「イテテテ……」
最近、腰の痛みが増えたのは、筋肉が落ちたことが要因だと思われる。
抗がん剤治療や食事療法を行なってから、短期間に体重が15Kgも落ちたのだから仕方がない。現在の体重は68Kgをキープしているが、主治医からは激しい運動を控えるよう指示されているので、運動量も以前に比べると格段に少ない。
腰痛予防のストレッチが効果的なのは知っているが、自分にはどうもしっくりこないのだ。現役時代と違ってカラダが硬くなっていることもあり、少々苦手意識があるのかもしれない。
「自分に合った予防策を見つけなければ……」
このような悩みを抱えている時に藤波辰爾選手(写真)と話す機会に恵まれた。お会いしたのは先月の中旬ごろだ。
「去年の9月に腰の手術をしてね」。藤波選手の腰が悪いことは有名だ。その昔、ベイダー戦で激しく痛めたのを記憶しているファンも多いのではないだろうか。その時は長期欠場したものの、オペは行なわず温泉などで治療したと報道されていた。
「今回も本当は手術だけは避けたかったけど、足の動きまで悪くなってしまったから」
藤波選手の表情からはかなり深刻な状態だった事が窺える。
しかし、その会話の中で驚きの事実を耳にした。
なんと手術した翌月に試合をしたというのだ。いやはや、昭和のレスラーは怪物である!
「今日の試合もそうなんだけど、まだ足が思うように動いてなくて歯がゆいね」
僕は試合を観戦したが、20代の若い選手の中に混じっていても全く遜色ない動きをしていた。カラダの張りなど見た目にも全く衰えたところは見当たらない。
藤波選手と話していると度々、「動きの悪い方の足を意識して動かす」とおしゃっていた。この意識を向けるという行為が、脅威の回復力に繋がっているのかもしれない。
「リングに上がる以上、肉体やコンディションをしっかりキープしないといけないから、それが良いのかもね」
人前に出て試合するということが、レスラーにとって一番効果的な治療なのだろう。
大きな怪我をしても気持ちが萎えるどころか、それを克服しようとしている。そんな貪欲なところを心から尊敬する。還暦を過ぎても現役を貫いている藤波選手はキラキラと輝いて見えるのだ。
腰が痛いとすぐ泣き言を言っている自分が本当に恥ずかしくなった。
僕は先月からミヤマ☆仮面として、イベント復帰を果たしたが、がんに打ち克つためにもリング復帰をあきらめてはいけないと改めて感じた。
ただし、強いスピリッツは戻ったとしても、今や肉体は一般の方と変わらない。その辺のところをしっかりと認めたうえで対策を練る必要があるだろう。
そこで、一般的な腰痛の対処法を僕が尊敬する治療家の先生に尋ねてみた。
「急激に痛みが強く出た場合でなければ、一番気をつけなければいけないのは冷えだと思います」
がんも含めて、やはり冷えは万病の元のようだ。
「腰の血流を良くするために腹巻きやカイロなどで温めること。膝から下は血管、血液量が多いうえに脂肪組織が少ないので、血液が外気の影響を受けやすく血液自体が冷えてしまいます。その冷えた血液が心臓に戻る途中に座骨神経や腰の筋肉を冷やして過敏にしてしまうと痛みを誘発するリスクが高まりますので、レッグウォーマーやカイロなどで膝下を冷やさないように対策を取られると良いと思います」
僕は普段から「バカボンのパパ」よろしく腹巻をしているが、これは腰痛にも効果的なようだ。膝下を温めることが重要だとは頭になかったが、これからの季節、クーラーの効いた室内にいることも多くなるので、しっかりと足元を冷えから守りたい。
僕は腰も悪いが、首のヘルニアの方も心配だ。その辺のことも質問してみた。
「ヘルニアによって神経が圧迫されていても、その神経に充分な血液の栄養が送られていれば痛みは出ません。大切なのは、悪い部位の筋肉やスジの弾力性を保って、いかに血流をキープするかだと思います」
悪性リンパ腫とヘルニアのどちらも血液の流れを良くすることが改善策だったことを知り、僕は真理を得たようで気持ちが晴れやかになった。
『カラダを冷えから守る』。このシンプルで一番大切なことを忘れないようにしたい。
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