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(写真:開幕戦でのベンチ前。秋元監督<左>と殖栗トレーナー)

 日本女子ソフトボールリーグ1部で戦う伊予銀行ヴェールズは、前半戦(第5節)を終えて3勝8敗の8位タイにつけている。第5節終了時点で2勝9敗の昨季と比べれば、まずまずの結果を残していると言えよう。だが下を見れば、2部降格、入れ替え戦の対象となる下位2チーム(11位、12位)とはわずかな差しかない。3カ月の中断期間を経て、迎える後半戦(9月10日~)が勝負どころとなる。

 

 

「選手たちはよくやっている」。伊予銀行の秋元理紗監督は前半戦を総括した。反省点もないわけではないが、成果も表れてきている。「戦うスタイルは間違っていない」と前向きだ。

 

 まずは前半戦を振り返ろう。劇的なサヨナラ勝ちで幕を開けた今シーズン。地元愛媛の坊ちゃんスタジアムで行われた第1節は日立サンディーバに敗れたものの、NECプラットフォームズRed Falconsには新人・樋口菜美の代打逆転サヨナラホームランで勝利した。

 

 第2節の静岡県・豊岡大会は昨季の女王・ビックカメラ高崎BEE QUEENに0-1で惜敗。Honda Reverta戦では開幕戦でプロ初本塁打を放った對馬弥子が、逆転サヨナラアーチを架けた。今季3度目のサヨナラで再び白星先行となった。

 

 しかし、第3節から第5節まで6連敗。奮闘する投手陣に打線が応えられず、完封負けも4度喫した。「チャンスを作りながら、あと1本が出ない。打線がなかなかつながらない展開が特に3節以降は続きました。それを連戦の中で修正していくことができずに星を取れなかった」と秋元監督は悔しがった。

 

 11試合を消化して、総失点は25でリーグ5位だ。防御率は2.09で同6位、失策数は5個と少なく同3位である。守備面については秋元監督も満足している。

 

 中でも投手陣の柱と機能した木村久美の存在が大きかった。昨季のチーム最多勝ピッチャー。今季はチームの3勝すべてが木村についている。昨季は先発完投型のエースとしての起用だったが、今季は主にリリーフとして7試合に登板。防御率2.33と安定した成績を残している。ブルペンの切り札として指揮官からの信頼も厚い。

 

 チームの勝ち頭を主に先発ではなく、リリーフに回したのはわけがある。秋元監督は「チーム全体が安定感を取り戻すというか、“よし、もう1回ここからいこう”という雰囲気になる。やはり木村がエースなんだろうなと感じますね」と語る。

 

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(写真:目先の星勘定はせず、先を見据える秋元監督)

 加えて、目先の白星だけにとらわれない考えが秋元監督にはあった。

「ピッチャーは試合に投げてナンボだと思うので、できるだけどんどん使っていきたい。それが必ず後半に生きてくる。後半戦の勝負どころで、木村1人でしか戦えない状況では困りますから。どのピッチャーが投げても試合をつくれるかたちを後半戦へ向けて作っていこうという考えで前半戦から若い投手陣を使っていきました」

 

 白星こそついてはいないが内海花菜、庄司奈々、大西里帆子という若い3人の投手陣も奮闘した。中でも大西の成長は著しいという。「勝ち星はつかなかったですが、昨年の投球内容では1つもアウトをとれないこともありました。今季はビックカメラやトヨタ自動車ら上位のチームに対してもきちっと投げられるようになったのは大きな成長であり、収穫なのかなと思っています」と秋元監督。フォームを変えるなどして、昨季と比べると球速は10キロ以上も上がったという。

 

 一方で総得点13はリーグ8位、チーム打率.136はリーグワーストと振るわなかった。13得点中8点が本塁打での得点である。長打で得点を取るという目的で強化をしてきた点では狙い通りだが、打線がつながっているとは言い難い。課題は攻撃面であることは明白だ。秋元監督も後半戦に向けて、「得点パターンを増やしていきたい」と口にする。

 

 そのためにはキャプテンの山崎あずさを中心とした主軸の復活がカギを握る。「山崎、矢野(輝美)、加藤(文恵)、池田(千沙)という昨年の主軸が全く機能しなかった。それが得点できなかった一番の要因ですね。まずは彼女たちが息を吹き返して本来の自分の良さをしっかり出してくれることがいいのかなと思いますね」。秋元監督も後半戦からの巻き返しに期待している。

 

 伊予銀行は7月に行内合宿を行い、主にフィジカル面を鍛えた。基本技術向上のため、反復練習も徹底した。8月は実戦形式にシフトし、紅白戦のほか九州や中国地方の大学との遠征試合を組んでいる。若い選手が多いチームに秋元監督も「伸びしろがありますし、どんどん吸収して良くなっている」と手応えを掴んでいる。

 

 昨冬から招聘した殖栗正登トレーナーの効果により、選手も逞しくなってきた。

「タフになってきました。つい最近までは2部でやっていたチーム。フィジカル面で劣る部分がありました。まだ身体は小さいですが、1部リーグの選手らしい体格になってきた選手は増えましたね」

 長いシーズンを戦い抜くための身体づくりは着々と進行中だ。 

 

 リーグの後半戦に向けて秋元監督は「残り半分なので、1試合1試合が大会の決勝戦ぐらいの気持ちで臨んでいきたい」と意気込む。8月下旬の国民体育大会四国予選を突破すれば、9月からは日本リーグ後半戦、全日本総合選手権大会、国体とタフな連戦が続く。伊予銀行にとって勝負の秋――。白星という花を幾重にも咲かせ、実りの秋としたい。

 

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