15日(日本時間16日)、体操の種目別跳馬決勝が行われ、白井健三(日本体育大)が2本平均15.449点で3位に入った。優勝はリ・ゼグァン(北朝鮮)の15.691点。2位にはデニス・アブリャジン(ロシア)が15.516点で入った。

 

 スペシャリストが集う種目別決勝で、白井が見事な跳躍を見せた。

 

 跳馬は2本の跳躍の平均点を競う。8人が進んだ決勝で白井は3人目に登場した。1本目の跳躍は伸身ユルチェンコ3回半ひねりの新技に挑戦。自身の名を冠する「シライ/キム・ヒフン」にひねり半回転を加えたものだ。

 

「現地に入った時から決勝でやると決めていた」という大技。難度を示すDスコアは6.4点である。大舞台で強気に攻める19歳は、助走に迷いや硬さは見られなかった。ロンダートから跳馬に手を付き、ひねりを加える。“ひねり王子”の異名を持つ白井の真骨頂だ。鋭い回転に着地は右足で一歩前に動いた。出来栄えを示すEスコアは9.433点。15.833点のハイスコアを叩き出した。

 

 2本目は「ドリッグス」(伸身カサマツ跳び1回半ひねり)だ。Dスコアは5.6点と高くない分、完成度で勝負したい。着地は横に動いたが、躍動感溢れるパフォーマンスを見せる。Eスコアは9.466点で15.066点。2本平均15.449点でトップに躍り出た。

 

 メダルの行方は残りの5人の演技を待つのみとなった。4人目のマリアン・ドラグレスク(ルーマニア)は白井と同点。1本の最高点で白井を超えられず、暫定2位となり、白井がトップをキープした。そして5人目に登場したのが現世界チャンピオンのリ・セグァンだ。14年から世界選手権連覇中の跳馬のスペシャリスト。優勝候補の筆頭である。

 

 リ・セグァンは世界王者の期待に違わぬ安定感抜群の演技を見せた。プレッシャーをものともせず、王者の風格を感じさせた。1本目を15.616点、2本目を15.766点の平均15.691点で白井を抜いて暫定1位に立った。その後は個人総合で内村航平(コナミスポーツクラブ)を苦しめたオレグ・ベルニャエフ(ウクライナ)も白井を超えられない。最終演技者のアブリャジンには抜かれたものの、白井は堂々の3位。日本勢としては1984年ロサンゼルス五輪の具志堅幸司、森末慎二以来のメダル獲得となった。

 

「強い決断力が生きた」と白井が振り返ったように、1本目の跳躍で新技に挑んで成功させたことがメダル獲得の要因だろう。15.833点は決勝16演技の中で最高得点。平均スコアで並んだドラグレスクを上回ったのもそのおかげだ。「今日は気持ちよくやろうと思っていた」。優勝候補として臨んだ床運動では硬さが見られ、4位に終わった。その悔しさをバネにした思い切りのいい跳躍が、白井を表彰台へと上がらせた。

 

(文/杉浦泰介)