飲みたい7二宮: 昌さんは32年の現役生活で数々のプロ野球最年長記録を更新されました。メジャーリーグの最年長勝利記録を保持するジェイミー・モイヤーもサウスポーです。やはり左にはアドバンテージがあると?

山本: 左のアドバンテージは凄く感じますよ。僕はサウスポーじゃなかったら、プロに入っていないですもん。

 

 

二宮: いやいや。それは大袈裟ですよ(笑)。

山本: 本当ですよ。それだけ左投手が貴重な時代でした。最近は昔に比べて、左打者が増えてきたので、ますますサウスポーが重宝されていますね。

 

二宮: たしかに左バッターは年々、増えていますね。

山本: 僕らは左打者に強いんです。被安打率を見てもらうとわかると思いますが、右に比べて左には全然打たれませんでした。ただ単に左対左という例が少ないので、左に慣れていないんだと思いますけど。同じスライダーでも、右ピッチャーが右バッターに投げるアウトコースよりも、断然、左同士の時のほうが有効です。

 

二宮: 牽制に関しては、一塁ランナーを見ながら投げられるという利点もあるのでしょうか?

山本: それはないです。パッと振り向いて投げられる、実は右投手の方が早い。­

 

二宮: 左の方が有利なのかと思っていました。

山本: 盗塁のスタートが見えるという点では有利かもしれません。でも、­ほとんどのピッチャーが投球動作に入った時には、ホームに投げるか­投げないかを既に­決めています。直前にスタートが見えたとしても、そこから牽制球に切り替えるのは難しい。変化球の握りをしている時は放れないですし、余程の余裕がなければできません。盗塁王を狙うような選手は、左のほうが走りやすいと思いますよ。

 

山本昌vs. 赤星憲広

 

二宮: 牽制の話も出ましたが、マウンド上で一番嫌だったランナーは誰ですか?­

山本: 元阪神の赤星憲広です。彼が走る瞬間は、リードを見ていると分かるんです。

 

二宮: 具体的には?

山本: 彼が仕掛けてくる直前は、必ずリードが小さかった。リードを見て“やべぇ、小さくなった”と思った瞬間、必ず走ってくる。逆にリードが大きい­時は­走らないので、­安心して投球できました。

 

飲みたい6二宮: 逆だったんですね。

山本: ­リードが小さくなると、僕も目一杯クイックしました。しかしそうすると、目の前のバッターに集中できなくなります。­2番バッターや3番バッター­に対する意識が疎かになってしまうので、­すごく嫌でした。“ランナーに­構っていられないよ”と思いますが、盗塁を許してノーアウト­2塁となるのも­嫌です。意識し過ぎて、ボールが先行することもありました。­彼には­本当にかき回されましたね。

 

二宮: ­本人はそれを意図してやっていたのでしょうか?

山本: それは分かりません。これは僕の憶測ですが、リードが大きい時は、走る意識よりも戻る意識の方が­強かったんだと思います。だからリードを大きく取っていても牽制で刺されない。逆に盗塁する直前は次の塁へ走ることだけに集中するために、リードを小さくしていたんじゃないかと。今度、本人に会ったら聞いてみますね。

 

キャッチャーによって異なるリード

 

二宮: キャッチャーとの相性について思い出に残っていることは?

山本: 幸いなことに、僕は32年間でほとんど4­人の選手としか組んでいません。最初に組んだのが、中村武志。途中、矢野燿大がメインで捕っている期間がありましたが、谷繁元信が入団してからはずっと谷繁が正捕手に座りました。あとは、小田幸平ですね。ほぼ固定されていたので、相性の良い悪いはありませんでした。

 

二宮: 4人それぞれリードは違うでしょう?

山本: 中村は「どう? これでどうですか?」と、お伺いを立てるリードです。逆に谷繁は「これで来てください。大丈夫です」と強気なリード。キャッチャーによって、それぞれ違いましたよ。

 

二宮: それぞれの個性が出るんでしょうね。

山本: 4人に共通して言えることは、強肩捕手だったことです。普通にクイックで投げれば盗塁を刺してくれたので、ランナーにさほど気をつかう必要はなかった。そういった点では捕手に恵まれていましたね。

 

二宮: 配球はどちらが決めていたんですか?

山本: 9割以上お任せです。いや、もっとかもしれない。僕はキャッチャーの意図を­汲みとって投げるタイプでした。

 

二宮: キャッチャーの顔を立てるようにしたのでは?

