早いもので、リオデジャネイロ五輪までおよそ2か月を切りました。U-23の選手たちは五輪メンバー入りに向けてアピールを頑張ってほしいです。佳境に入ったJ1リーグのファーストステージは6月25日で最終節を迎えます。J1はどこのチームがファーストステージを獲るのか、目が離せません。

 

甘さを露呈したU-23

 

 オリンピックの前哨戦と言われるトゥーロン国際大会が終わりました。結果は1勝3敗でグループリーグ敗退。大会を総括すると、同じ失敗の繰り返しで“甘さが出た”という印象です。日本は先に失点を喫して、追いかける展開の試合ばかり。それも今大会の失点のすべてが前半でした。

 

 試合の入り方が漠然としていて、DF組織の緩みやズレが出てしまった。そこを南米、ヨーロッパ、アフリカと対戦相手のずる賢さで突かれました。国際大会になると少しの綻びで“これだけやられてしまうんだ”“これだけつけ込まれるんだ”と選手たちは痛感したのではないでしょうか。

 

 ここまで来てしまえば、もう技術云々ではありません。まずは試合への入り方を見直して甘えをなくすこと。チームの意識を統一することや士気を高めるなど、メンタル的な部分でまだまだ改善できることはあります。本番前にお灸を据えられて、どこまで選手たちが奮起できるか期待しましょう。

 

 明るいニュースは、U-23日本代表のFW浅野拓磨とMF大島僚太がキリンカップに出場する日本代表のメンバーに選出されました。浅野は海外組とは初顔合わせ、大島はA代表の選出自体が初めてです。これは彼らにとっていい刺激になるでしょう。A代表は特別な場所ですし、海外でプレーしている選手たちから学べることはたくさんある。この経験をU-23代表のメンバーたちにも伝えてほしいですね。

 

観ている側は楽しい“三つ巴”のJ1

 

 注目はオリンピックだけではありません。J1のファーストステージは佳境に差し掛かってきています。5月31日現在で首位は川崎フロンターレ(勝ち点31)、2位が鹿島アントラーズ(同30)、3位が浦和レッズ(同27)です。面白いのが、川崎Fと鹿島は14試合を消化していますが、浦和はまだ12試合しか消化していない点です。

 

 川崎Fは今、すごく調子が上がっています。この勢いはなかなか止められなさそうです。鹿島は序盤、いい試合内容とは言えない中でも、しっかり食らいついて結果を出してきました。浦和はサッカー以外の部分で落ち着かないところがありますが、チームとしての戦い方は決して悪くありません。

 

 暫定3位とはいえ、消化試合が2つ少ないので“浦和優勢”という線もかなり強いです。川崎F、鹿島からすれば浦和の結果を待つしかない状況。優勝争いは混沌としています。この三つ巴の状況、やはり観ている側は楽しいですよね。やっている方は1試合の結果で全てが変わってしまうので、かなりヒヤヒヤですが(笑)。

 

若年層からの育成の見直しを!

 

 AFCアジアチャンピオンズリーグの決勝トーナメント1回戦で、FC東京と浦和が敗退しました。2年ぶりにJリーグ勢がベスト8に進めずに全滅しました。2008年にガンバ大阪がACLで優勝して以来、日本勢は優勝からも遠のいています。

 

 敗因は日程の問題もありますが、僕が強く感じるのは職人の不在だと思います。Jクラブの大半は集団の中で、みんなが同じように動く。チームワークやゲームコンセプトを重んじてプレーをする選手が多いです。

 

 しかし、ほかの国のクラブは「オレはこれしかできない」という一芸に秀でた職人がいます。例えば、“ゴール前はオレが泥臭く飛び込む”“クロスを上げてくれれば、絶対負けない”といった型を持った選手がいます。そういった個の部分で突出している選手が日本には少ないと感じます。

 

 チーム全体がパスをつないで攻撃しようと試合を進めている中に、ひとりでドリブル突破をしようとする選手がいてもサッカーにはいいのかなと思います。そういうプレーはDFとしては、対応するのに意外と困るものです。

 

 個性の強い選手や職人気質の選手を育てるには少年団の頃から、その子の特性、特徴を生かしてあげられるような環境づくりが大事でしょうね。そのため今後の育成では選手の個性を見出すことに重きを置くのか。それとも団体競技なのでチームのみんなと一緒に汗をかける子を育てるべきなのか、どちらがいいのか難しいのですが……。指導者の言う事も聞きつつ「オレはこのプレーが好きなんです!」と、しっかり主張できる子を育てないとアジアでの戦いは勝ち抜けないのではないでしょうか。問題の根っこは浅くはありませんが、それでも今の選手たちにも頑張ってほしい思いもあります。再びJクラブがACLを制覇して、クラブワールドカップに出場することを楽しみに見守りたいなと思っています。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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