二宮: 12月9日からの2日間、グレートアイランド倶楽部(千葉県)でLPGA新人戦の加賀電子カップが今年も開催されます。新人女子ゴルファーの登竜門的大会として1996年にスタートして20回目になります。
塚本: ええ。それで今年は20周年ということで、賞金総額を前年度600万円のところを1000万円にアップしました。
二宮: それはすごい。選手たちにも励みになりますね。ところで加賀電子カップを始めたきっかけは?
塚本: 村口史子さんが、4年間シード権のない時にウチで面倒をみたことがあったんですよね。実はジャック坂崎さんに頼まれたんです。他の会社に断られて、私のところに回ってきたんですよ。ウチの役員もみんなゴルフをやりますから、それでOKになった。彼女が所属している時に女子プロ協会から新人戦の協賛を頼まれました。それで役員会にかけたら「やりましょう」となって、始めたのが20年前です。初代の優勝者は不動裕理さんでしたね。
二宮: 不動選手はその後、国内ツアーで50度の優勝。賞金女王にも6度輝きました。彼女もここから巣立っていったんですね。その後も横峯さくら選手や上田桃子選手ら錚々たるメンバーがこの大会から羽ばたきました。
塚本: そうですね。トーナメントで活躍されている方が多いです。馬場ゆかりさん、李知姫さん、藤本麻子さんもいますし、森田理香子さんとたくさんいますね。色々なプロアマ大会にお招きいただく時にも、私の方が覚えていなくても選手が覚えていることもあります。大会は2日間やっていますし、表彰式でトロフィーや賞状も渡している。ですから、選手の皆さんからご挨拶していただけるので助かりますよね(笑)。
二宮: 冠スポンサーですから、否応なく頭に入るのかもしれませんね。
塚本: ましてやスポンサーに対する接し方を協会で、教育されているから、みんな感じよくご挨拶をいただけますね。加賀電子カップは2日間のトーナメントを終わったあとに、2日間を使って、LPGAが出場資格のあるプロ1年生と2年生を教育するんです。マナーやスポンサーに対する接し方、それからルールもですね。そういったことを“カンヅメ”にして毎年やっているんですよ。それは現在も続いているようです。
二宮: 選手にとっては貴重な時間ですね。
塚本: そうですね。ちなみに森田理香子さんをリコーさんに紹介しました。藤田光里さんも、加賀電子カップを優勝する前にウチがレオパレスさんに紹介して、スポンサーになってもらったんですよ。そういうことを皆さん分かっているものだから、プロアマをやる前のトーナメント前からね、他の会社さんもウチに相談してくる(笑)。でもそれではウチが選べないって言っているんですけどね(笑)。
二宮: それだけ女子プロは人気があると?
塚本: ええ。トーナメントでも、ウェイティングの会社もまだまだあると聞いています。
プロゴルファーも楽じゃない!?
二宮: 加賀電子所属の女子プロも3人いらっしゃいますね。
塚本: そのうちの1人、東浩子は3年前に加賀電子カップを優勝しました。しかし、その後スポンサーが決まらないでいたんです。それでこちらから声をかけてみたら、「是非お願いします」と。
二宮: 選手との契約にはインセンティブがあるのでしょうか?
塚本: もちろんありますよ。10位以内に入るとボーナスを払います。優勝から10位まで少しずつダウンしていきます。
二宮: それはモチベーションになりますよね。
塚本: ええ。移動費ぐらいにはなるでしょうから、全然ないよりはあったほうがいいでしょうからね。
二宮: 例えばサッカーや野球だとチームから移動費や食費を出しますが、ゴルフは基本的には個人の出費になります。例えばキャディーの報酬もそうですね。
塚本: そのとおりです。多分、1000万円稼いでイーブンじゃないでしょうかね。それぐらい稼がないと食べてはいけないかもしれません。宿泊費、移動費、エントリー費を含めると。
二宮: 2012年に男子の賞金王に輝いた藤田寛之選手は「1500万円から2000万円はないとダメですね」とおっしゃっていましたが、それだけの収入があっても経費で消えてしまう。決して楽な仕事じゃないですね。
塚本: そうですね。ただ、プロになれば、用具契約など他にも収入があります。賞金や所属チームとの契約料だけじゃないお金も入ってくるでしょうが、それだって多くの収入を得られるのは限られた選手だけですからね。
二宮: 例えば、選手個々のマネージメントは別の会社がやっているんでしょうか?
塚本: 個人でやっている場合もありますし、マネージメント会社がついている場合もあります。ウチはそこまで強制しないですね。そこは専門分野ではありませんから(笑)。
高まるゴルフ熱
二宮: 加賀電子は、ゴルフショップやゴルフ練習場の他にも、スポーツ関連の経営をされていますよね。
塚本: はい。秋葉原ではゴルフ練習場の隣にバッティングセンターもやっていますね。全8打席ですが、これが非常に人気があるんです。
二宮: サラリーマンのストレス発散にもつながりますね。
塚本: 仕事帰りに若いカップルがおいでになったりしますね。ピッチングマシーン側のスクリーンに現役投手の映像を流しているので、迫力があると思います。それに球速も90キロから160キロまでアジャストできるようになっていますから。
二宮: 160キロですか!? それはすごい。大谷投手のストレートが体感できるわけですね。
塚本: 私なんか怖くて立っていられませんね(笑)。さすがに少年野球の選手だったり、野球経験者はバットに当てられる方もいるみたいです。バッティングセンターを開いたことによって、ゴルフに興味がなかった人たちもお見えになる。バッティングセンターが混んでいて待っている間に、ゴルフ練習場を見て「こんなところにあったんだ」ということで、試しにゴルフをやっていただいたりですね(笑)。ある意味でシナジー効果も出ているんです。
二宮: なるほどね。これは加賀電子の直営なんでしょうか?
