OLYMPUS DIGITAL CAMERA

(写真:「ラグビー、セブンズの人気を高めていきたい」と意気込む瀬川HC)

 15日、日本ラグビーフットボール協会は男子7人制(セブンズ)の日本代表スコッド21名を発表した。昨年11月にリオデジャネイロ五輪アジア予選を戦った桑水流裕策(コカ・コーラ)、松井千士(同志社大)などに加え、イングランドW杯に出場した15人制代表からも山田章仁(パナソニック)や福岡堅樹(筑波大)ら計19人を選出。五輪本番までに日本国籍取得見込みのジェイミー・ヘンリー(PSIスーパーソニックス)を含めた外国籍選手2名も合わせて招集した。日本代表の瀬川智弘ヘッドコーチ(HC)は「セブンズの新しい歴史を作る。その使命を持って戦っていきたい」と抱負を述べた。今後は国内合宿やHSBCワールドラグビーセブンズシリーズに出場しながら、8月のリオ五輪に向けた強化を進めていく。

 

 15人制が歴史を変えたならば、セブンズは歴史を作る――。瀬川HCは意気軒昂だ。夏に控えるリオ五輪の目標を「メダルを獲得する」と言い切った。

 

 2カ月前に手にしたブラジル行きの切符。キャプテンの桑水流をはじめとした12人のメンバーはそのまま残った。上積みするのは“個”の力だ。瀬川HCは今回のスコッドの選考理由を次のように説明した。

「オリンピック予選は確実な試合をしなければいけない。11月の香港大会ではチームプレーをできる選手を軸に選びました。ただ我々は世界では強豪国ではなく下位にいるチーム。メダルを獲るためには1人1人の強みを出していかなければいけないと思っている。まずは個人の強みを持っている選手」

 

 個の力――。その代表格は昨年のイングランドW杯でも活躍した山田だろう。指揮官は「得点してもらいたい時にトライを獲れる嗅覚がある。勝負強さに期待している」と高く評価する。日本随一の決定力を誇るウイングは、かつてアメリカンフットボールとラグビーとの二刀流をこなした経験を持つ。他競技へのチャレンジで自らのプレーの幅を広げた。山田は2月開幕の世界最高峰リーグ「スーパーラグビー」(SR)への参戦が既に決まっており、日本チームのヒト・コミュニケーションズ・サンウルブズのスコッド入りを果たしている。しばらくはセブンズ日本代表とサンウルブズを行き来する。日本のトライゲッターが“二足のわらじ”に挑む。

 

 一方で招集の可能性のあったジャパンの主将リーチ・マイケル(東芝)はメンバーから外れた。瀬川HCによれば「スーパーラグビーに専念したい」という本人の意思を尊重したかたちだ。ニュージーランドの強豪チーフスでプレーするため、チームの優勝を視野に入れている。「負けてからの合流はない」と瀬川HC。8月までの調整を15人制ラグビー一本に絞るため、代表入りは断念した。

 

 今回の招集メンバーには2人の外国籍選手がいる。彼らもまた個の力が高い選手だ。アマナキ・ロトアヘア(リコーブラックラムズ)は山田同様にサンウルブズでのSR参戦が決まっている。五輪では日本国籍のない者は日本代表として出られないが、レギュレーションの違うワールドラグビーセブンズシリーズには出場が可能だ。ロトアヘアに関しては4月の香港セブンズでワールドラグビーセブンズシリーズのコアチーム昇格を勝ち取りたい日本代表と、「ワールドレベルでの経験を積みたい」というロトアヘアの希望が合致したかたちとなった。もう1人のヘンリーについては現時点で8月までに日本国籍を取得できれば最終登録の12人に入ってくる可能性は十二分にある。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

(写真:日本ラグビー協会のある敷地内。リオ五輪までのカウントダウンは始まっている)

 地球の裏側で開催される4年に1度の祭典。リオ五輪から7人制ラグビーは五輪新種目として産声を上げる。日本ラグビー協会オリンピック・セブンズ部門の本城和彦部門長は「世界のラグビーはこれからセブンズというカードをオリンピックで切ることによって、新しい局面を迎える。ラグビー界が踏み入れたことのないオリンピックの世界。日本代表もパイオニアの一員としての喜びと誇りを感じつつ、強化を進めていきたい」と語る。指揮を執る瀬川HCは「人とボールがハイテンポに動き続けるラグビー」を掲げ、世界の強豪に挑むつもりだ。

 

 日本ラグビーで記憶に新しいのは昨年のW杯で南アフリカを破る歴史的なジャイアントキリング。15人制代表に続けとばかりにセブンズの鼻息も荒いはずだ。瀬川HCも“桜の戦士”たちから勇気をもらった。「セブンズでメダル。ピンとこない選手もいると思う。でも(昨年W杯で15人制代表の)彼らはやってのけた。簡単ではないが、やるべきことをやり続ければ目標に到達できる」。日本代表は8月までに8度の国内合宿を予定。香港セブンズのほか、ワールドセブンズシリーズにはニュージーランド大会、オーストラリア大会、アメリカ大会、シンガポール大会の4大会に出場する。

 

<男子セブンズ日本代表>

大島佐利(サントリーサンゴリアス)

小澤大(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)

桑水流裕策(コカ・コーラレッドスパークス)

合谷和弘(流通経済大学)

後藤駿弥(ホンダヒート)

後藤輝也(NECグリーンロケッツ)

坂井克行(豊田自動織機シャトルズ)

副島亀里ララボウ・ラティアナラ(玄海タンガロアラグビー)

トゥキリ・ロテ(北海道バーバリアンズ)

豊島翔平(東芝ブレイブルーパス)

橋野皓介(キヤノンイーグルス)

羽野一志(NTTコミュニケーションズシャイニングアークス)

彦坂匡克(トヨタ自動車ヴェルブリッツ)

福岡堅樹(筑波大学)

藤田慶和(早稲田大学)

松井千士(同志社大学)

安井龍太(神戸製鋼コベルコスティーラーズ)

山田章仁(パナソニックワイルドナイツ)

レメキ・ロマノ・ラヴァ(ホンダヒート)

※ジェイミー・ヘンリー(PSIスーパーソニックス)

※アマナキ・ロトアヘア(リコーブラックラムズ)

 

※は外国籍選手

 

(文・写真/杉浦泰介)