32年間の現役生活で対戦したバッターは、のべ13,862人。今季限りでユニホームを脱ぎ、解説者として第2の人生のスタートを切る元中日・山本昌の評論の引き出しの多さは、他の追随を許さない。

 

 

 その山本に「一番印象に残っているバッターは?」と問うと「期間限定ではありますが」と前置きして巨人時代の清原和博の名前を挙げた。

「僕のスクリューボールを狙いすまして東京ドームのライトスタンドに持っていった。今度は裏をかいてインコースに真っすぐを放ると、バットをへし折りながらでもレフトスタンドに運んだ。いい時の清原は、手が付けられなかった」

 

 現役選手では誰か。

「好打者という点では福岡ソフトバンクの内川聖一とサンフランシスコの青木宣親。2人に共通して言えるのは、打ち取ったと思える打球が、野手の間を抜けていくこと。これはピッチャーにとっては大変なショック。

 

 どうも見ていると打球にスピンがかかっているような気がするんです。それによってボテボテの内野ゴロがセンター前やライト前に抜けていく。毎年のように2人が好打率を残す理由がここにあると思います」

 

 親子ほど齢の離れている大谷翔平(北海道日本ハム)については、どうか?

「投げては160キロ、打ってはバックスクリーンにホームラン。こんな選手、他にいますか? 中日の先輩に西沢道夫という伝説の選手がいます。この人は投げては通算60勝(65敗)、打っては通算1717安打。実際に見たことがないのでどんな選手かわかりませんが、おそらく素質的には大谷君の方が上回っているんじゃないかな」

 

 ただし、と言葉を切り、山本はこう続けた。

「今はまだ若いから体が動くけど、30歳くらいになると投げるには投げる、打つには打つ専門の筋肉が必要になってくる。それまでにどちらか一本に絞らないと……」

 

 レジェンドの忠告を、二刀流・大谷は、どう聞くか。

 

<この原稿は2015年11月23日号『週刊大衆』に掲載されたものです>

 


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