日本時間13日、フィギュアスケートのISUグランプリ(GP)ファイナル最終日がスペイン・バルセロナで行われ、男子シングルで羽生結弦(ANA)が大会史上初の3連覇を達成した。ショートプログラム(SP)で首位に立った羽生は、フリーでもトップを譲らなかった。トータル330.43点のハイスコアを叩き出し、2位のハビエル・フェルナンデス(スペイン)に37.48点差をつける圧勝だった。他の日本人選手の結果は、宇野昌磨(中京大中京高)は276.79点で3位に入り、銅メダルを手にした。村上大介(陽進堂)は235.49点で6位。女子はエフゲーニャ・メドベージェワ(ロシア)が222.54点で制した。宮原知子(関西大高)は208.85点で2位に入り、銀メダルを獲得。浅田真央(中京大)は194.32点で6位だった。

 

 絶対王者――。羽生はその風格を纏い始めた。フェルナンデスが演技を終え、羽生は最終滑走でリンクに登場した。与えられた時間は約4分半。彼がこの場を制圧するには十分な時間だった。

 

 今シーズンからフリーのプログラムに組み込んだ『SEIMEI』は映画『陰陽師』の劇中曲。陰陽師の安倍晴明を氷上で演じ切った。冒頭の4回転サルコーを成功すると、4回転トーループも難なくクリアした。優雅に、そして神秘的な雰囲気すら漂わせて羽生はリンクを舞う。この空間を完全に支配しているように映った。パフォーマンスを終えた後の自信に満ちた表情が、すべてを物語っていた。

 

 キス&クライで採点を待つ間、“安倍晴明”は“羽生結弦”に戻っていた。219.88――。SPの110.95点と合わせたスコア330.43点はNHK杯で自らが出した世界最高332.40点を大きく上回る得点が発表された。羽生は両手で顔を覆い、肩を震わせた。重圧から解放された安堵感からか涙を流して喜んだ。

 

 もう挑戦者ではない。王座を奪う側ではなく、守る位置に立っている。ソチ五輪で金メダルを獲得し、昨シーズンはGPファイナルと世界選手権を合わせて3冠を手にした。「かなりのプレッシャーだった。嬉しいというよりもホッとした」。彼が闘っていたのは他でもなく己だったのだろう。勝つべくして勝つ。その重みを体感し、乗り越えてみせたのだ。

 

 憧れのエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)も達成できなかった大会3連覇は男子としても史上初の快挙である。「どんな状況でも自分がしたい演技をする」。韓国・平昌での五輪連覇さえも規定路線と思わせるほど、圧倒的な勝利だった。

 

<GPファイナル結果>

 

◇男子シングル

1位 羽生結弦(ANA) 330.43点

2位 ハビエル・フェルナンデス(スペイン) 292.95点

3位 宇野昌磨(中京大中京高) 276.79点

6位 村上大介(陽進堂) 235.49点

 

◇女子シングル

1位 エフゲーニャ・メドベージェワ(ロシア) 222.54点

2位 宮原知子(関西大高) 208.85点

3位 エレーナ・ラジオノワ(ロシア) 201.13点

6位 浅田真央(中京大) 194.32点

 

(文/杉浦泰介)