4日、競泳のリオデジャネイロ五輪日本代表選考会を兼ねた「第92回日本選手権水泳競技大会」が東京辰巳国際水泳場で開幕し、決勝4種目が行われた。男子400メートル個人メドレー決勝は、同種目ロンドン五輪銅メダリストの萩野公介(東洋大)が4分8秒90で制し、この種目5連覇を達成した。萩野は派遣標準記録(4分12秒24)を突破し、2大会連続の五輪代表に内定。4秒62差で2位に入った瀬戸大也(JSS毛呂山)は昨年の世界選手権優勝により、予選出場で代表決定となった。女子400メートル個人メドレー決勝は高橋美帆(ミキハウス)が4分35秒55で優勝した。4分36秒68で2位に入った清水咲子(ミキハウス)と共に派遣標準記録(4分36秒88)をクリアし、代表入りを果たした。

 

 男子400メートル自由形は江原騎士(自衛隊)が3分47秒43で制したが、派遣標準記録に0秒90届かず代表入りはならなかった。女子400メートル自由形は五十嵐千尋(日本体育大)が4分9秒70で4連覇を達成したが、派遣標準記録(4分5秒49)を突破できなかった。また女子100メートルバタフライ準決勝で15歳の池江璃花子(ルネサンス亀戸)が57秒55で日本記録を更新し、決勝に進出した。 

 

 曇り空の5連覇

 

 世界王者を相手にぶっち切っても表情は晴れなかった。マルチスイマー萩野は今大会、リオ五輪に照準を合わせて出場種目を3つに絞った。その中でも本命種目と言ってもいいのが男子400メートル個人メドレーだ。日本選手権4連覇中で、自身が日本記録を持つ。

 

 予選1位通過の萩野は“定位置”の第4レーン、同2位の瀬戸大也が隣の第5レーンで決勝はスタートした。第1泳法はバタフライ。この種目を得意とする瀬戸を相手に50メートルは同タイム、100メートルでは身体半分ほどのリードを奪った。54秒65のタイムは自身の日本記録を1秒67上回るハイペースだ。

 

 続く背泳ぎは萩野の得意種目である。一気に差を広げようと、150メートルのターンで身体1つ分リードした。折り返し地点となる200メートルのターンは1分57秒23。依然として日本新記録ペースだった。

 

 本調子ではない2位・瀬戸との差を大きく広げ、ほぼ独泳状態となる。後は観客の注目は優勝タイムに集まった。しかし、前半に飛ばした分のツケが回ったのか、後半は伸びを欠いた。300メートルのターンで日本記録から0秒12遅れると、ラスト100の自由形でも爆発的なスパートは見られなかった。

 

 フィニッシュタイムは4分8秒90。結局、日本記録には1秒29届かなかった。萩野は「予選が良かったので、もうちょっとタイムが欲しかった」と悔しがった。とはいえ派遣標準記録をクリアし、ロンドンに続く五輪切符を手に入れた。昨年は日本選手権4冠を果たしながら、右肘の骨折で世界選手権出場を直前でキャンセルする泣き目に遭っていた。ケガからの復活は十分に印象付けた。

 

 日本では圧倒的強さを誇る萩野だが、五輪と世界選手権で王者になったことはない。2位に大差をつける圧勝にも納得しないのは世界のトップを見据えているからであろう。「このリベンジを果たしたい」。真夏のリオで、萩野は“水の王者”の称号を奪いに行く。

 

 初日の決勝結果は次の通り。

 

<男子400メートル自由形・決勝>

1位 江原騎士(自衛隊) 3分47秒43

2位 宮本陽輔(自衛隊) 3分48秒42

3位 天井翼(東洋大) 3分50秒87

 

<男子400メートル個人メドレー・決勝>

1位 萩野公介(東洋大) 4分8秒90

2位 瀬戸大也(JSS毛呂山) 4分13秒52

3位 藤森丈晴(ミキハウス) 4分14秒77

 

<女子400メートル自由形・決勝>

1位 五十嵐千尋(日本体育大) 4分9秒70

2位 長谷川鼓(日本体育大) 4分14秒22

3位 和田麻里(中京大) 4分14秒25

 

<女子400メートル個人メドレー・決勝>

1位 高橋美帆(ミキハウス) 4分35秒55

2位 清水咲子(ミキハウス) 4分36秒68

3位 大橋悠依(東洋大) 4分37秒33

 

※選手名の太字は五輪代表に内定

 

(文/杉浦泰介)