8月6日~7日に行われた対巨人戦は、2試合連続で信濃グランセローズが勝利しました。7月24日から4連敗中だったので、それを止めたのはもちろん、NPB相手に連勝できたのも大きな収穫でした。この試合から打順を思い切って入れ替えたことが見事にはまりました。

 

­ 今季のクリーンアップは、3番・森田克也、4番・島袋涼平、5番・大平成一で固定していました。森田と島袋の状態が良い一方で、大平はやや力んでいる印象がありました。前の2人がよく打つので、プレッシャーを感じていたのかもしれません。気分転換も兼ねて、ランナーのいない先頭で打たせたところ、巨人戦では1本塁打含む5安打を記録。大平を1番で起用したことが連勝のキーポイントになりました。

 

 実は大平のスランプに加えて、これまで先頭を任せていた船崎星矢が、夏場に入ってから足をつるなど途中交代が多くなっていました。なので、打順を変えるにはベストなタイミングだったのかもしれません。船崎はルーキーなので経験は浅いですが、走攻守が揃っている選手です。近い将来にはNPBに入れる素質を持っています。楽しみな若手なので、怪我をしない限り1年間は我慢してスタメンで使おうと思います。

 

 5番・大平の穴を埋めたのは、1年目の桑田真樹です。彼はチャンスに強く、しぶといバッティングする選手です。最近は調子を上げてきているので、後ろに置いておくのは勿体ないなと思っていました。桑田は大平とは正反対で、前の2人がバンバン打っていても自らのバッティングを貫けるタイプ。そういう意味ではクリーンアップが合っているのかもしれませんね。

 

 しかし、この打順は一時的な措置に過ぎません。あくまでも、理想はトップバッターに船崎、5番に大平、下位打線にあえて桑田を置いて打線に厚みを持たせます。僕はノーヒットでチャンスを作って1点をとることを理想にあげています。まず、足の速い船崎が先頭でフォアボールで出塁して、­­盗塁する。2番・西田崇晃が送って、1死三塁。そして、3番・森田がタイムリーを放ち1点。これからも、こういう野球を求めていきたいと思います。

 

 有斗、福井戦でリベンジなるか

 巨人戦で先発登板した門中聡と有斗は正反対のピッチング内容でした。6日に登板した門中は8回5安打1失点。安定したピッチングで攻撃のリズムを作ってくれました。門中は11勝挙げていますし、及第点を与えたいです。一方で、7日に登板した有斗には物足りなさを感じました。

 

 有斗は5回3分の1を投げて降板。仲間が9点も奪い、チームは大量リードをしていたにもかかわらず、6回に2ランを打たれてしまいました。こういうピッチングをされると、試合の計算が狂ってしまいます。門中と有斗で、後期の残り15試合のうち5試合ずつ登板させる予定でいます。私の頭の中では、彼等が登板する試合は、全て勝ちで計算しているので、­有斗にはあえて厳しく言います。彼は13日の福井戦に登板する予定なので、この巨人戦の途中交代をどう生かすのか、期待しています。

 

 チームの状態は良くなりつつありますし、個人の力は上がってきています。しかし、まだ強いチームではありません。強いチームとは、チームでやろうとしていることを徹底しているチームです。もしくは、それを必死にやろうとするチームです。選手たちには常々言っていますが、強いチームになるには、全員が同じ気持ちで相手に立ち向かう姿勢を見せなければなりません。

 

 後期優勝のカギはセカンドの新村涼賢が握っています。今は9番を任せていますが、本来は9番を打つようなバッターではありません。開幕前は「1番・船崎、2番・西田、3番・新村」と、機動力打線を組む予定だったので、彼の不調が私の計算を一番狂わせてくれました(笑)。

 

 新村の欠点は浮き沈みが激しいところです。猛打賞を記録した次の試合に2三振したりと、安定性に欠けています。彼の持ち味は思い切りがいいところですが、最近は考えすぎているせいか、打席ではこじんまりとしています。とにかく、考えすぎずに思い切りバットを振って欲しいです。彼等の力が存分に発揮されれば、逆転優勝は十分可能だと思います。

 

本西厚博(もとにし・あつひろ)>:信濃グランセローズ監督

1962年5月15日、長崎県出身。瓊浦高から三菱重工長崎を経て、86年、ドラフト4位で阪急ブレーブスに入団。1年目から一軍に定着。プロ3年目の89年には、外野手としてゴールデングラブ賞を獲得した。延べ4球団を渡り歩き、01年に現役を引退。02年に千葉ロッテマリーンズのコーチを務める。その後、東北楽天ゴールデンイーグルスと韓国のロッテ・ジャイアンツのコーチを経て、16年より信濃グランセローズの監督就任する。


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