nomitai4二宮: 太田さんは現在、コーチとしてフィギュアスケートを教える立場でもあります。選手を見ていて、どのあたりに“この子、才能あるなぁ”と感じますか。

太田: センスを最初から持ち合わせている子は、やはりいます。たとえばパッとスピンをやらせてみた時に、全然身体が流れないんです。その場にとどまりながら3、4周回れる。そういう子は最初から氷に対して素直に乗っていけるという感じがしますね。

 

 

二宮: その点で言えば、小さい時から氷に慣れていた方がいいんでしょうか?

太田: はい。やはりある程度は小さい時、恐怖感のないうちにやっておく方が有利だとは思います。

 

二宮: 昨年の全日本選手権で2位に入った15歳の樋口新葉選手はどうですか。

太田: 新葉さんはもう普段からハイパーなんです。他の先生もおっしゃっていましたが、自由にツルツル滑っていく選手で、スケートリンクからもはみ出そうなくらい。もう誰が見ても「あの子はうまくなる」と感じさせる原石だったみたいですね。

 

二宮: リンク狭しという感じで、はみ出しそうなくらい表現しているところがいいんですかね。

太田: 彼女を指導するコーチとたまに話すことがあるんです。私がある小学校1年生の女の子の滑りを見て「あの子、上手になりそうですよね」と言うと「うーん。あの子は言ったことはちゃんとできるけど、爆発的にずば抜けているわけではないよね」というようなことをおっしゃっていたんです。それを聞いて、逆に新葉さんは相当飛び抜けていたんだなと感じました。

 

二宮: 小さい枠に収まりきらない、溢れんばかりのエネルギーがあったと。

太田: そうなんです。だから、コーチも先ほどの子に対して「コンパクトできれいに収まっているかもしれないけど、飛び抜けてはいない。どんなこけ方をしても、怖がらない思いきりとかがあるわけじゃないんだよね」と評してしました。

 

二宮: 逆に恐い物知らずなぐらいの方がいいんでしょうね。

太田: そうですね。私も教えていて思います。リンクで思い切りジャンプして、痛そうに転んでも何度でも跳べる。そういう恐がりじゃない子は、ビックリするくらいうまくなります。

 

二宮: 怖がりはダメですか。

太田: ダメではないのかもしれないですが、自分に“ここまで”という限界を作っちゃうんでしょうね。

 

二宮: 以前、本田武史さんと話した時に言っていましたね。コケ方がうまい選手はいいって。氷と友達になれる選手がいいとも。

太田: そうですね。それが原点ですよね。

 

二宮: 全日本選手権を連覇し、世界選手権で日本人最高の5位に入った宮原知子選手は?

太田: 宮原選手はコンパクトであらゆるものがしっかりしている感じですよね。言われたことを着実にコツコツこなせる。練習量もピカイチと聞いたことがあります。

 

二宮: 小柄だけど演技にパンチが効いているような感じがしますよね。練習量と成長は、比例するものでしょうか。

太田: そこは難しいところですね。ただコーチからすれば、宮原選手のようなスケーターが報われてほしいなと思うんです。練習しなくてもできてしまう子はいますし、そういう選手はスケートに集中させるために、私たちもいろいろと努力はするんです。そういう子たちって、意外と気が多かったりしますね(笑)。

 

二宮: 少々、ヤンチャな方が成功するということですか?

太田: そういう選手もいることを、私たちも受けとめなくてはいけません。“練習嫌いな選手だからダメ”というのではなく、そういう子も上手く育てていかないといけないと思います。

 

 しなやかな大人のスケーティング

 

nomitai5二宮: ところで、平昌五輪出場を目指す浅田真央選手の現状について、太田さんはどうご覧になっていますか?

太田: そうですね。今の採点システムだと、跳んで回って点数を稼ぐことができる人が上にいってしまう。真央ちゃんのスケートの魅力が試合ではなかなか評価されにくい。アイスショーの方が気分的には楽かもしれません。それでも彼女は結構、コンペティティブ(競争的)な考え方なので、アイスショーだと物足りないと思うのかもしれませんね。なので、もう少し競技会という場所で頑張るのだと思います。

 

二宮: 2年前のソチオリンピックではショートプログラムで16位となりメダルが厳しくなってからのフリーは圧巻でした。

太田: 彼女は土壇場で力が出るタイプではあります。今回の世界選手権後もインタビューで「来年は勝つことを目標にする」と言っていましたね。

 

二宮: 彼女も25歳になりました。

太田: 10代のころに比べれば、回復力が少し違ってくると思います。

 

二宮: 太田さんのご自身の経験では?

太田: やはり周りの環境も変わってきますよね。同い年でストイックにスケート漬けの日々を送っている人が減ってくるわけですよ。高校生くらいまでは競技一本で打ちこめていたかもしれませんが、大学生になるとオフを取っていたり、旅行に行っていたりする。その中で、自分を律するのはなかなか難しいものはありました。周りは就活など将来に向けて動き始める中、自分はスケートに集中していかなければいけない。そのあたりのバランスの取り方も変わってくると思うんです。真央ちゃんぐらいの年になれば、練習ばかりしていれば、うまくなっていくものでもないとわかってくる頃だと思います。

 

二宮: 人にもよるのでしょうが、それは何歳くらいだと?

太田: そうですね。20歳超えて、身体の成長やリズムに慣れてきます。今回の世界選手権で銀メダルを獲得したアシュリー・ワグナー(米国)選手のように年齢を重ねてきてから大成する人もいます。だから真央ちゃんも、身体のリズムも落ち着いてきたと思うんです。以前のような練習量はこなせないというのはわかっていると思うので、その辺りの折り合いをつけて、一日一日、毎日のできるベストを尽くして自信に繋げていくか。そんな感じですよね。

 

二宮: 問題は“身体のバネ”でしょうか?

