球界の新エース・田中将大の現在地、内川聖一が持つ野球“絶対音感”、「殺したい」と落合監督を本気で恨んだ荒木雅博、静かなる右腕・岸孝之の熱き心、怪物・中田翔の焦り――。
 講談社『週刊現代』で毎回、二宮清純がひとりのプロ野球選手を深く掘り下げ、内面に迫るノンフィクション企画が初めて本になりました。現代のプロ野球を彩る一流選手たちが次々と登場します。なぜ彼らはトップレベルを極め、成功できたのか。野球フリークはもちろん、この春、新たに何かをスタートさせたいと思っている方にもオススメの一冊です。
 二宮清純メッセージ

 どんな名選手にも、野球人生を変えた出会いがある。それが偶然なのか必然なのかと問われれば、きっと、それは後者なのだろう。なぜなら、“引きの強さ”も才能のひとつだからだ。

 東京ヤクルトの宮本慎也は、2000本安打まで、いよいよ残りわずかとなった。大学、社会人野球を経由した選手で名球界入りを果たしたのは先輩の古田しかいない。入団当初の細身で非力な宮本を見て、まさか、ここまでのプレーヤーに成長すると思った者は皆無だったのではないか。

 そんな宮本の恩師は知将・野村である。入団早々、宮本は指揮官の一言で自らの生き方を決めた。
「皆、主役になりたい。それは分かる。しかし脇役もいないと野球というスポーツは成り立たないんだ。一流の脇役を目指せ!」

 思えばプロ野球という世界は、「4番」や「エース」の集まりである。皆、どこそこの学校では一番だった、どこそこのまちでは一番だったとの誇りと自負を持っている。しかし、いわば「天才」の集合体であるプロ野球において、“過去の栄光”は何の役にも立たない。そればかりか、成長を阻害する要因にすらなることがある。

 つまり、この世界には「プロになるまでの人」と「プロになってからの人」がいるのだ。宮本は紛うことなき後者である。自分を過大評価せず、冷静に客観視できる能力が、他のプレーヤーとは決定的に違っていたのだ。その意味では、彼も「天才」のひとりなのだ。

 本書では私が気になる18人のプレーヤーを紹介する。若手もいればベテランもいる。スタープレーヤーもいればバイプレーヤーもいる。どのプレーヤーも、その語りが魅力的なのは、野球というスポーツの為せる業だろう。

(はじめに、より抜粋)

『天才たちのプロ野球』

○エースの作法――田中将大 前田健太 石川雅規 唐川侑己 岸孝之

○主砲の矜持――中村剛也 T−岡田 中田翔 畠山和洋 村田修一 内川聖一

○いぶし銀の微笑――田中浩康 荒木雅博 森福允彦

○ベテランの思考――松中信彦 山本昌 谷繁元信 宮本慎也

(講談社/定価:980円(税込)/二宮清純著)
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