14日(日本時間15日)、レスリング競技が開幕した。男子グレコローマンスタイル59キロ級は太田忍(ALSOK)が銀メダルを獲得。初戦から強豪を次々と撃破した太田だったが、決勝はイスマエル・ボレロモリナ(キューバ)にテクニカルフォール負けを喫した。日本勢のグレコローマンスタイルでのメダルは、2000年シドニー五輪69キロ級の永田克彦以来だった。

 

 初のオリンピックで太田は忍ばずして堂々の成績を残した。

 

 1回戦から強敵が続いた。ロンドン五輪の55キロ級金メダリストであるハミド・ソリアン(イラン)には5-4の判定で逆転勝ちを収めた。2回戦は昨年の世界選手権銅メダリストのアルマト・ケビスパエフ(カザフスタン)に6-0で完勝。続く3回戦では14年の世界選手権3位のスティグアンドレ・ベルゲ(ノルウェー)に4-0の判定勝ちで準決勝へと駒を進めた。

 

 メダルの懸かる準決勝では北京、ロンドン五輪55キロ級銀メダルのバイラモフ(アゼルバイジャン)と対戦した。59キロ級でも世界選手権2位に入った優勝候補の1人だ。2分過ぎに浅いタックルをうまく返され、2点を先制された。それでも太田は慌てない。横回転の捨て身投げ「がぶり返し」を繰り出し、一気に4点を奪い逆転に成功した。そのままフォール(両肩をマットに1秒間つける)勝ちでメダルを確定させた。

 

 決勝の相手は昨年の世界選手権王者で、現世界ランキング1位のボレロモリナ。文句なしのナンバーワンとの対決だ。だが世界の頂は遠かった。第1ピリオドに投げとローリングを食らって6失点を喫する。第2ピリオドに入ってバックを取られて2失点。テクニカルフォール(8点差がついた時点で試合終了)で敗れた。「悔しいです。金メダルしか狙っていなかった」と太田。表彰台では涙を流した。それでも不参加となった80年のモスクワ五輪を除けば、52年ヘルシンキ五輪から続くレスリングのメダル獲得を決めた。「伝統を繋ぐことができて一安心」と語った。

 

 22歳とまだ年齢も若い。「世界で一番の練習をして、世界で一番になりたい」。この悔しさは東京五輪で晴らす。

 

(文/杉浦泰介)