現地時間19日、陸上の男子50キロ競歩が行われ、荒井広宙(自衛隊体育学校)が3時間41分24秒で3位に入った。陸上競技で今大会日本人メダル第1号。競歩史上初の五輪で表彰台に立った。マテイ・トス(スロバキア)が3時間40分58秒で金メダルを獲得し、ジャレッド・タレント(オーストリア)が3時間41分15秒で銀メダルを手にした。そのほかの日本勢は谷井孝行(自衛隊体育学校)が14位、森岡紘一朗(富士通)が27位だった。

 

 粘りに粘って死守した銅メダルが、荒井の元へと還ってきた。

 

 レースを引っ張ったのは世界記録保持者のヨハン・ディニズ(フランス)だ。序盤に抜け出すと独歩状態に入った。荒井は谷井らと第2集団を形成し、そこから仕掛けどころを窺った。森岡が前半で遅れ、昨年の世界選手権銅メダリストの谷井も中盤で遅れ始めた。

 

 すると32キロ過ぎに突然、ディニズが足を止めた。2位のエバン・ダンフィー(カナダ)が追いついたタイミングで再び歩き出したが、そこについていくことはできなかった。そこから形成は一気に動き始めた。第2集団は崩れ始め、昨年の世界選手権金のトス、同銀のタレントが飛び出した。荒井も一時は先頭に立ったが、2人に追いつかれ離された。

 

 タレントは昨年の世界選手権のみならず、北京&ロンドン五輪でも2位だった。シルバーコレクターからの脱却を図りたいところ。だが終盤にトスにかわされると追いかける力は残っていなかった。ここで優勝争いがほぼ決着し、メダル争いに焦点は絞られた。

 

 3位につけていた荒井は、残り2キロを切ったところでダンフィーにかわされる。昨年の世界選手権は4位。メダルまであと一歩の悔しい思いをした。ここで荒井が意地を見せる。再度ペースアップを図り、ダンフィーに追いつき、突き放した。そのまま2位のタレントに迫ろうとしたものの、そこは届かなかった。荒井はトスに遅れること26秒、タレントには8秒差の3位でフィニッシュした。それでも日本勢初の銅メダルを掴み取った。

 

 ところが荒井に非情な判定が待っていた。問題となったのは48キロ過ぎにダンフィーを抜き返した場面だ。荒井は内側から抜こうとペースを上げたところ、ダンフィーと接触して相手はよろめいた。レース後、カナダ陣営の抗議により、荒井は失格処分を科された。この裁定に納得のいかない日本チームも抗議した。すると国際陸上競技連盟が荒井の失格を撤回。荒井の順位は差し戻され、日本史上最高の3位となった。

 

 近年、活躍が目立つ日本の競歩勢。五輪、世界選手権で入賞を続けてきた。昨年の世界選手権では谷井が銅メダルを獲得し、今回は荒井が表彰台に上がった。その歩みは着々と前へと進んでいる。

 

(文/杉浦泰介)