相撲にあてはめてみればよくわかる。果たしてどれだけの相撲ファンが、92年から行われている世界相撲選手権に注目しているか――。

 

 本家、本場と言われる地域は、えてして自分たちのスポーツが国境を越えて世界に広がっていく際、冷淡な態度をとりがちである。

 

 近代サッカーを生み出した英国――特にイングランドは、欧州の中で最後までW杯に関心を示さなかった地域の一つだった。

 

 多くの相撲ファンにとって、誰が運営しているかもわからない新興の大会よりは年6度の本場所の方がはるかに重要なように、英国のサッカーファンは、リーグ戦やFAカップ、さらには英国4協会によって行われる“ホーム・インターナショナル”に重きを置いた。

 

 さすがにいまではW杯の重要度は認められたが、それでも、プレミア・リーグはW杯の結果が人気や集客にほとんど影響を及ぼさない、世界的にみても稀有なリーグであり続けている。

 

 ご存じの通り、W杯の第1回大会はウルグアイで開催された。“本場”から遠く離れた彼らの熱意なくして、W杯の後の隆盛はなかったといってもいい。

 

 トヨタカップも然り。大会初期、欧州勢がチャンピオンズ・カップとは比較にもならないほど低いテンションだったのに対し、南米勢はコパ・リベルタドーレスとまるで変わらない情熱で日本に乗り込んできた。大会にかける彼らの思いは、やがて欧州勢の本気を引き出していくことになる。

 

 今回のクラブW杯では、1万人をはるかに超えるリーベルプレートのサポーターが来日している。アルゼンチンの人口(約4300万人)や1人あたりのGDP(約1万4000ドル)を考えれば、とてつもない数字だと言っていい。

 

 W杯や五輪であれば日本人も熱狂する。現地にまで足を運ぶ人も珍しくない。だが、仮にレッズがクラブW杯に出場したとして、3万を超えるファンがモロッコに渡るだろうか。

 

 日本は、むろんサッカーの本場ではない。だが、少なくとも自分自身のことに限ってみると、クラブW杯という大会を見る目は、南米寄りというよりは欧州寄りだった気がする。つまり、CLほどには重要視していなかった、ということである。

 

 欧州勢が南米勢ほどにはこの大会に入れ込んでいないのは、「欧州こそがサッカーの中心」との思いがあるからだろう。ある意味、それは真実でもある。

 

 だが、日本で行われ、日本の王者が出場して興奮している大会を、日本人である自分が冷笑的に眺めているのは、あまりに傲慢で滑稽ではないか、という気がしてきた。

 

 わたしの場合、阪神にあてはめてみると、得心がいく。もし阪神がメジャー勢とガチで世界一を争う大会に出場したとしたら――間違いなくリーベルのファンと同じ行動を取るだろうからだ。

 

<この原稿は15年12月17日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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