毎年毎年この時期になると感じることを、今年もまた感じている。

 

 選手が、小さい――。

 

 高校野球を見ていると、そんなことはまるで感じない。昨年夏の話題をさらった清宮ジュニアに限らず、甲子園に出場してくるようなチームには、立派な体格の持ち主が必ず何人かいる。

 

 それだけに、高校サッカーに出場する選手たちに目を向けると、野球との違いに愕然とさせられる。ひょっとしたら、わたしの知らないうちに日本人の平均身長は縮み始めているのでは、なんて気分にすらなる。とにかく、小さくて細い選手が多いのだ。

 

 もちろん、サッカーは体格の優劣を競う競技ではない。小さくても、細くても世界のトップクラスになることはできる。ただ、勘違いしてもらいたくないのは、小さいこと、細いことは決して武器ではない、ということである。

 

 とかく日本人の場合、小さな選手には許せることを、大きな選手には許さない傾向がある。それは、わたし自身も例外ではない。

 

 サッカー同様、野球も体格の優劣を競う競技ではない。ではなぜ、高校野球では少しも珍しくない大型選手が、サッカーではずいぶんとレアな存在なのか。さらに言うなら、なぜGKでは珍しくない1メートル80センチ台の選手が、MFやFWになると極端に少なくなってしまうのか。

 

 指導者の意識が関係しているのでは、とわたしは思う。

 

 高校野球の指導者は、サイズのあることが武器になりうることを知っている。同じように、高校サッカーの指導者であっても、GKに関してはサイズが武器になることを知っている。

 

 だから、育てる。

 

 ところが、本来であれば高校野球同様、あるいはGK同様、サイズが武器になることもある攻撃的なポジションの選手に関しては、多くの指導者が小さな選手に対する偏愛ぶりを発揮する。

 

 大柄な選手が放つヘディングシュートより、小柄な選手が見せるドリブルシュートを重んじてしまう。小柄な選手が頭で点を決められないことは許せても、大柄な選手が巧みな足技を披露できないことは許せない。

 

 全体的な足技の技術に関して言えば、最近の高校生は間違いなくうまくなっている。ただ、ヘディングの技術に限ると、びっくりするほど向上が見られない。ストロングヘッダーとして期待できそうなアタッカーは、才能豊かな背番号10よりはるかにレアな存在である。

 

 結果としてついに本家を超える存在は現れなかったが、それでも、かつては釜本と似たタイプのFWがいた。指導者たちが二世を育てようとしたから、である。だが、近年では亜流すら生まれなくなってきた。日本代表の得点力不足、むべなるかな、である。

 

<この原稿は16年1月7日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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