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(写真:昨年日本で行われた入団会見では「数字はもちろん大切なもの。ただ、それがすべてではないことはハッキリ言える」と語っていた)

 現地時間15日、ナショナル・リーグのマイアミ・マーリンズがサンディエゴ・パドレスと敵地で対戦した。1番ライトで先発出場したイチローは、初回の第1打席で内野安打を放ち、日米通算4256安打を達成。9回に回ってきた第5打席では二塁打を記録し、通算安打数を4257とした。MLB通算安打はピート・ローズの持つ4256本。イチローはMLB通算3000安打まで21本となった。試合はマーリンズが、パドレスに3―6で敗れた。

 

 日本が誇るヒットメーカーが、またひとつ金字塔を打ち立てた。日本とアメリカ、イチローが2つの国のトップリーグで積み重ねたヒットは4257本。これはP・ローズの持つMLB通算安打(4256)を上回る数字だ。

 

 ペトコパークでのデーゲーム。マーリンズの背番号51は慣れ親しんだ1番・ライトのポジションについた。パドレスの先発はルイス・ぺルドモ。プレイボール直後の初球は見逃して、続く93マイル(約149キロ)のスピードボールにバットを合わせた。ボテボテの打球は一塁線に転がる。キャッチャーのデレク・ノリスが捕球してすぐに一塁へ送球したが、イチローの俊足が勝った。まずは4256安打目を記録した。イチローは後続の連打で先制のホームを踏んだ。ドン・マッティングリー監督の起用に早速応えたかたちとなった。

 

 その後、マーリンズは5回に3点をとられるなど、パドレスに逆転を許した。イチローも3打席凡退と沈黙。そして3-6とマーリンズのビハインドで迎えた9回表、パドレスのマウンドには守護神フェルナンド・ロドニーが上がった。2死一塁となってイチローの5打席目が巡ってくる。これまで打ち出の小槌のようにヒットを量産してきた42歳。カウント2-1からの4球目、甘く入った変化球を見逃さなかった。鋭い打球がライト線を襲う。イチローは悠々と二塁を陥れた。現地のオーロラビジョンにも通算安打でローズを上回ったことを知らされ、ペトコパークに詰め掛けた観客から大きな歓声と温かい拍手が送られた。

 

 試合後の会見でイチローは「1本目が内野安打だったので、2本目はなんとかきれいに打ちたいと思っていたので、良かった。“やったー”というよりも“良かった”と。僕にとっては記録というよりも、チームメイトやファンの反応が一番うれしいこと。サンディエゴはWBCなどで特別な場所なんですけど、すごくいい空気の中でいい反応をしてくれてすごく幸せでした」と振り返った。

 

 試合は3-6で終了し、マーリンズの連勝はストップした。イチローは5打数2安打1得点とトップバッターの役割を十二分に果たした。今季のマーリンズは外野のレギュラーをほぼ固定しているため、イチローの出場機会は決して多くない。それでも打率3割4分9厘と着実に結果を残している。レギュラーシーズンは残り96試合。あと21本に迫るMLB史上30人目となる通算3000安打も射程圏だ。

 

 NPBで1278本、MLBで2979本。日米で積み上げた数多のヒット数をイチローは「このことを僕がゴールに設定したことは全くなかった」と語る。あくまでも通過点――。言葉の端にヒットマンのプライドを覗かせた気がした。

 

(文/杉浦泰介)