太田: 男子選手には歳と共に下降線をたどっていくという感じはしないんですが、女子に関しては、10代後半くらいの子の方が、見ていてスケートも元気ですよね(笑)。そもそも、パワフルさが違います。でもアイスダンサーを見ていると、30歳くらいまで競技をしている人も多い。滑るということに関して言えば、年齢と共に、よりよく滑る方法やテクニックがわかってくる。ジャンプ力に関しては、本当は衰えるはずではないんですが、無理をしないような練習とか、自分でブレーキをかける方に頭がいくのかもしれないですね。

 

二宮: なるほど。大人のスケーティングを学ぶと。

太田: 若い頃のようにピョンピョン跳び続ける演技ではなくなっていくと思います。段々としなやかなスケートになっていくと思います。

 

 美しさを求める芸術競技

 

二宮: 今と昔では指導法も違っているのでしょうか?

太田: 私も生徒に教えている中で、やらないといけないことが多すぎるので苦労しています。今の採点方法でやると、シンプルな綺麗なスケート。つまりスケーティングだけで魅せるだけでは全然点数が取れない。

 

nomitai9二宮: 指導する側になって、選手の時とはフィギュアスケートに対する感じ方が違う面はありますか?

太田: そうですね。多くの先生方は現在の採点方法に関してすごく割り切って教える先生と、昔ながらの素敵なものを残したいと思う先生がいます。私が現役の頃、樋口豊先生に「点数はとれるけど、これだとゴチャゴチャしてあまり綺麗じゃないから、こっちにしたらどう?」と、おっしゃっていた理由が今となってはすごくわかります。

 

二宮: 個々の美意識みたいなものだと。

太田: はい。昔は“なんで点数を取れるのをやらせてくれないの?”と思ったりもしました。今はある程度、割り切ってやっている部分もあります。

 

二宮: 太田さんは表現力豊かで、“氷上のバレリーナ”と呼ばれていました。先生たちも美しさを重視するような指導だったんでしょうね。

太田: そういう先生たちと縁があったのだと思います。ただピョンピョンと跳ぶだけだったら、音楽がBGMみたいに見えてしまう。フィギュアスケートはそんなスポーツでは絶対ないと思っています。

 

二宮: 音楽や振付けがあって、それがフィギュアスケートの一部ですよね。

太田: ええ。総合芸術ですからね。例えば体操だと、技術を魅せる。その技術力が芸術性でもあるという考え方な気がしますね。

 

二宮: そのあたりのさじ加減が難しい。

太田: そうですね。生徒も中学生くらいの時期になってくると、小学生の時のように素直にコーチの言うことを聞いてくれるわけでもない。そのあたりは生徒と食い違うこともあります。

 

二宮: ところで外国の選手は、よくお酒を飲まれるんですか?

太田: ロシアの選手はすごくよく飲みますね。しかも、皆さん強いウォッカを(笑)。

 

二宮: ロシアは寒いから飲んで、身体を温めている部分もあるのかもしれませんね。

太田: ええ。私も「Makes me warm」(温まるから)と聞いたことがあるので、飲んだ方が温まるんだなと思いましたね。

 

二宮: 今日は、華やかな甘い香りとすっきりとしたキレ味が特徴のそば焼酎『雲海』のソーダ割り「そばソーダ」を飲んでいただきましたが、改めてお味はいかがでしょう?

太田: とてもスッキリして飲みやすかった。ソーダで割るというのは斬新な感覚で、また飲みたくなりました。ちょっと脂っこいものとか一緒にいただきたいですね。

 

二宮: では次回は『雲海』を天ぷらと一緒にスケート談義でも。

太田: 是非。最近はお魚とか海鮮ものが好きになってきましたので和食といただきたいです。宜しくお願いいたします!

 

(おわり)

 

nomitai3太田由希奈(おおた・ゆきな)プロフィール>

1986年11月26日、京都府生まれ。5歳からフィギュアスケートを始め、同志社女子高1年時には、ISUジュニアグランプリを制する。同年、世界ジュニア選手権で優勝し、日本人として10年ぶり3人目の快挙を達成した。シニアデビューを果たした03-04シーズンには、四大陸選手権を制覇した。豊かな表現力と美しい所作から“氷上のバレリーナ”と呼ばれていた。2008年に現役を引退以降、プロスケーターとしてアイスショーに出演する傍ら、振付師や指導者としても活躍している。

 

 

 今回、太田さんと楽しんだお酒は本格そば焼酎「雲海」。厳選されたそばと、宮崎最北・五ヶ瀬の豊かな自然が育んだ清冽な水で丁寧に造りあげた深い味わい、すっきりとした甘さと爽やかな香りが特徴の本格そば焼酎です。ソーダで割ることで華やかな甘い香りが際立ちます。


提供/雲海酒造株式会社

 

<対談協力>
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土曜日16:00~23:00((L.O.22:00)

定休日 日曜日

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☆プレゼント☆

太田さんの直筆サイン色紙を本格そば焼酎「雲海」(900ml、アルコール度数25度)とともに読者3名様にプレゼント致します。ご希望の方はこちらより、本文の最初に「太田由希奈さんのサイン希望」と明記の上、下記クイズの答え、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、このコーナーへの感想や取り上げて欲しいゲストなどがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締切は5月12日(木)までです。たくさんのご応募お待ちしております。なお、ご応募は20歳以上の方に限らせていただきます。

 

◎クイズ◎

 今回、太田さんと楽しんだお酒の名前は?

 お酒は20歳になってから。

 お酒は楽しく適量を。

 飲酒運転は絶対にやめましょう。

 妊娠中や授乳期の飲酒はお控えください。

(構成・写真/杉浦泰介)


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