16試合を終えて、チームは7勝7敗2分で地区2位につけています(5月10日時点)。今年はオープン戦など実践練習が例年よりも少ない状態でシーズンに入りましたが、選手たちは想像以上に頑張っています。
とくにエースの佐藤康平を中心とした投手陣の頑張りが素晴らしいです。先発陣が良いリズムを作ってくれているので、打線も粘り強い攻撃ができています。先発では福井ミラクルエレファンツから移籍してきた石野公一郎、リリーフでは3年目の竹林和範、抑えではジョシュ・コラレスがある程度計算できるので、投手陣は盤石とみていいでしょう。
今季の守護神に抜擢したコラレスは注目選手の1人です。彼は今年からチームに加入した大型右腕。188センチの長身から投げ下ろす直球は150キロを超えます。豪速球だけでなく、変化球でストライクを取れるピッチャーなので非常に安定感がある。これまで登板したほとんどの試合は抑えてくれているので、守護神として十分に期待できそうです。
NPB入りの可能性が高い佐藤にも注目しています。昨年、彼はNPBのスカウトから調査書が来ましたが、ドラフトで指名されるまでには至りませんでした。NPB入りを確実にするためには、もう1つ上のレベルの投球を身に付けなければなりません。例えば、空振りを取れる変化球を磨くことや球速を上げることです。彼はコントロールの精度は良いので、真っすぐや変化球のキレを磨けば、その可能性はぐっと高まるでしょう。
攻撃面は2番・大久保裕貴、3番・大上戸健斗、4番・望月謙人、6番・高山亮たちが頑張っています。
中でも、ここにきて大上戸の状態が上がってきています。7日の福島ホープス戦で猛打賞2打点、8日の武蔵ヒートベアーズ戦で4安打1打点の働きをしました。彼は負けん気が強く、勝負強さが売りの選手です。彼の特長を考えて3番に置いているので、最近の大上戸の活躍は嬉しい限りです。
開幕戦でいきなりホームランを放った高山は、今季の注目株です。彼は185センチと長身で長打力を兼ね備えた選手です。右バッターで彼くらい身長があれば、プロ入りの可能性は十分あります。NPBを目指すためには、今後、スイング力や打撃の確実性を上げていかなければなりません。
そろそろ前期の折り返し地点に入りますが、チームが前期1位に輝くためには2つの課題が挙げられます。
まず1つ目は、キャッチャーを固定すること。今は沢田泰輔と橋爪脩祐を日替わりで起用している状況です。技術がどうこう以前に2人とも実戦経験が少ないので、今は試合に出場させながら勉強させています。現在はキャッチャーの経験不足をピッチャー陣が助けてくれているので、後期が開幕するまでにはなんとか正捕手を固定したいと思います。
そして2つ目は、選手が持っている個々の持ち味をゲームで発揮することです。そのためには選手ひとりひとりが“どうやって(個性を)いかしていくか”を考えながら試合に入ることが重要です。個々が考えてプレーすることで、最終的にチームの勝利に繋がりますからね。
次の試合は13日、石川ミリオンスターズ戦なので、試合間隔が若干空きます。選手たちは“常に良い状態で”とコンディションを整えながらも、自分のレベルアップを念頭に置いて練習に臨んで欲しいと思います。
<吉岡雄二(よしおか・ゆうじ)>:富山サンダーバーズ監督
1971年7月29日、東京都生まれ。帝京高校3年時にはエースとして春夏連続で甲子園に出場。夏は全5試合に登板し、3完封と優勝に大きく貢献した。打者としての素質も高く、高校通算本塁打数は51本を数えた。90年ドラフト3位で巨人に入団するも、右肩を手術。4年目の93年から内野手に転向した。97年オフ、交換トレードで近鉄へ。01年には26本塁打、85打点を放ち、リーグ優勝に貢献。02年はオールスターに出場し、03年は初の打率3割をマークする。04年の球団合併に伴い、新規参入の東北楽天に移籍した。09年からはメキシカンリーグでプレーする。10年オフに現役を引退。翌年、アイランドリーグ・愛媛の打撃コーチに就任。14年から富山の監督を務める。 昨シーズンは、後期地区優勝に輝いた。
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