塚本: 100%子会社の「加賀スポーツ」という会社が運営しています。他にも商品の卸とショップをやっているんです。今はショップが全国14カ所あるんですね。
二宮: 東京オリンピック・パラリンピックも近付いてきましたが、スポーツ熱の高まりや追い風のようなもの感じますか?
塚本: 直接的にはないですけが、やはりリオデジャネイロオリンピックからゴルフが正式種目として組み込まれましたから、今後は大いに期待できると思っています。
二宮: ゴルフの五輪正式競技復帰はセントルイス大会以来112年ぶりです。
塚本: ええ。だから今までは少し低迷していましたが、活性化してくるんじゃないでしょうか。女子プロもこれだけ人気がありますからね。子供たちにゴルフを教える機会が色々なところで増えてきましたね、それは東京オリンピックに向けて、新人の中にもたくさん候補になりそうな子たちが育ってきています。
驚異のホールインワン5回
二宮: ご自身はゴルフを年間に何ラウンドぐらいやるんですか?
塚本: 大きな声では言えませんが、一番多い年で100回ぐらいやりましたね。今年は80回かな。
二宮: 4日に1回!
塚本: 土日祭日はほとんどゴルフですね。
二宮: ところでハンデは?
塚本: ハンデは、一番上がったのは9。私が代表を務めているゴルフクラブツインフィールズでは19は行きました。その他では13の時もあります。つまりそれ程ばらついているということですよ。ただ、まぁ「72歳のわりには距離が出るね」と言われますね。ドライバーで240か250ヤードぐらいは飛んでいますから。
二宮: それはすごい!
塚本: 女子プロと回っていても楽しいですよね。結構いい勝負をしますから。
二宮: 日々、トレーニングはされているんですか?
塚本: いや、何にもしてませんよ。練習場があるので、調子が悪い時は時々行って打っています。レッスンプロに教わったりしているんですけど。下手なわりにはホールインワンは5回やっているんですよ。下手なプロよりも回数は多い(笑)。
二宮: どこのコースですか?
塚本: 一番最初が霞ヶ浦カントリー倶楽部。2回目はアメリカでした。これは「ホールインワン保険」が出ませんでしたけどね。3番目が水海道(ミツカイドウ)ゴルフクラブ。4番目がグレートアイランド倶楽部。5番目がまた水海道でした。
二宮: 相性もあるんでしょうかね。
塚本: 実は1週間に2回やったんですよ。アメリカと日本で(笑)。日曜日にサンフランシスコでやってね。海外は保険が適用にならないんです。アメリカへ行く1週間前に保険に入っていったわけですね。それで出たもんだから、現地の社員と家族を全部集めて日本食屋さんでどんちゃん騒ぎをしたんです。しかし、月曜日の朝に電話を入れたら「いや、海外は適用になりません」と(笑)。気付かなかったんですが、書類にきちんと書いてあるんですよ。
二宮: ちゃんと証拠の写真を撮っていても駄目なんですか?
塚本: ただアメリカはさすがにクラブハウスで全部申告してくれますから、道具を送ってきてくれたりと、色々な商品は頂きましたけどね。それで水曜日に戻ってきた時に保険屋さんと直接話して、“まぁしょうがないな”となった。その時に「今度出たら出してくれるんだろうな」と言ったら、「それは当たり前ですよ」と返ってきた。その週の金曜日に入れてやりましたよ(笑)。「嘘でしょう?」と言われましたよ。1ウィークでダブルエースを日米にまたがってやりましたね。ゴルフはそんなにうまくないんですが、何となく運が強いんでしょう。
二宮: 実力プラス強運でしょうね。
塚本: ある日のシニアのプロアマで、中島常幸さんとご一緒になった時に中島さんがホールインワンを出したんですよ。7回目のホールインワンだという中島さんに「私も5回出しているんですよ」と話したら、「本当ですか。普通の人でそんなに出している人は聞いたことがないですよ」と驚かれましたね。
二宮: ところで会長のお楽しみは“19番ホール”だとお聞きしました。ゴルフのラウンドが終わった後に麻雀をするそうですね。19番ホールという表現がまた面白い。
塚本: そうですね。わりとゴルフは仲間内であったり、お客さんとする時も当然あります。終わった後は必ず19番目のホールを回りますね。帰りの道が混むんですよ。だから、その後は“四角いグリーン”で戦うんです。
二宮: 四角いグリーンですか(笑)。
塚本: ウチは私がやるせいか、結構、麻雀愛好家が多い。今度は頭脳の戦いです。だから時間があると、秘書と相談して「麻雀」とスケジュールに入れてありますから(笑)。これで社員とコミュニケーションをとるんです。
(第2回につづく)