160107RIZIN

(29日のメインは青木<上>の一方的な勝利となった (c)RIZIN FF/Sachiko Hotaka)

 好ファイトが続出、会場も大いに盛り上がり、「止まっていた時計の針が動き始めた」と実感できる大会だった。昨年の12月29日と大晦日の2日間、さいたまスーパーアリーナで開かれた『RIZIN FIGHTING WORLDGP 2015』のことである。

 

 29日、「SARABAの宴」。

 メインエベントの桜庭和志vs.青木真也は、心が締めつけられる想いで観た。青木の勝利は予想していたが、あそこまで一方的な展開になるとは……。世紀末から今世紀初頭にかけての桜庭のゴールデンロードを見続けてきた者にとっては、悲しい想いを抱かずにはいられぬ展開。見たくなかった、と思う。それほどまでに心に染みるインパクトの強い試合だった。

 

 31日、「IZAの舞」。

 最も印象に残った試合は、クロン・グレイシーvs.山本アーセン。クロンの勝利は大方のファンが予想していたこと。しかし、アーセンが予想以上の頑張りを見せポテンシャルの高さを感じさせてくれた。まだ19歳の彼が目指しているのは、2020年東京五輪にレスリング日本代表として出場しメダルを胸に輝かすこと。よって当分の間、『RIZIN』への参戦はないだろうが、将来が楽しみである。

 

 アーセンに勝ってMMA2勝目を挙げたクロンにも勿論、注目が集まる。次は青木との再戦(13年6月に一度、グラップリングルールで闘い、クロンがギロチンチョークを決めて勝利している)が面白いのではないか。MMAルールでの闘いとなれば、青木有利と見る向きが多いだろうが、緊張感のある好勝負が期待できよう。

 

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(写真:会場のさいたまスーパーアリーナは派手にライトアップされた Photo by真崎貴夫)

 さて、この『RIZIN』はフジテレビで全国放映されたわけだが、その視聴率が1月2日に発表された。大晦日の視聴率は以下の通り。

 

▼第1部(19:00~20:45)5.0%

▼第2部(20:45~22:30)7.3%

▼第3部(22:30~22:45)3.7%

<ビデオリサーチ調べ>

 

 この数字がどう評価されるのかはともかく、私は本来なら、もう少し上がっていたのではないかと思う。フジテレビは『RIZIN』を生中継せずに、数時間遅れでオンエアしていた。そのため、お茶の間のファンはインターネットを通じて放送前に試合結果を知ることとなった。これでは興味が半減する。結果を知っている試合を見るくらいなら、生で中継される「魔裟斗vs.山本“KID”徳郁」を……とチャンネルをTBSに切り替えたファンも多かったのではないか。スポーツはライブであってこそ面白い。この辺りは今後、フジテレビに考慮してもらいたい。

 

 それでも、文頭にも記した通り、『RIZIN』の大会自体は、十分に満足のいくものだった。会場には、連日、1万人を超える観客が詰めかけ、PRIDE時代にあった“熱”も生じていた。「総合格闘技人気再燃の予感あり」だ。次回の『RIZIN』は4月17日に日本ガイシホール(名古屋)で開催されることが、すでに発表されている。大会タイトルは、『RIZIN1』。好カードが揃うことを期待――。

 

近藤隆夫(こんどう・たかお)

1967年1月26日、三重県松阪市出身。上智大学文学部在学中から専門誌の記者となる。タイ・インド他アジア諸国を1年余り放浪した後に格闘技専門誌をはじめスポーツ誌の編集長を歴任。91年から2年間、米国で生活。帰国後にスポーツジャーナリストとして独立。格闘技をはじめ野球、バスケットボール、自転車競技等々、幅広いフィールドで精力的に取材・執筆活動を展開する。テレビ、ラジオ等のスポーツ番組でもコメンテーターとして活躍中。著書には『グレイシー一族の真実 ~すべては敬愛するエリオのために~』(文春文庫PLUS)『情熱のサイドスロー ~小林繁物語~』(竹書房)『キミはもっと速く走れる!』『ジャッキー・ロビンソン ~人種差別をのりこえたメジャーリーガー~』『キミも速く走れる!―ヒミツの特訓』(いずれも汐文社)ほか多数。最新刊は『忘れ難きボクシング名勝負100 昭和編』(日刊スポーツグラフ)。

連絡先=SLAM JAM(03-3912-8857)


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