昨年のスポーツ界のMVPはラグビーW杯イングランド大会で強豪の南アフリカを撃破するなど3勝をあげたラグビー日本代表だろう。
この手腕が認められ、ヘッドコーチ(HC)のエディー・ジョーンズはイングランド代表HCに就任した。
手元に昨年の正月、エディーが選手と関係者に送った年賀状のコピーがある。
<2015年9月19日。
ブライトン、午後8時。南アフリカ戦キックオフまであと627日、約20テストマッチです。
日本ラグビー史上最高のチームとなる為、私達に残された時間は残すところ半分になりました。2013年はウェールズ戦勝利で日本ラグビーの歴史を塗り替えました。
お正月、家族とのひと時を楽しんでください。皆さんのご多幸をお祈りしています>
W杯が始まる前のことだ。エディーと親しい関係者が、直截に訊ねた。
「グループリーグの勝算は?」
「南アフリカに5割、スコットランドに7割、サモアに8割、米国には9割」
そこまで自信があるのか、とこの関係者は驚いたという。
エディーは語っている。
「HCとしての私の最大のミッションは選手たちに桜のジャージを着る誇りを取り戻させること。私のミッションに見事に応えてくれた選手たちに、私は誇りを持っている」
初めてエディーにインタビューしたのは2011年12月、彼が日本代表HCに就任する前のことだ。
前年のニュージーランドW杯で、日本代表は1分け3敗に終わった。
物議をかもしたのは2戦目のニュージーランド戦。HCのジョン・カーワンは優勝候補の筆頭から勝利を得るのは困難と判断して、主力を温存したのだ。
これに怒ったのがエディーである。
「W杯は4年に1度しかありません。毎試合勝ちたいという強い思いがなければ戦い抜けない。残念ながらカーワンHCは大会が始まる前に“目標は2勝です”と言った。これは最初から“2試合負けますよ”と言っているようなもの。日本が弱い国ならば、なおさら“どの試合も勝つ”という強い意志と具体的な目標がなければいけません」
この時点で、エディーは既に4年後を見据えていた。流行語にもなった「ジャパン・ウェイ」の原点を、この発言から確認することができる。
エディーの遺産を、2019年にどうつなげるか。うれしい宿題である。
<この原稿は2016年1月29日号『週刊漫画ゴラク』に掲載されたものです>
◎バックナンバーはこちらから