20日、富士ゼロックススーパーカップが神奈川・日産スタジアムで行われた。昨季Jリーグ王者のサンフレッチェ広島が、2015年度天皇杯覇者のガンバ大阪を3-1で下した。試合はスコアレスで折り返すが、後半6分にFW佐藤寿人のゴールで広島が先制する。その5分後には広島が獲得したPKをFW浅野拓磨が決めた。G大阪FW宇佐美貴史のゴールで1点差に詰め寄られた広島だったが、43分にFWピーター・ウタカが追加点を決めて危なげなく試合を制した。

 

 途中出場のウタカ、攻守に活躍

サンフレッチェ広島 3―1 ガンバ大阪 (日産)

【得点】

[広島] 佐藤寿人(51分)、浅野拓磨(57分)、ピーター・ウタカ(73分)

[G大阪] 宇佐美貴史(68分)

 

 広島vsG大阪の2016年シーズンを占う前哨戦は、Jリーグ王者の広島に軍配が上がった。

 

 前半は広島の3バックを中心にしたパス回しで、ゆったりとしたリズムで試合は進んだ。ボールを保持し続ける広島だったが、大きなチャンスを作るには至らず前半を終える。

 

 後半に入り試合は動く。6分、DF塩谷司が右サイドから速いクロスを送る。ニアサイドに走り込んだ佐藤が、GKの前でスライディングをしながら左足インサイドで合わせた。佐藤らしさが存分に発揮されたゴールだった。佐藤は「いいボールを塩谷が出してくれました」とアシストの塩谷を称え、「相手にとってみれば、ああいうところ(ニアサイド)が一番危険だと思うし、前で触られることほど守りにくいことはないと思う。自分のストロングポイントが出た」と振り返った。

 

 その後も広島は攻勢をかける。12分、ペナルティーエリア内の左サイドを突破したMF柏好文がセンタリングを上げる。DF丹羽大輝がスライディングでカットを試みるが、審判にハンドを取られてPKを献上した。このPKを途中出場していた浅野がゴール左上に決めて、広島がリードを2点に広げた。今季から10番を背負う浅野が、早くも結果で期待に応えた。

 

 これ以上、点差を離されたくないG大阪も反撃に転じる。23分、MF阿部浩之が右サイドからクロスを供給すると、宇佐美がゴール中央に飛び込んだ。宇佐美のヘディングシュートはゴールに突き刺さり、G大阪が1点を返した。ペナルティーエリア内で絶好のポジションを取った宇佐美の駆け引き勝ちだった。

 

 勢いに乗って、同点に追いつきたいG大阪は前がかりになる。広島は空いたスペースをうまく利用してカウンターを仕掛け、G大阪に流れを渡さない。すると広島は28分、右CKから追加点を奪う。ニアに上げたボールはDFにクリアーされてしまう。このこぼれ球をファーサイドで待ち構えていたウタカが右足ボレーで合わせる。シュートはMF井手口陽介に当たってコースが変わり、ゴールネットを揺らした。今季、清水エスパルスから加入した助っ人のスーパーボレーでダメを押した。

 

 その後はリードを広げた広島が危なげなく試合を運び、3-1で広島が勝利。今季初タイトルを奪取した。

 

 試合後、敗軍の将となったG大阪の長谷川健太監督は「先制されて前に出ざるを得ない状況になったが、PKを入れられてしまった。前がかりにならないといけない中で1点を返した。そこまでは良かったが、セットプレーから取られて試合自体が苦しくなった」と試合を総括した。横浜F・マリノスからMFアデミウソンを獲得して、新布陣を試したが完成度はまだ高くない。指揮官は「前半、危ない場面はあまりなかったが、狙っていたような守備ができなかった。まだまだこれから熟成させていかなければ」と語った。

 

 一方、今季初タイトルを手にした広島の森保一監督は「タイトルを取れたことが何よりも良かった」と喜びつつも、反省点を挙げる。「これまでやってきたことは出せた。ただ、今年やっていかなければならない部分、中央から崩していくことと、いい形で起点を作って攻撃を仕掛けていくという部分はまだ改善していかなければならない」。新戦力のウタカに関して、森保監督は「チームのコンセプトとして守備の部分でやってもらわないといけないこともあるが、彼の良さは攻撃。ゴール前でいかに仕事ができるか。チームとして彼の強みを活かせるようにする」と期待を口にした。

 

 両チームともリーグ開幕前の前哨戦で互いに新戦力を試し、チーム状況を確認できたはずだ。この試合での課題を修正して広島は23日に、G大阪は24日にAFCアジアチャンピオンズリーグに臨み、1週間後にはJリーグの1stステージの開幕を迎える。

 

(文/大木雄貴)