7日、競泳のリオデジャネイロ五輪日本代表選考会を兼ねた「第92回日本選手権水泳競技大会」4日目が東京辰巳国際水泳場で行われた。女子200メートル個人メドレー決勝は寺村美穂(セントラルスポーツ)が2分9秒87で初優勝した。2分10秒76の世界ジュニア新記録をマークし、2位に入った今井月(豊川高)と共に派遣標準記録(2分11秒03)を突破。揃って初の五輪代表入りを決めた。この種目、3連覇中だった渡部香生子(JSS立石)は3位で代表入りを逃した。女子200メートルバタフライは既にリオ五輪行きを決めている星奈津美(ミズノ)が2分6秒32で制した。2分6秒92で2位に入った長谷川涼香(東京ドーム)は派遣標準記録を(2分7秒82)クリアし、初の代表入りを果たした。女子100メートル背泳ぎ決勝は中学3年の酒井夏海(スウィン南越谷)が1分0秒12の中学新で優勝しが、派遣標準記録(59秒85)を切ることができず、個人種目でのリオ行きの切符獲得はならなかった。

 

 リオへの逃避行

 

 番狂わせと言っていいだろう。女子200メートル個人メドレーは伏兵・寺村がリオへと一直線。序盤から飛ばして、逃げ切った。

 

 この種目の大本命は渡部。日本記録保持者で日本選手権3連覇中、昨年の世界選手権では銀メダルを獲得している。6日の準決勝も1位通過しており、100メートル&200メートル平泳ぎに続く3枚目のリオ行きの切符獲得は既定路線かと思われた。そのほかにも400メートル個人メドレーで五輪代表権をもぎとった清水咲子(ミキハウス)、高橋美帆(ミキハウス)も決勝に出場した。

 

 しかし、スタートから勢いよく飛び出したのは寺村だった。第1泳法のバタフライから飛ばすに飛ばす。50メートルのターンは27秒58。日本記録を1秒以上上回るペースで泳いだ。今井、大本里佳(イトマン)を引き連れていく。泳法が背泳ぎに変わっても、リードを広げる。折り返し地点での1分0秒76は、依然として日本新記録ペースだ。

 

 第3泳法は渡部が得意とする平泳ぎだ。この時点で5番手の渡部は巻き返しを図る。一気にごぼう抜きで2番手に上がった。だが、寺村は渡部を上回るペースで2番手以降との差を広げた。1分37秒23と日本記録よりも2分近く速いタイムで、ラストの直線を迎えた。自由形ではペースを落としたが、身体ひとつ分あった貯金を吐き出すことはなかった。

 

 誰よりも先に2分9秒87でフィニッシュした。寺村は見事な逃げ切り勝ちで、リオ五輪代表を決めた。大本命の渡部は自由形で今井にかわされ、3位に終わった。派遣標準記録は突破していたものの、2位以内に入れなかったため200メートル個人メドレーでの代表権は掴めなかった。レース後もなかなかプールから上がれず、ショックを隠し切れない様子に映った。

 

 初優勝を収めた寺村は、4年前のロンドン五輪選考会で2位に入りながら派遣標準記録に届かなかった。その後はケガなどもあり、思うような結果が残せなかった。彼女は「4年間、つらいことの方が多かった」と振り返る。14年にアジア競技大会で銅メダルを獲得したが、昨年は世界選手権の代表入りを逃した。寺村は日の丸を背負うチャンスを再び手にした。困難から何度も這い上がってきた21歳は「世界と戦っていけるように努力したい」と力強く語った。

 

 4日目の決勝結果は次の通り。

 

<女子100メートル背泳ぎ・決勝>

1位 酒井夏海(スウィン南越谷) 1分0秒12

2位 竹村幸(イトマン) 1分0秒18

3位 諸貫瑛美(スウィン館林) 1分0秒37

 

<女子200メートルバタフライ・決勝>

1位 星奈津美(ミズノ) 2分6秒32

2位 長谷川涼香(東京ドーム) 2分6秒92

3位 小林奈央(初芝SS) 2分9秒43

 

<女子200メートル個人メドレー・決勝>

1位 寺村美穂(セントラルスポーツ) 2分9秒87

2位 今井月(豊川高) 2分10秒76 ※世界ジュニア新

3位 渡部香生子(JSS立石) 2分10秒93

 

※選手名の太字は五輪代表に内定。

 

(文/杉浦泰介)