21日、WBSC世界野球プレミア12の3位決定戦が行われ、日本代表(世界ランキング1位)は、メキシコ代表(同12位)に11-1のコールド勝ちを収めた。初回、日本は山田哲人(東京ヤクルト)のソロホームランで先制する。2回裏には山田、松田宣浩(福岡ソフトバンク)、中田翔(北海道日本ハム)のホームラン3本などで7点を追加した。8点リードで迎えた7回裏には秋山翔吾(埼玉西武)が2ランを放ち、試合を終わらせた。同日行われた決勝戦で、韓国代表(同8位)がアメリカ代表(同2位)を8-0で下し、初代チャンピオンに輝いた。

 

 中田、今大会3本塁打15打点の活躍(東京ドーム)

メキシコ代表   1 =0000010

日本代表     11 =1700012×

 

(メ)●ペーニャ‐カリーリョ‐ガルシア‐カルデラ‐コレア‐マドリガル

(日)武田‐○菅野‐山崎

本塁打 (メ)ペレス1号ソロ

    (日)山田1号ソロ、2号2ラン、中田3号2ラン、松田2号2ラン、秋山1号2ラン

 

 準決勝敗退のうっ憤を晴らしてくれるような、見事な勝ち方だった。今大会最多の5本のホームランが飛び出しコールド勝ち。先発の武田翔太(ソフトバンク)、3番手の山崎康晃(横浜DeNA)、2打席連発の山田らの未来の侍ジャパンを引っ張るであろう若手の活躍が光った。

 

 初回、開幕してから一発が出ていなかった山田に待望のホームランが生まれる。2死ランナーなし、カウント1-1からの直球をレフトスタンドに叩き込んだ。この一振りで先制点を奪うと、2回裏に再びアーチを架ける。1点を追加した直後、2死一塁で打席に入った山田は、今度はど真ん中のチェンジアップを振り抜いた。高く伸びた打球は、前の打席と同じ弾道でレフトスタンドに入る。2打席連続のホームランを放った山田は、ダイヤモンドを一周すると、ベンチにいるチームメイトから手厚い祝福を受ける。

 

 若きスラッガーの二振りで勢いづいたナインたち。次の筒香嘉智(横浜DeNA)がヒットで出ると、今大会ここまで13打点の中田に打順が回る。抜群の勝負強さを発揮している中田は、メキシコの2番手が投じた143キロ直球をレフトスタスタンドに放り込む。リードを大きく広げても、日本の攻勢は続いた。

 

 平田良介(中日)が四球で出塁すると、日本の攻撃はまだまだ続いた。2死一塁の場面で今大会ここまで2割2分8厘とくすぶっている松田に打席が巡ってきた。準決勝では、9回裏に代打を送られる屈辱を味わった。その悔しさを振り払うかのように、カウント2-2からの6球目をレフトスタンドにぶち込んだ。日本は打者一巡の猛攻で、この回一挙7得点。ビッグイニングをつくり、メキシコに8点差と大きく突き放す。

 

 投げては先発の武田が、3回無失点とメキシコ打線を封じる。1、2回ともに、先頭に四球を与えたものの、大きな失投はなかった。3回には、持ち味の縦に大きく割れるカーブで先頭のジェローム・ペーニャを見逃し三振に切って取った。次打者に初ヒットを打たれた後は、1番のケビン・メドラーノをスライダーで空振り三振に仕留めると、2番のロレンゾ・トーレスを148キロのストレートで打ち取った。21歳の右腕は、この回を投げ切ると、巨人のエース・菅野智之に後を託した。2番手の菅野は、6回表に先頭のフアン・ペレスにソロ本塁打を浴びるものの、それ以上の失点は許さなかった。

 

 6回裏には平田のタイムリーが生まれ、9-1と再びリードを8点に広げた日本。7回表に日本の3番手の山崎が登板する。今大会は2試合に登板して、いずれも完璧に抑えていた山崎は、この日も素晴らしかった。代打のケビン・ガルシアを凡打、ヤディル・ドレイクをシュートで空振り三振、ブランドン・マシアスを凡打に仕留めた。今季37セーブをあげたルーキーは、140キロ台後半の直球とシュートで、メキシコ打線を完全に黙らせた。

 

 8点差で迎えた7回裏。途中出場の中村悠平(ヤクルト)が死球を受けて出塁すると、4打席ノーヒットの秋山が打席に入る。秋山はカウント2-1から直球を振り抜く。ボールが秋山のバットに弾かれた瞬間、球場が大きく湧いた。打球は、ぐんぐん伸びてライトスタンド中段に入った。スタジアムが歓喜で盛り上がる中、秋山は淡々とダイヤモンドを回って、ホームイン。10点差をつけ、コールドでゲームセットした。秋山の一発で今大会を締めくくった。

 

 チームの指揮を執った小久保裕紀監督は「世界一になれなかったのは悔しい。ただ、侍ジャパンのトップの選手たちは堂々と戦い抜いてくれたと思うので敬意を表したい」と、ともに戦ってきた選手を労った。

 

 世界一には届かなかった日本だったが、今大会の経験は2年後のWBCに向けて大きなプラス材料となるだろう。投手では、大谷翔平(日本ハム)が2試合連続無失点2ケタ奪三振と素晴らしい内容だった。小久保監督がエースに指名した前田健太(広島)にも劣らぬピッチングで、自らが“エース級”であることを証明した。シーズンでは野手との“二刀流”が続くが、ピッチャーとしては今季最多勝を獲得するなど一級品。今後は誰もが認める日本のエースになることは間違いない。

 

 打者ではチーム最多の3本塁打15打点をあげた中田と、打率.385と大当たりだった筒香コンビが確実にチャンスをモノにした。前の打者が出塁して2人がランナーを返すという理想的な攻撃スタイルを確立できたことで、他の選手たちに余裕が生まれた。その証拠に3番の山田は今大会で11個の四球を選んで、多くの得点に繋げた。 後ろに強打者が控えていたからこそ、冷静にボールを見極めることができたのだろう。準決勝から結成したクリーンアップ。3番の山田、4番の筒香はいずれも23歳、5番の中田は26歳と2年後も主軸を担う可能性は高いだろう。

 

 とはいえ、今大会を通じて世界一までの道のりは、まだまだ遠いことを実感した。適材適所の選手を起用できなかった“ベンチの経験不足”が浮き彫りとなった。日本の侍たちが世界一の座を奪還するためには、選手たちの成長はもちろん、ベンチワークの向上も欠かせない。まずは2年後のWBCで2009年以来、遠ざかっている“ワールドチャンピオン”の称号を取り戻す。