錦織圭(日清食品)は14日(日本時間15日)、日本勢96年ぶりのメダル獲得をかけて3位決定戦に臨んだ。世界ランキング7位の錦織は同5位のラファエル・ナダル(スペイン)に2-1で勝利した。日本人で1920年アントワープ五輪以来の表彰台に上がった。決勝は世界ランキング2位のアンディ・マレー(イギリス)が同141位のファン・マルティン・デルポトロ(アルゼンチン)を3-1で下して、連覇を達成した。

 

“BIG4”を破っての、価値ある銅メダル獲得だ。錦織にとってナダルは対戦成績1勝9敗の難敵。だが、準決勝はマレーにストレートで敗れた錦織に対し、ナダルはファイナルセットの激戦を落としている。さらにナダルは男子ダブルスにもエントリーしており、金メダルを獲得していたため、錦織と比べると消耗度は大きいといえるだろう。

 

 ナダルのサービスで始まった試合は互いにサービスキープした第5ゲームに動いた。錦織はナダルのミスから40-0のブレークチャンスを得ると、最後はネット際に出てきた相手をあざ笑うかのようなロブショットを決めた。直後のサービスゲームをキープして流れをモノにする。第7ゲームもデュースの末、巧みなドロップショットでナダルを走らせた。第8ゲームも譲らず、6-2で第1セットを先取した。

 

 第2セットも勢いは錦織にあった。第3ゲームではフォアのストレートを決める。錦織がブレークし、ナダルはうな垂れた。第7ゲームにも再びブレークに成功。5-2とし、あと1ゲームでメダル獲得が決まるところまでたどり着いた。だが、ここからグランドスラム通算14勝の猛者が意地を見せる。ナダルに2度のブレークを許し、5-6と逆転された。第12ゲームをキープし、タイブレークに突入。ナダルのレフトから放たれる強打と粘り強いフットワークに苦戦し、このセットは奪われた。

 

 ファイナルセットは錦織のサービスキープで幕を明けた。続くゲームはナダル、錦織が取り合って、第4ゲームはナダルのサービス。錦織は40-15と押し込むと、ナダルの足元に打ってナダルの返球はネットに阻まれた。ブレークに成功し、このセットも優位に進める。互いに2ゲームずつをキープして、第9ゲームを迎えた。15-15から錦織のサービスは冴えを見せる。30-15からクロスへのサービスエースでマッチポイントを奪った。最後も錦織のサーブをナダルが返しきれずにゲームセット。6-3でこのセットを取り、ファイナルセットの激戦の末、銅メダルを手にした。

 

 錦織はファーストサービスの成功率こそ58%と準決勝より低かったが、勝負所ではエースが決まった。フォア、バック両面で鋭角なクロスやストレートを次々とコートに叩き込んだ。相手のミスを誘ったのも、正確なショットでプレッシャーをかけたからだろう。これまで1勝しかしていなかった難敵を下しての表彰台の価値は今後に向けても大きな経験となったはずだ。いくつもの快挙を成し遂げてきた錦織。リオの夏にまたひとつ歴史に名を刻んだ。

 

(文/杉浦泰介)