第80回　メダリストたちの表現力に注目　～フィギュアスケート～

　フィギュアスケートとは「技術」と「演技」で競い合う氷上のスポーツである。

　トップを目指すには、両面で秀でなければならない。昨年12月、バルセロナで開催されたグランプリ（GP）ファイナルで男子初の３連覇を果たした羽生結弦は自身の持つ歴代最高得点を更新する330.43点（SP110.95点、フリー219.48点）をマークしているが、完璧に思えた11月のNHK杯（322.40点）を技術点も演技点も上回ったのだから恐れ入る。

“300点越え”の興奮がいまだ冷めやらない中、フィギュア界は2016年を迎えた。

　新年を華やかに告げる大会となるのが、１月15日に東和薬品RACTABドームで行なわれるISU（国際スケート連盟）公認の「メダル・ウィナーズ・オープン」だ。

　この大会はプロアマを問わず、その名のとおり五輪、世界選手権、ヨーロッパ選手権、四大陸選手権、GPファイナルでのメダル獲得者が参加。男女５人による個人戦が展開される。

　イメージとしては競技とアイスショーがミックスされた大会と言えるだろうか。特殊照明や小物の使用も認められることで、より「表現」にフォーカスされることになる。

　参加選手は男子がイリヤ・クーリック（98年長野五輪金メダリスト）、ジェフリー・バトル（06年トリノ五輪銅メダリスト）、ジョニー・ウィアー（08年世界選手権銅メダリスト）、ジェレミー・アボット（08年GPファイナル金メダリスト）、そして日本からは06年四大陸選手権金メダリストの織田信成である。

　女子はカロリーナ・コストナー（14年ソチ五輪銅メダリスト）、ジョアニー・ロシェット（10年バンクーバー五輪銅メダリスト）、キミー・マイズナー（06年世界選手権金メダリスト）、そして日本からは07年、11年世界選手権金メダリストの安藤美姫、94年世界選手権金メダリストの佐藤有香が出場する。

　新旧スターが集う「ニューイヤー・オン・アイス」

　この「メダル・ウィナーズ・オープン」に続けて、16、17日に同会場で開催されるのが「ニューイヤー・オン・アイス」。コンセプトは、レジェンドスケーター、トップスケーター、未来のスタースケーターたちが集う新しいアイスショーである。

「トップ」の枠には、男子は羽生を筆頭にエフゲニー・プルシェンコ（06年トリノ五輪金メダリスト）、15年GPファイナル銅メダリストの宇野昌磨ら、女子もカロリーナ・コストナー（14年ソチ五輪銅メダリスト）、15年世界選手権銀メダリストの宮原知子らが出場予定となっている。アイスショーは、演技点につながる表現力を磨く場とも言える。その意味でも彼らがどう魅せていくかが、見どころの一つになる。

　レジェンドスケーターのパフォーマンスも楽しみだ。「メダル・ウィナーズ・オープン」に出場するクーリック、バトル、ウィアー、織田、ロシェット、マイズナー、佐藤が続けて参戦するほか、06年トリノ五輪金メダリストの荒川静香と、12年世界選手権銅メダリストの鈴木明子が加わることになる。

　第一線を退いてアイスショーなどで活躍するレジェンドたちは、観客を魅了するために表現力に磨きをかけている。

　個人的に注目しているのが14年３月の世界選手権で６位入賞したのを最後に現役引退した鈴木。足を痛めて臨んだソチ五輪では、彼女は８位入賞を果たした。思い切り跳べないという状況に追い込まれながら、ストロングポイントの表現力で勝負しようとしたことが結果的に吉と出た。

　突き詰めるとフィギュアスケートとは、自分をどう表現するかに行き着く。何かを「伝える」ことが大切になると鈴木のパフォーマンスが教えてくれた。

　彼女は言っていた。

「ジャンプを跳んでこそ高得点を得られるので、私もいろいろと跳びたいとは思っていたんです。でもよくよく考えたら、自分はジャンプが得意な選手ではない。だったら自分が心から好きな曲に乗せて、滑ることを楽しんだほうがいいなと。改めて、そこで原点を感じることができた。これもなるべくしてなったことなのかなと」

　鈴木がたどり着いた境地。第一線を退いても、観る者にいかに伝えてくれるかを見てみたいと思う。

　現在のトップスケーターたちもレジェンドたちの表現力を間近で観ることで、何か新しいヒントを得ることができるのかもしれない。

　スカパー！では「メダル・ウィナーズ・オープン」、「ニューイヤー・オン・アイス」いずれも独占生中継する。

【放送スケジュール】（放送はすべてTBSチャンネル２ 名作ドラマ・スポーツ・アニメ）

＜木下グループ カップ メダル・ウィナーズ・オープン2016＞

１月15日（金）14：00～17：00（独占生中継）

＜木下グループpresents ニューイヤー・オン・アイス in 大阪 with パディントン＞

１日目：１月16日（土）12：00～15：00（独占生中継）

※このコーナーではスカパー！の数多くのスポーツコンテンツの中から、二宮清純が定期的にオススメをナビゲート。ならではの“見方”で、スポーツをより楽しみたい皆さんの“味方”になります。