格闘技界、大みそか「大連立」のその後は……

 2007年は、総合格闘技界にとって激動の1年だった。
 3月、「PRIDE」の運営母体が米国の人気総合格闘技団体「UFC」のオーナーであるロレンゾ・フェティータ氏が新たに設立する企業に移ることが発表されたが、その後休止状態が続き、新運営会社として立ち上がったPRIDE FCワールドワイドの日本事務所が10月初旬に突然閉鎖に追い込まれ、事実上、PRIDEは消滅した。
 しかし、旧PRIDEスタッフ有志による区切りイベント「やれんのか! 大晦日! 2007」(12月31日・ささいたまスーパーアリーナ)の開催がM-1グローバルのサポートで決定。さらには、かつてPRIDEと対立関係にあったK-1が主催に加わり、主力選手を派遣するなど「格闘技界の大連立」が掲げられた。

 京セラドーム大阪で開催された「Dynamite!!」ではメーンで桜庭和志(チーム桜畑)と船木誠勝(ARMS)が対戦し注目を集めた。「やれんのか!」には、「Dynamite!!」から秋山成勲(フリー)、チェ・ホンマン(韓国)が送り込まれ、それぞれ三崎和雄(GRABAKA)、エメリヤーエンコ・ヒョードル(ロシア)と対戦。この2試合はTBS系列の「Dynamite!!」中継の中で放映されるなど、協力関係をあらためて印象づけた。

 現在、格闘技界は、米格闘技団体のUFCが最大勢力となっているが、「やれんのか!」のサポートをいち早く表明した米国の新総合格闘技M-1グローバルのモンテ・コックスCEOは「M-1グローバルとしては、UFCと違う団体でありたい。ファイターを団体どうしでシェアしたり一緒にイベントを行っていきたい。私たちはMMA(Mixed Martial Arts.)を世界的に発展していきたいと思っている。今後も協力関係はオープンに検討していきたい」と今後も日本の格闘技界と協力していく意欲を示している。

 大みそか「Dynamite!!」終了後、K-1の谷川貞治イベントプロデューサーは「選手だけでなく主催者も結集し、もう1回大連立をしたい」とコメント。「やれんのか!」でも大会の最後に、次回イベントが春頃に開催されることが示唆され、ファンは大きな期待を寄せている。

 また、昨年創設された新団体「戦極(せんごく)」の旗揚げイベントが3月5日に開催される。PRIDEを主戦場にしていた元柔道五輪金メダリスト吉田秀彦(吉田道場)、菊田早苗(GRABAKA)らの参戦が予定されており、今後の方向性にも注目が集まる。

 2007年の年末から盛り上がりを見せた格闘技界の「大連立」は、08年、どのような展開を見せるのか。ファイターたちの動向を含め、目が離せない。

 桜庭×ヒクソン、6月に実現か?

 今春、リングへの復帰が噂される“400戦無敗”の格闘家ヒクソン・グレーシーの動向にも注目だ。大みそかの「Dynamite!!」イベント終了後、谷川イベントプロデューサーは、船木に勝利した桜庭とヒクソンとの対戦について「年明けにも直接交渉する」と明言した。

 ヒクソンは、2000年5月26日、東京ドーム『コロシアム2000』の船木戦以来、リングから遠ざかっている。この試合以来7年ぶりにリングに復帰した船木を、大晦日、1R6分25秒、羽根折り腕固めで下した桜庭も、ヒクソン戦に意欲を示している。

 昨年11月に48歳の誕生日を迎えたヒクソンの強さは未知数だが、ヒクソン自身、ブランクへの不安は感じておらず、自分の力に絶対の自信を持っていると言われる。桜庭×ヒクソンは、早ければ今年6月の韓国大会で行われる可能性がある。実現すれば、2008年最大の注目の試合となりそうだ。

 ヘビー級はシュルト時代。MAXは魔裟斗の王座返り咲きに期待

 K-1ヘビー級戦線は、昨年のGPで史上初の3連覇を果たしたセーム・シュルト(オランダ)の時代が続きそうだ。 昨年3月には、レイ・セフォーとのスーパーヘビー級王者決定戦を制し初代王者になった。

 12月8日に行われたワールドGPでも、安定した戦いぶりを発揮。決勝では、ピーター・アーツ(オランダ)に1R1分49秒、KO勝利をおさめた。アーツ、ホーストら歴代王者ができなかったV3を危なげなく達成した。

「3連覇で歴史に残る選手になった。次は4連覇を目指したい」とシュルト。2008年、前人未到の4連覇に挑む。

 日本勢では、昨年のGPでただ1人ベスト8入りした澤屋敷純一(チームドラゴン)にも注目したい。GP準々決勝ではアーツにKO負け。格の違いを見せつけられたが、まだ23歳。バンナを倒した実績を糧にさらなる飛躍に期待がかかる。

 K-1 MAXの注目は、日本のエース魔裟斗だろう。2007年、決勝トーナメント1回戦の準々決勝では、04、06年王者ブアカーオ・ポー.プラムック(タイ)からダウンを奪い、勝利をあげたが、決勝では王者アンディ・サワーに完敗した。

 試合後、魔裟斗は「トーナメントはもういい」と語ったが、2008年はトーナメントのシステムの見直しも謳われていることから、今後の動向にも注目が集まる。日本人初のK-1 WORLD MAX世界王者である魔裟斗の王座返り咲きをファンも強く願っている。