少しだけ気は早いですが、優勝おめでとうございます。

 

 いまは、それ以外に言うことがない。

 

 以下は、蛇足として読んでください(笑)。

 

 MVPは誰だろう。本命・新井貴浩、対抗・菊池涼介、穴は鈴木誠也、といったところでしょうか。

 

 新井は、本当に肝心なところでよく打った。ぜひ、このまま打ち続けて打点王を獲ってほしい。

 

 菊池は、1試合に1度は出るスーパープレーがチームを支えたことは、間違いない。最多安打も獲りそうだし。

 

 鈴木はもちろん、オリックス戦の3戦連続決勝ホームランが印象深いが、もしかしたら首位打者を獲るかもしれない、という急成長ぶりには目をみはる。

 

 個人的には、菊池である。8月7日の巨人戦。1点ビハインドで9回2死無走者。このまま負けたら5連敗、2位・巨人に3.5ゲーム差にまで迫られてしまうという土壇場で澤村拓一の初球をとらえた起死回生の同点ホームラン。あれがなかったら、巨人は今のようなていたらくではなかっただろう。ペナントレースを決めたホームランだった。

 

 大穴をあげるとすれば、ブレイディン・ヘーゲンズ。とくに前半戦、7回を抑え続けたヘーゲンズの投球がなければ、そもそも上位浮上すら危うかった。もちろんクリス・ジョンソンという考え方もあります。

 

 ところで、今、とても気になることがある。カープは、クライマックスシリーズにも勝って、無事、日本シリーズに出場できるだろうか。

 

 今季の成績から考えれば、当然、カープが出るべきである。本拠地開催、1勝のアドバンテージもある。

 

 しかし、2014年の巨人は、阪神に対して悪夢の4連敗を喫して日本シリーズに進出できなかった。7ゲーム差をつけて優勝したにもかかわらず、だ。あのときの巨人ファンの無念は他人事とは思えなかった。

 

 このような事態だけは避けてほしい。

 

 たとえば9月2日の東京ヤクルト戦。2点リードを許した5回表、カープは新井の逆転3ランが飛び出して、得意の逆転勝ちをおさめた。気持ちのいい勝利である。

 

 打ったのは、今シーズン150勝を達成した左腕・石川雅規の低めのスライダーである。見逃せばボールという低さだったが、新井のバットが一閃すると、打球は奇跡のようなホームランとなって飛んでいった。

 

 ヤクルト真中満監督のコメントが印象深い。

「今の状態なら、石川より新井の方が上だったということでしょう」

 

 注意したいのは、「今の状態なら」という言葉だ。つまり今のカープの勢いは誰も止められない、ということだ。逆に言えば、勢いのない平時であれば、すなわち、いつもの新井であれば抑えられたボールだった、という含みも込めている。

 

 問題はこれです。クライマックスシリーズのファイナルステージは10月12日からである。優勝が決まった後も、およそ1カ月近く、この勢いを維持できるだろうか。

 

 そもそも、3位で勝率5割を切ったチームでも日本シリーズに勝ち上がれる(日本一にもなれる)可能性のある、クライマックスシリーズの制度のほうに問題があるのだが。

 

 今年、セ・リーグで日本シリーズ出場がもっともふさわしいのはカープである。これは誰も異論はないだろう。

 

 だから、こんな心配が杞憂に終わることを、切に祈る。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


◎バックナンバーはこちらから