山本: いえ、そうでもないんですよ。毎日、試合に出ている捕手は、ずっと近くでバッターを見ていて、僕より何十倍何百倍も経験を踏んでいます。自分の小賢しいヤマ勘よりも、キャッチャーの考えを信じました。彼らの組み立て通りに投げたいと思っていたので、ほとんどサインに首を振ったことはありません。振った時は「そのボールだとストライクは入りません」という時だけでした。

 

二宮: キャッチャーはうれしいでしょうね。

山本: キャッチャーの言うとおりにバシバシ投げられれば、完封できるんですよ。サインを受け取ってから“ちょっと嫌だな”と感じた時は、あえてボール球にすることもありましたが、そのへんはキャッチャーと阿吽の呼吸でやっていました。

 

飲みたい5武豊との“名勝負”

 

二宮: お酒のエピソードもお伺いしたいと思います。昌さんはビールかけを5回経験されていますが、一番美味しかった勝利の美酒は?

山本: 06年のセ・リーグ優勝の時ですね。この年は2年ぶりに2ケタ勝利をあげて、チームに大きく貢献できたので、個人的にもすごく満足のいくシーズンでした。あとは2位・阪神と優勝争いをしている中、9月の直接対決で史上最年長ノーヒット・ノーランを達成できたのはとても嬉しかったです。

 

二宮: ご自身は「延々と飲み続けられる」とおっしゃっていましたが、誰が強かったですか?

山本: 一番強かったのは、オリックスから中日に移籍してきた時にチームメイトになった平井正史ですね。彼は本当に強かった。あとは、野球選手ではありませんが、騎手の武豊も強かった。

 

二宮: 武さんの強さは“知る人ぞ知る”ですね。

山本: 彼とはプライベートで仲が良いんですが、豊に誘われて競馬界の方々と一緒にご飯を食べたことがあります。2次会のお店で周りがどんどん酔っぱらって帰っていくなか、僕と豊と川上憲伸と競馬界関係者の4人が残った。そうしたら豊が「山本さん全然平気そうですね。最後に一発勝負しますか」と言ってきて、朝の4時過ぎから日本酒を2人で飲み始めたことがあります(笑)。

 

二宮: で、勝者は?

山本: 結果はドロー。それまで一度も僕に口答えをしたことがなかった川上が「山本さん。もうどっちが強くてもいいじゃないですか」と言ってきた。川上の泣きが入って、引き分けに終わりました。

 

二宮: まさに“水入り”となったわけですね(笑)。

山本: 札幌遠征に行ったときに、ちょうど豊も現地にいたので食事に行きました。「お互い年取ったなぁ」なんて言いながら、あの日も結構飲みましたね。帰る前に、僕が締めのラーメンを食べたくなって、豊も誘っちゃったんです。騎手は体重管理が厳しいので、夜中にラーメンを食べちゃマズイじゃないですか。

 

二宮: 確かに!

山本: その時は何も考えずに誘ってしまい、夜中の3時ぐらいに2人で並んで食べました。後日、新聞記者に「オレにラーメンを無理やり食べさせるのは、昌さんぐらいだ」とこぼしていたみたいです(笑)。

 

二宮: 気が付けば、そろそろお時間が……。今日は面白い話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。今度は是非、そば焼酎『雲海』のSoba&Sodaでひと勝負をしましょう!

山本: 望むところです! 是非また、野球談議をしながら美味しいお酒を飲みましょう。

 

(おわり) 

 

プロフィール<山本昌(やまもと・まさ)>

1965年8月11日、神奈川県茅ケ崎市出身。日大藤沢高から84年にドラフト5位で中日ドラゴンズに入団。プロ5年目に米国留学すると、そこでスクリューボールを習得。同年8月に日本に呼び戻され、帰国後5連勝を飾る。93年に17勝、防御率2.05を挙げ、最多勝と最優秀防御率の2冠に輝いた。翌年には19勝をあげ、2年連続の最多勝を受賞し、沢村賞を獲得した。06年に史上最年長記録となる41歳1カ月5日でノーヒット・ノーランを達成、08年には史上24人目となる通算200勝をあげる。昨年、49歳25日でNPB史上最年長勝利記録を更新し、今季限りで現役を引退。通算成績は219勝165敗5セーブ。最多勝3度、最優秀防御率1度、最多奪三振1度受賞した。186センチ、85キロ。左投げ左打ち。

 

 今回、山本さんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。
提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>

La Boqueria 四ツ谷ダイニング ラ・ボケリア
東京都新宿区四谷2丁目11 アシストビル2F
TEL:03-5366-0505
 
ランチ:11:30~15:00
ディナー:17:00~23:00
 
☆プレゼント☆

山本さんの直筆サインボールを本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらより、本文の最初に「山本昌さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は12月11日(金)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、山本昌さんと楽しんだお酒の名前は?

 

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・写真/安部晴奈)


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