6月28日、後楽園ホールで行われたビータイトプロモーション主催のボクシング興行「DANGAN�」でアマチュアボクシングの05年全日本選手権フライ級王者の岡田隆志(MTボクシングジム)が、キャティサック・ソープロンチャイ(タイ)とのライトフライ級6回戦でプロデビューを果たし、2R1分34秒、TKO勝利をおさめた。
(写真:プロデビュー戦をTKO勝利で飾った元アマ王者の岡田選手)
 大学卒業後、一度は就職したものの、プロボクサーとして活躍する友人の試合を観たことがきっかけで再びボクシングの道へ。1年近いブランクを経てM.T.ボクシングジムに入門、プロ入りを果たした岡田にとって、待ちに待ったデビュー戦だった。
 この日の第2試合。「一念無想」の刺繍が入ったトランクスの岡田は、多くの歓声や拍手に迎えられ、笑顔でリングイン。試合開始のゴングが鳴ると、序盤から優位に立つ。開始30秒過ぎ、岡田の切れのある右に、相手の腰が落ちる。1Rはダウンこそ奪えなかったが、2Rは開始早々から相手をコーナーに詰め連打を浴びせると、レフェリーはダウンを宣告。その後、試合再開となるも相手に余力はなく、2R1分34秒、レフェリーストップによるTKO勝利で、デビュー戦を飾った。
「楽しかったです。やっとここに帰ってこれた、という感じ。倒せなかったのは残念だけど、雰囲気も味わえました」
 試合後、傷ひとつないきれいな顔で岡田はこう語り、笑顔を見せた。
 初めて経験するプロのリングは、アマチュア時代に経験したものは全く違ったという。
「学生時代のリーグ戦では『勝って当たり前』のポジションだった。楽しめたかと言われると…。でも今は自分から望んで、ここに帰ってきた。ボクシングに臨む心境も全然違います。今日はアマの試合より、リラックスして楽しめましたね。前日は、小学生の遠足の前日のようなワクワク感がありました(笑)」
 戦前の期待通り、圧倒的な強さでデビュー戦を飾ったが、本当の勝負はこれからだという自覚も十分ある。
「今日はたった2ラウンドしかやっていない。パンチをもらっていないので、それはこれから経験していくことだと思う。殴られたいというわけではないけど(笑)、これからたくさん試合を重ねて、いろいろな経験をしていきたいですね」
 試合でのモットーは「楽しくやること」。トランクスに刺繍されていた「一念無想」にも、その想いが込められている。
「『無念無想』は、すべての雑念から解き放たれて無の状態でいること。僕の場合、試合中は一つのことだけ考えたい。それは『楽しくやること』。今は勝つとか、負けるとか、それは僕にとって雑念なんです。もちろん練習は勝つためにしているけど、試合で勝つことに捉われすぎると要らない力が入ってしまう。楽しくできれば、それが勝ちにもつながる。この先、また変わっていくかもしれないけど、今は『楽しくやること』が一番ですね」

 今後、対戦してみたい選手を訊くと「いろんな選手とやりたい」という答えが返ってきた。ライトフライ級では、06年度全日本新人王でMVPを獲得した黒田雅之(新田ジム)も気になる存在だ。
「ハードパンチャーですよね。ああいう選手ともやってみたい。いろいろなタイプの選手とやって、経験を積んでいきたいですね」
 この夏にはアメリカでの武者修行が待っている。岡田にとって、人生初の海外でもある。
「すごく楽しみです。海外ではどういうボクシングをするのか、どんな選手がいるのか…世界の広さを学びたい。たくさん勉強してきたいと思います」
 この先の経験の一つ一つが、プロとしての糧となる。プロボクサーとして、まだ一歩目を踏み出したばかりだ。


岡田隆志(おかだ・たかし)プロフィール
1984年2月15日、岡山県生まれ。アマ戦績68戦53勝(28KO・RSC)15敗。162センチ。
05年岡山国体3位、同年全日本選手権フライ級優勝。M.T.ボクシングジム在籍。

★M.T.ボクシングジム公式サイト★
http://www2.ocn.ne.jp/~mtboxing/