僕は巨人で4年間投手コーチを務めていたこともあり、プロ野球の試合を見ていると、どうしても素質のある若いピッチャーに目が行ってしまいます。今年注目しているのは、僕と同じサウスポーの横浜DeNA今永昇太と石田健太です。彼らはダイヤモンドの原石と言っていいでしょう。

 

 今永は昨秋ドラフト1位指名で入団したルーキー、石田は今年で2年目の若手です。2人とも童顔で可愛らしい顔をしていますが、持っているストレートは一級品。彼らはサウスポーながら150キロ以上の力強いボールを投げます。

 

 僕が今現在、球界最高のピッチャーに挙げているクリス・ジョンソン(広島)は、球威のあるストレートを最大の武器にしています。ジョンソンの投球を見ていると、球持ちが長くてボールがなかなか指から離れません。彼のようにリリースするタイミングが遅いと、バッターは球の出所が見ずらく、後手後手に回ってしまいます。これは2人に限らず言えることですが、ジョンソンの投球はまさに理想的なので是非参考にして欲しいと思います。

 

 良いピッチャーに成長する条件として球種を増やすことも必要です。彼らはまだ持っている球種が少ないので、チェンジアップやカーブやカットボールを身に付けることで、さらなる成長が見込めます。球種を覚えるには投げ込むしかありません。今から投げ込んだとしても、実際に使えるのは秋口頃だと思いますが、何事もトライすることが大切です。

 

 今永はこれまで4試合投げて0勝3敗、防御率2.39。22日の巨人戦は、7回6安打1失点と及第点といえるピッチングでしたが、未だ勝ち星が付いていません。一方、石田は15年=2勝6敗、防御率2.89、16年=1勝1敗、防御率4.44。今年はすでに1勝を挙げていますが、4試合投げて自責点12点と反省点が多い内容が続いています。

 

 彼らの成績から見て分かるように“素質がある”と、“勝てる”というのはまた別の話なのです。いくら素質があっても個人が努力をしなければ花は開きません。彼らはまだ“つぼみ”の状態なので、色々なことにトライし、吸収して横浜の次代のエースを目指して欲しいと思います。

 

 投手コーチ目線から見て、今永と石田は素晴らしい素材を持っている魅力的なピッチャーです。今後の2人の成長が楽しみです。

 

4<川口和久(かわぐち・かずひさ)>

1959年7月8日、鳥取県鳥取市出身。鳥取城北高を卒業後、デュプロを経て、81年にドラフト1位で広島に入団。入団3年目に15勝マークすると、86年から91年までの6年連続で2ケタ勝利を挙げ、最多奪三振を3度(87年、89年、91年)受賞した。左腕エースとして活躍し、チームを3度のリーグ優勝に導いた。94年オフに球団史上初のFA権を行使して巨人に移籍。95年にプロ野球史上14人目(当時)となる2000奪三振を達成。98年限りで現役を引退すると、野球解説者の道に進む。09年、10年に巨人の春季キャンプで臨時投手コーチを務めた後、11年に投手総合コーチに就任。4年間で3度のリーグ優勝に導いた。現在は野球解説者として活躍する。通算成績は139勝135敗2092奪三振。身長183センチ、体重75キロ。左投両打。


◎バックナンバーはこちらから