4月は日本代表関連で大きな出来事がありました。W杯アジア最終予選と、リオデジャネイロ五輪グループステージの組み合わせ抽選が行なわれました。ここまでくるともう、待ったなし。あとは死にもの狂いでやるしかありません。A代表、U-23代表ともに気迫溢れる戦いを期待したいですね。

 

死にもの狂いで挑むアジア最終予選

 

 日本はオーストラリア、サウジアラビア、UAE、イラク、タイと同じB組に入りました。対戦相手として“厳しいな”という印象はありますが、決まった以上やるしかないでしょう。UAEには去年のアジアカップ準々決勝でPK戦の末に、敗れたこともあり、不安視する声がありますが、僕はさほど気になりません。負けはしましたが勝機は十分あった。引きずる必要はないと思います。

 

 それよりも僕は、オーストラリア、サウジアラビア、イラクを警戒しています。このあたりはかなり日本を研究していると思うので厳しい戦いになるでしょう。中でもやりにくい筆頭候補を挙げるならば、やはりオーストラリアです。日本がワンタッチ、ツータッチを駆使してせっかくいい流れを呼び込んだとしても、オーストラリアはセットプレーや、ロングボール一本から高さを活かしてゴールを狙ってきます。高さは日本のウィークポイントでもあるので恐い相手ですね。

 

 オーストラリア対策としては、高い位置からの速いアプローチが鍵を握ります。狙いは2つ。高さでは分が悪すぎるので、まずはロングボールを蹴らせないこと。高い位置で奪えれば、日本がショートカウンターを仕掛けるチャンスがあるからです。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は、「デュエル」という言葉を用いて選手に球際での強さを求めています。オーストラリア戦はまさに球際の強さが勝敗を分けます。相手とのフィジカルコンタクトに屈せずに闘志を見せて「デュエル」してほしいですね。

 

いやらしい3カ国と同組のリオ五輪

 

 オリンピックの方も厳しいグループだなと感じました。スウェーデン、コロンビア、ナイジェリアと日本は同組。いやらしい3チームと同じ組に入ったなというのが率直な感想です。

 

 スウェーデンは激戦のヨーロッパ予選を1位で勝ち抜いてきた地力があるチームです。ナイジェリアもU-23アフリカ選手権を優勝してリオの切符を掴みました。コロンビアは南米予選を2位で、米国との大陸間プレーオフを制して本大会へとコマを進めました。6大会ぶりの出場のため並々ならぬモチベーションで臨んでくるはずです。

 

 日本は手倉森誠監督をはじめ、全員がチャレンジ精神をもって戦えるかにかかっていると思います。相手をリスペクトし過ぎず、若さを前面に出して挑んでほしいですね。特に初戦のナイジェリア戦で波に乗れるかどうか。ナイジェリアは1996年アトランタ五輪で優勝、08年北京五輪では準優勝とアンダーカテゴリーでの活躍が目立ちます。驚異的な身体能力を活かしたサッカーを展開してくる。体の強さだけでなく、しなやかさ、バネを感じます。ただ集中力が欠如していたり、気性が荒い面もありますので、付け込む隙は十分にあるのではないでしょうか。

 

継承、進化、世代交代が求められる新指揮官

 

 なでしこジャパンの新監督も先日、発表されましたね。U-20女子代表監督の高倉麻子さんが兼任でなでしこの指揮も執るそうです。素晴らしい人事だと思いますね。世代交代が必要だと囁かれていた中でアンダーカテゴリーを指揮している高倉監督はうってつけの人材です。20歳以下の選手を間近で観察して、「将来的にあの選手は使えるな、この選手ものびしろがあるな」と情報を収集できる。これは世代交代を進めるにあたり、かなり大きなアドバンテージがあります。

 

 世代交代だけでなく、佐々木則夫前監督のイズムも継承しつつプラスアルファで、縦への速い攻撃をチームに浸透させてほしいですね。難しい仕事ですが、U-17W杯で日本を優勝させた高倉監督ならきっと、やり遂げてくれるでしょう。

 

 最後に今回の熊本・九州大震災でお亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈りします。そして被災された方々の1日も早い復興を願っています。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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