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(写真:新たなスタートを切った日本バスケ界。会場には9132人の観客が詰めかけた)

 男子バスケットボールの新プロリーグ「B.LEAGUE」の開幕戦が22日、東京・代々木第一体育館で行われた。アルバルク東京が琉球ゴールデンキングスを80-75で破った。A東京は第1クォーター(Q)からリードを奪って試合を優位に進めると、第3Qにその差を2桁に広げる。第4Qは琉球に迫られたものの、5点差で逃げ切った。A東京は記念すべきオープニングゲームを白星で飾った。

 

 田中、12得点6アシスト3スティールの活躍

アルバルク東京 80-75 琉球ゴールデンキングス

【第1Q】26-19【第2Q】17-17【第3Q】21-15【第4Q】16-24

 

 日本バスケットボール界に新たな歴史が刻まれた。袂分かってきたNBLとbjリーグが1つとなり誕生したのがB.LEAGUEである。その旗揚げ興行とも言える開幕戦はNBLvs.bjリーグという構図となった。NBLの名門トヨタ自動車の流れを汲むA東京。bjリーグ最多4度の優勝を誇る琉球。昨季NBL最高勝率のA東京に対し、琉球は昨季のbjリーグ王者である。対決を煽る意味でも最高の組み合わせだった。

 

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(写真:最初のティップオフはギレンウォーターの完勝)

 地上波のゴールデンタイムで生中継。派手なオープニングセレモニーを行い、コートは全面LEDという画期的な演出を施した。観衆が固唾を飲んで見守るティップオフ。最初にボールをキープしたのはA東京だ。B1の優勝候補に挙げられており、開幕戦も戦前の予想では有利と見る者は多かった。今季は元NBAプレーヤーのシューティングガード(SG)ディアンテ・ギャレット、日本代表のパワーフォワード(PF)竹内譲次らが新たに加わり、選手層にも厚みが増した。

 

 B.LEAGUEのファーストゴールもA東京だった。決めたのは、新加入のPFトロイ・ギレンウォーターだ。SG田中大貴からスリーポイントライン付近でパスを受けると、強引に突っかける。琉球ディフェンスのプレッシャーに遭いながらもシュートを沈めて、ファーストシュートで得点に繋げた。ギレンウォーターは開始2分過ぎにはスリーポイントを決め、9-4とリードを広げる。

 

 その1分後にはスモールフォワード(SF)菊地祥平にもスリーポイントが入り、A東京は琉球に10点差と突き放した。たまらず琉球の伊佐勉ヘッドコーチ(HC)もタイムアウトを要求。一時は最大13点差がつけられたが、琉球も意地を見せる。SF/PFアンソニー・マクヘンリー、PF/センター(C)波多野和也、PF/Cラモント・ハミルトンらビッグマンの活躍で、徐々に差を詰める。第1Qは26-19でA東京が7点のリードで終えた。

 

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(写真:日本人同士でも白熱したインサイドの攻防を見せた)

 第2Qは両チーム外国人(※日本で出生または出育し、日本の小中学校を卒業して義務教育課程を修了した選手は除く)1人しかコートに立てない。これはB.LEAGUEのオン・ザ・コートに依るもので、各Q最大2人までで4Q合計で6となるように試合前に配分しなければならない。奇しくもA東京と琉球はいずれも2、1、1、2で申請した。こういった戦略の妙も、見どころの1つである。

 

 最初に仕掛けたのは琉球だ。ハミルトンの活躍で点差を縮めると、SF喜多川修平のジャンプシュートで27-26と、この試合は初めてリードを奪った。その後は点の取り合いとなったが、A東京が再び抜け出す。フェニックスサンズ、ユタ・ジャズでのプレー経験のあるギャレットが個人技でスコアを伸ばした。A東京は第2Qを終えて43-36とリードを守った。

 

 コートチェンジとなった第3QはA東京がさらに勢い付く。統制のとれたディフェンスで相手に隙を与えない。琉球に思うようなバスケをさせず、攻撃では選手が満遍なく得点を決めた。スリーポイントも3本決まるなど、内でも外でもスコアした。64-51と13点のリードで第4Qを迎えた。

 

「第4Qで流れがくるのはわかっていた」と、琉球の伊佐HC。躍動したのがクラブ在籍9年目のマクヘンリーだ。残り8分、インサイドでファウルを受けながら、得点を決めてバスケットカウントをとった。フリースローも入れて3点プレー。残り6分を切ったところでは味方が放ったシュートのこぼれ球を、そのままリングに叩き込んだ。ド派手なダンクシュートに場内のボルテージもヒートアップ。さらにはここまでノーゴールだったポイントガード(PG)/SG岸本隆一にもスリーポイントが飛び出し、得点差を詰めた。大勢詰めかけたキングスブースターを喜ばせた。

 

 残り約1分30秒。ここでコートに入ったばかりの喜多川がスリーポイントを決めて、ついに3点差まで縮めた。しかし、琉球の反撃もここまでだった。同点を狙った喜多川のスリーポイントはリングに嫌われ、ルーズボールも相手に奪われた。A東京はフリースロー2本を沈めて5点差に突き放すと、最後はギレンウォーターのブロックショットもあり、琉球に得点を許さなかった。80-75――。歴史的な開幕戦を制したのはA東京だった。

 

 A東京の伊藤拓摩HCは勝因にチームのディフェンスを挙げた。「キングスさんは乗せると怖い。連続してしっかり止めようと。点差を離せたことで、そこから優位に試合を運べた」と振り返る。キャプテンの岸本を第4Q途中まで無得点に抑えるなど、琉球のキーマンを封じた。一方、第4Qに怒涛の追い上げを見せたものの、敗れた琉球の伊佐HCは「エンジンがかかるのが遅かった」と唇を噛んだ。注目を集めたNBLvs.bjリーグ対決は、名門が意地を見せてNBLに軍配が上がった。

 

(文・写真/杉浦泰介)