日本女子ソフトボールリーグ1部で戦う伊予銀行ヴェールズの後半戦(第6節~)がスタートした。伊予銀行は第7節終了時点で4勝11敗。戸田中央総合病院Medics、シオノギ製薬ポポンギャルズと並んで9位となった。2部降格争いから抜け出すためにも、愛媛県代表として出場する第71回国民体育大会「希望郷いわて国体」での出来がひとつカギとなるだろう。

 

 

 前半戦を6連敗で終えた伊予銀行。3カ月の中断期間を経て、チームを暗いトンネルから抜け出させたのはベテランの力だった。

 

 第6節の熊本大会、9月10日の第1戦(対SGホールディングスギャラクシースターズ)の先発マウンドを任されたのは木村久美だ。昨季のチーム最多勝投手。前半戦は主にリリーフ登板だったが、リーグ戦全ての勝利は木村に付いている。秋元理紗監督は「一番信頼できる投手」というエースを後半の開幕戦で起用した。

 

 指揮官からの厚い信頼に応えるのがエースである。木村は8回2失点完投勝利。「タフな試合を投げ切ってくれた」と秋元監督も称える。伊予銀行は2回表に木村の女房役の池田千沙が先制打。5回表にはキャプテンの山崎あずさが追加点を挙げた。

 

「山崎、矢野(輝美)、加藤(文恵)、池田という昨年の主軸が全く機能しなかった。それが得点できなかった一番の要因ですね。まずは彼女たちが息を吹き返して本来の自分の良さをしっかり出してくれることがいいのかなと思いますね」

 秋元監督が中断期間中に巻き返しを期待した2人が、結果を出す。

 

 5回裏に2点を返され、追いつかれると試合は延長戦に突入した。二死満塁で勝負を決めるタイムリーを放ったのは、池田だった。「木村と組むことが多いキャッチャー。木村が投げる試合は勝ちゲームに持っていきたいという気持ちが人一倍強かったんだと。よく打ってくれたなと思います」と秋元監督。最後は木村と池田のバッテリーがゼロで締めて、4-2で後半戦を白星スタートした。

 

 連敗を6で止めた伊予銀行。ここで勢いに乗りたいところだったが、翌日のデンソーブライトペガサスに0-10で大敗してしまう。序盤から先発の内海花奈、2番手の庄司奈々がホームランを打たれて4点のリードを奪われると、終盤にも6点を加えられた。秋元監督は「ピッチャー陣が踏ん張れなかった。内海にしてもそうですし、継投にしてもリズムをつくれなかったですね」と悔やんだ。打線も6回2死までノーヒットと沈黙。最後まで相手ピッチャーに対応し切れず、2安打完封負けだった。

 

 9月17日からは全日本総合選手権に出場。伊予銀行は1回戦の平林金属株式会社、2回戦のSGホールディングスに連勝した。ベスト4入りを懸けて、Honda Revertaと対戦すると、相手エースのモーガン・メローから4回にホームスチールを決めて先制点を奪った。雨の中、尻上がりに調子を上げていくメロー。一方、伊予銀行の先発・内海は徐々に制球力を失っていた。それでも内海は7回2死までこぎ着けた。あと1人――。

 

 しかし、長打を浴びて得点圏にランナーを置く。続くバレリエ・アリオトは故意四球で歩かせて一、二塁。迎えた4番の島崎望は、秋元監督によれば「内海を苦手としているバッター」である。結果はフルカウントから二塁を強襲するヒットを打たれてしまった。土壇場で追いつかれた伊予銀行は延長8回に2点を取られて、1-3で惜敗。準々決勝で涙を飲むこととなった。

 

「7回2死まで勝っていた試合。あそこでひっくり返されて負けてしまうのは、ちょっと嫌な負け方でした。勝たなきゃいけないゲームを勝ち切れずに落としてしまった感はあります」

 秋元監督にとっても不満の残る結果に終わった。日本リーグのデンソー戦、全日本総合のHonda戦は、チームの“若さ”が出た試合でもあった。狙い球を絞り切れず、自分たちのバッティングができなかった。勝ち試合をモノにできない勝負弱さは、まだまだ経験値が足りないとも言えるだろう。

 

 24、25日に高崎大会で戦ったビックカメラ高崎BEE QUEEN、太陽誘電ソルフィーユには0-2、1-3と連敗を喫した。中でもビックカメラには上野由岐子に完全試合を食らう屈辱を味わった。結果には表れなかったが、光明もないわけではない。

 

 それは今シーズンから秋元監督が掲げている「攻めの姿勢」である。力の差があると思われる格上の投手に対しては、バットを短く持ってコツコツ当てにいくセオリーだろう。しかし、指揮官はあえて「振りにいかせた」という。勝ちに行くための“一発狙い”だった。

 

「選手たちは“よくこれだけ振れるな”と感じるぐらい思い切り振っていました。以前だと名前負けしてしまうことがあって、向かっていく姿勢が見られなかった。それが上野相手でも関係なく振りにいく姿勢が見られたことは成長を感じました」

 まだ結果には繋がっていないが、チームの意識改革へは着実に繋がっている。

 

 10月2日からスタートするいわて国体では初戦に山形県代表と戦う。勝てばシードの北海道代表との準々決勝に進む。トヨタ自動車レッドテリアーズを中心とした愛知県代表、ビックカメラの群馬県代表、日立サンディーバの神奈川県代表と強豪チームは逆の山に入るなど組み分けにも恵まれた。千載一遇のチャンスとも言える状況に秋元監督も「最低でも決勝には行きたい」と意気込む。国体で勢いをつけて、リーグ終盤戦を迎えたい。

 

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