮: 32年間に及ぶ現役生活お疲れ様でした。今回はそば焼酎『雲海』のソーダ割り、Soba&Sodaを飲みながら、プロ野球について語り尽くしたいと思います。

山本: 宜しくお願いします。おっ! 雲海さんのそば焼酎はスッキリしていて飲みやすいですね。今のプロ野球選手はよく焼酎を飲むんです。80年代から90年代前半までは、ウィスキーやブランデーばかりでしたが、いつからか焼酎に変わりました。

 

 

二宮: 昌さんも焼酎は好きですか?

山本: よく飲みますよ。僕は焼酎を飲むと水平飛行に入ってしまうんです(笑)。少し酔ったなと思った時には、焼酎に切り換えますね。そうすると、延々と飲み続けられるんですよ。

 

二宮: 延々とですか?

山本: 朝まで飲んでも、テンションは変わらないので、「酒癖が悪い」と­言われたことは一度もありません。テーブルの上に置いてある『那由多の刻』はよく飲んでいましたよ。ウィスキーのような口当たりで美味しいですよね。

 

 ソフトバンク・高橋、素材は一番

 

二宮: 早速ですが、今年のドラフト1位で指名された投手を、数名のピッチングフォームの動画を見ながら解説していただきたいと思います。

山本: ぜひぜひ! それは面白いですね。まずは……中日の1位・小笠原慎之介くん(東海大相模高)からいきましょう。彼はいい肩をしていますよ。フォームを見ると、パワー系タイプのピッチャーですね。直球は素晴らしい。

 

二宮: 今年の甲子園優勝投手です。すぐにでもプロで通用しそうですか?

山本: うーん。直球に比べて変化球を投げる時にテンポが遅くなるのが気になりますね。やはりアマチュアからプロに入って、そのまま通用するドラフト1位の選手は10人に1人くらいです。プロの世界に入って、本人がどう工夫して、どう伸ばしていくかが凄く大切になります。小笠原くんは、変化球を放る時もフォームがボールを押し気味なので、もっと捻って、上からたたくことができるようになれば変化球の精度があがり、今よりも良くなると思います。しかし、左投げで150キロ出ているので素材はいいですよ。

 

二宮: 横浜DeNAの今永昇太投手(駒澤大)はどうでしょう。

山本: おぉ! 彼はボールを投げる時の手首の立ち方が凄くいいですね。どちらかというと、ストレートのキレと小さな変化球の揺さぶりで勝負するタイプ。フォーム的に大きい縦の変化球は投げられないのかもしれない……。二宮さん、フォームを見る時にリリースの位置と反対側の腰の位置に注目してみてください。

 

二宮: サウスポーの今永投手だと右腰ですか?

山本: そうです。縦の変化球は、リリースの位置から反対の腰までの距離が遠ければ遠いほど大きく曲がります。桑田真澄がカーブ、大魔神・佐々木主浩がフォークを投げる時、腰の位置を凄く下げてから投げていたでしょう。対角線の距離が縦の変化球の重要な鍵になるんです。今永くんは全体的に安定していますが、大きく曲がる変化球を投げるためには、この距離をつくるフォームを身につけなければいけませんね。

 

飲みたい2二宮: 次は北海道日本ハムの上原健太投手(明治大)です。

山本: この選手のピッチングは初めて見ましたが、手の通る場所がいいですね。例えるならばドジャースのクレイトン・カーショウに近いですね。サイ・ヤング賞3度のメジャーリーガーと比べるのは大げさかもしれませんが……。

 

二宮: 身長は190センチと大型左腕ですね。即戦力として期待できると?

山本: ただ、リリースの位置が定まっていないので、球のキレに物足りなさを感じます。リリースの位置は、これからある程度投げ込んでいけば定まってくると思うので、“伸びしろ”は充分あります。化ける可能性があるピッチャーですね。

 

二宮: 最後は3球団の競合となった福岡ソフトバンクの高橋純平投手(県岐阜商業高)です。

山本: やはりスケールが大きいですね。素材的には文句なし。ただ彼のフォームは左肩を開くことでスイッチを入れている感じになっている。左肩を開き終わった後にスイッチを入れるのではなく、左肩と右肩を入れ替えるようにしてスイッチを入れるようになったら、もっとコントロールも安定してきます。

 

二宮: 具体的にいうと、今は左肩の開きが少し早いということですか?

山本: 左肩を打者に向けるのが早過ぎて、力を伝えて切れていない。球筋が軽くなっているので、もう少し粘ればいいと思います。しかし今のフォームで150キロ出ていれば、相当な逸材ですよ。この子ならすぐに先発ローテーションに入れるかもしれない。今回、名前を挙げた4人の中では、彼が一番その可能性を感じさせます。

 

 偶然受け継いだ34番

 

二宮: それでは昌さんの現役時代を振り返っていただきましょう。1983年のドラフト会議で、中日に5位指名されました。背番号は34。400勝をあげたサウスポー金田正一さんのようになってほしいとの思いが込められていたのでしょうか?

