リオデジャネイロ五輪が幕を閉じました。男子サッカーは1勝1敗1分けでグループステージ敗退。初戦の入り方の大切さを選手たちは学んだのではないでしょうか。

 

DFラインはデリケート

 

 初戦のナイジェリア代表戦で勝ち点がゼロだったことに加え、4失点と守備が崩壊したことが手倉森誠監督の大会を通じたトータルプランが崩れてしまったのかなと思います。守備は手倉森ジャパンが強みにしていた部分だっただけに痛かったですね。

 

 リオ五輪はバックアップメンバー、直前合流のオーバーエイジ(OA)枠の選手に戦術を浸透させきれなかったことが顕著に現れた大会でした。センターバックにはOA枠で選出されたDF塩谷司(サンフレッチェ広島)が入りました。彼は所属クラブでは3バックの一角でプレーしています。大会直前合流でU-23代表の4バックに順応し切れなかったと感じました。3バックも4バックも基本原則は変わりません。それでも微妙なポジショニングの違いは生じます。

 

 DFラインはサッカーでもすごくデリケートな部分です。しっかり歯車を合わせてから試合に臨まなければいけない。能力の高い選手を起用したからといって、チームが良くなるという考えは大きな間違いだと思います。歯車を替えながら、微調整をしていく作業は絶対に必要でした。

 

 とはいえ選手たちは世界の厳しさを体感できたはず。味わった悔しさを糧にさらなる奮起を期待したいです。

 

バックアップにベテランがいる重要性

 

 A代表はロシアW杯出場を懸けたアジア最終予選に臨みます。1年かけて行われる最終予選。必ずしもチームが好調なまま走り抜けるとは限りません。忍耐も必要になってくるでしょうし、苦しい戦いが予想されます。

 

 初戦のUAE戦(9月1日、埼玉)とタイ戦(6日、バンコク)のメンバーが発表されました。DF槙野智章(浦和レッズ)とDF長友佑都(インテル・ミラノ)が怪我のため合流できないとのことですが、概ね、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が呼びたいメンバーを集められたのではないでしょうか。

 

 本登録には至りませんでしたが、ハリルホジッチ監督は中盤のバックアップメンバーに35歳の中村憲剛(川崎フロンターレ)を指名しました。今までハリルホジッチ監督は若手に経験を積ませるため、あまりベテラン選手の招集に積極的ではありませんでした。しかし今回、中村憲に声がかかったことで他のベテラン勢も刺激を受けるはずです。若手とベテランが切磋琢磨し合えば日本サッカー界が盛り上がることは間違いないでしょう。

 

 ご存知の通り、中村憲は日本を代表する中盤の選手です。彼のプレーは献身的で安定感もある。中盤の前もボランチもこなせる。パサーとしての能力は説明不要です。中村憲のような計算のできる選手が控えていれば、怪我人などのアクシデントにも対応できるはず。機会が巡ってきたら、ぜひ頑張ってほしい選手の1人ですね。

 

無駄な失点は避けたい最終予選

 

 僕の古巣である鹿島アントラーズからは、DF昌子源が選ばれました。相手の攻撃の芽を摘む守備、ボールを奪いにいく時の激しさは素晴らしいものがあります。もっと自らの長所を練習からアピールできれば試合に絡めると思います。彼には殻を破って欲しいです。

 

 本来なら鹿島からFW金崎夢生も選ばれていたでしょう。しかし、8月20日のJ1リーグ第9節の湘南ベルマーレ戦で途中交代を命じられた際の反抗的な態度が原因で選外となりました。僕の持論ですが、社会人として組織の長に反抗的な態度をとるのであれば、自分が長になれるところを探すしかないと思います。僕はハリルホジッチ監督のとった措置を支持します。もし制裁が何もなければ「オレは何をやってもいいんだ」と、金崎は勘違いしてしまう。今後、金崎にはきちんと態度を改めて、さらなる活躍をしてほしいなと思います。

 

 さて、最終予選におけるチームとしての戦い方ですが、セーフティファーストを意識しながらプレーしてほしいものです。自陣で無理にキープしようとして、相手にボールを奪われて失点することほど無駄なことはない。最終予選は結果が大事です。無理をせずにタッチラインに逃げてプレーを切る。もしくは、一度大きく前方にクリアーをしてしまう。その後、しっかり陣形を立て直せば何も問題はありません。今回のメンバーの大半がブラジルW杯のアジア最終予選を経験しています。大人の判断ができる選手たちの声掛けが、勝負を分けるのではないでしょうか。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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