キャッチャーのイメージと言えば水島新司が描く「ドカベン」の山田太郎である。

 体形はずんぐりむっくり。高校3年夏の時点では身長175センチ、体重85キロとある。


 

 梶原一騎原作「巨人の星」で星飛雄馬とバッテリーを組んだ伴宙太も同様の体形だった。

 こちらの身長・体重は定かではないが、巨人時代の1968年には90キロ程度だったと見られている。

 

 どっしりとしていて頑丈。今後、こうしたキャッチャーのイメージは根底から覆されるかもしれない。漫画の世界ではスピーディーで小回りのきくタイプが好捕手として描かれるようになるのではないか。

 

 今季からプロ野球のルールが変わる。クロスプレーの際、キャッチャーは本塁前でランナーをブロックすることができなくなるのだ。ボールを持たずに走路を塞ぐことも禁止される。

 

 一方でランナーも、走路からはずれた位置にいるキャッチャーへの体当たりは危険なプレーと見なされ、悪質な場合は守備妨害をとられる。

 

 これまで教わってきたことと、正反対のプレーを求められるわけだから、キャッチャーは大変だ。まさにコペルニクス的転回である。

 

 キャッチャーに巨漢が多かったのは本塁上でのクロスプレーで有利に働いたからである。少々、不器用でも本塁前で走者をはね飛ばすだけのパワーと体格があれば「守護神」の役割を果たすことができた。軽量のランナーにとっては故障のリスクを伴うプレーは避けたいとの思いもあり、それが抑止力にもなっていた。

 

 しかし、ブロックが禁止される新ルールでは、ランナーはブレーキを踏まなくなる。“追いタッチ”になれば、十中八九はセーフだ。

 

 必然的にキャッチャーに求められる役割も変わってくる。捕球後にもたついているようでは仕事にならない。素早く処理し、タッチに行かなければならない。キャッチャーにも機動力が求められる時代がやってきた。

 

<この原稿は『週刊大衆』2016年2月29日号に掲載されたものです>


◎バックナンバーはこちらから