山本: 僕が34番を貰ったのは偶然なんですよ。同期入団はドラフト1位の藤王康晴が1番、2位の仁村徹が24番、3位の三浦将明が26番、4位の山田和利が33番、5位の僕が34番というように、ドラフト上位の選手から若い番号を貰いました。ただのドラフトの順番なんです。

 

二宮: そうなんですか。てっきり金田さんのようなサウスポーに、というフロント側の意図があるのかと思っていました。

山本: 偶然とはいえ、いい番号に恵まれました。そういえば、僕が34番を付けることを予想していた友だちがいた。学校に向かっている電車のなかで、友だちから「小松辰雄さんが34番から中日のエース番号の20番に変えて、オマエが34番をつけないかなぁ」と言われたんです。

 

二宮: まさに予想が的中したわけですね。

山本: その時は「ドラフト5位の選手がそんなにいい番号を貰えるわけないよ。貰えて60番台だよ」と笑っていました。そうしたら、スカウトの方に「34番をつけろ」と言われて、「えっ? 何でそんないい番号をつけられるの!?」と内心驚いた記憶があります。

 

二宮: 昔は現在のように背番号はコロコロ変えなかったので、背番号の重みも違ったでしょうね。

山本: 大体、ローテーションに入って3年ぐらい活躍すると10番台。1ケタ台は、レギュラーになって3年ぐらい経ないと貰えませんでした。長く結果を残さなければ、いい背番号を貰えない時代だった。僕が入った年はたまたま背番号が空いていたんです。

 

 一度も変えなかったロージンの位置

 

飲みたい4二宮: 入団当初はエースの小松さん始め、鈴木孝政さん、牛島和彦さん、郭源治さんなど好投手が沢山いました。その時の心境はいかがでしたか?

山本: 1年目のキャンプ初日、練習場に移動している途中にブルペンの前を通ったんです。その時に投げていたのが、小松さん、鈴木さん、郭さん、牛島さんでした。みんな球が速かった。牛島さんは特に球のキレがよくて見とれちゃいました。先輩たちが投げているところを見たら、自分がこの世界で投げている姿なんて全く想像することができなかった。でも、その反面、「プロで練習をしたら立派な体格になって、こんな凄いボールを投げられるようになれるのかなぁ」と、自分自身に期待もしていましたね。

 

二宮: 大抵の高卒ルーキーは、そこで怖気づいてしまいますよ。

山本: もともと期待されていなかったというのもあるのでしょうが、前向きでしたね。野球で秀でた能力を持つ人たちが集まる場所が、プロ野球なんです。僕は甲子園に出たこともない。目立った活躍をしていたわけでもない。なんでプロに入ったのか分からないんですが、中日に拾ってもらえて32年間も野球ができました。運に助けられてここまでやってこられたんだと思います。だから感謝の気持ちを忘れずに、野球だけは裏切ってはいけないと思いながらやってきました。

 

二宮: 野球だけは裏切ってはいけないと?

山本: はい。僕はこれまで一度も球場でごみをそのへんに捨てたことはないし、芝生に唾を吐いたこともない。外野をランニングしていると、苦しくなってきて唾が出そうになることもありましたが、グラウンドにペッと吐いて、もしもこの位置にボールが落ちてツーベースヒットになったらどうしよう……。なんてことを考えて、絶対にやりませんでした。非常にネガティブな考え方ですけど。

 

二宮: 名投手になるには、昌さんのような繊細さが必要なんでしょうね。豪放磊落に見える江夏豊さんも繊細な方で、ロージンバックの位置に非常にこだわりを持っていました。

山本: 僕も32年間、ロージンの位置を変えたことがありません。ずっと右後ろです。というのも、僕はプレートの左側から投げるので、その分、マウンドの右側の打球は届かない。ここにロージンを置いておけば、もしかしたらセンター前に抜ける打球がロージンに当たって内野ゴロになるかもしれないと思って、いつも自分の届かない位置に置いていました。

 

二宮: なるほど。そういう狙いがあったんですか。

山本: これは自分でふと思いついたことなんですけどね。もしかしたらゴロになるかも……と思って32年間、同じところに置いていましたが、結局1回も当たりませんでした(笑)。お守り代わりみたいなものでしたけどね。

 

二宮: 32年もユニホームを着ていただけあって昌さんは、話の引き出しが本当に多い。聞きがいがあります。

山本: いえいえ。そんなことありませんけど、話し始めたら止まらない。ついつい沢山喋っちゃうんですよ(笑)。まだまだテッパンネタが残っているので、続きは後編を楽しみにしていてください。

 

(後編につづく)

 

プロフィール<山本昌(やまもと・まさ)>

1965年8月11日、神奈川県茅ケ崎市出身。日大藤沢高から84年にドラフト5位で中日ドラゴンズに入団。プロ5年目に米国留学すると、そこでスクリューボールを習得。同年8月に日本に呼び戻され、帰国後5連勝を飾る。93年に17勝、防御率2.05を挙げ、最多勝と最優秀防御率の2冠に輝いた。翌年には19勝をあげ、2年連続の最多勝を受賞し、沢村賞を獲得した。06年に史上最年長記録となる41歳1カ月5日でノーヒット・ノーランを達成、08年には史上24人目となる通算200勝をあげる。昨年、49歳25日でNPB史上最年長勝利記録を更新し、今季限りで現役を引退。通算成績は219勝165敗5セーブ。最多勝3度、最優秀防御率1度、最多奪三振1度受賞した。186センチ、85キロ。左投げ左打ち。

 

 今回、山本さんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

 

 

<対談協力>

La Boqueria 四ツ谷ダイニング ラ・ボケリア
東京都新宿区四谷2丁目11 アシストビル2F
TEL:03-5366-0505
 
ランチ:11:30~15:00
ディナー:17:00~23:00

 

☆プレゼント☆

山本さんの直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらより、本文の最初に「山本昌さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は12月11日(金)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、山本昌さんと楽しんだお酒の名前は?

 

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・写真/安部晴奈)


◎バックナンバーはこちらから