%ef%bc%95 神奈川大学野球連盟の1部リーグに属する横浜商科大は、3日現在、7勝3敗の勝ち点7でリーグ2位を走っている。チームの牽引役を担っているのが、主将の谷口諒(4年)だ。春は自己ワーストの成績だったが、秋は開幕3戦目でホームランを放つなどチームに貢献している。大学生活最後のシーズンにかける谷口の思いは人一倍強い。春のスランプをどう乗り越えて、秋を迎えたのか――。

 

 13年春、谷口は愛媛県の済美高から横浜商科大に入学した。長打力が売りのスラッガーは、1年からスタメンで試合に出場し、2年の春から4番を任されるほどの実力を誇っていた。昨秋は打率.293、3本塁打、9打点をマークし、ベストプレイヤー賞と打点賞の2つのタイトルを獲得した。

 

 順調に成長を遂げていた谷口だったが、主将として臨んだ4年の春は突如スランプに陥った。開幕から不調が続き、5月には3試合連続ノーヒットだった。本人は「バッティングフォームが固まっていなかった」と原因を分析する。4番が打てなければチームも勢いに乗れない。谷口の不調に比例するように、横浜商科大は2カード目から連続で負け越した。

 

 しかし、チームの指揮を執る佐々木正雄監督は、谷口を4番から外さなかった。これには、どんな意図があったのか。

「指導者は選手の技術的なことを信頼するのか、それとも人間的なことを信頼するのか、ふたつにひとつしかないんですよ。だから、精神的な部分でチームのキャプテンに谷口を指名したのはオレだから、よほどのことがない限り外すことはしないよ」。指揮官の谷口への信頼の大きさがうかがえた。

 

 佐々木監督の思いに応えたい谷口は、最後のカード(神奈川大戦)でようやく待望の一発を放った。「やっと感覚を掴み始めた。ホームランを打つまでは“これかな?”という感じでしたが、打てたことでやっと見えてきました」というアーチをきっかけに、翌日の最終戦でも長打を放つなど、打撃復活の兆しを見せた。しかし、開幕当初の不調が数字に響き、春季の成績は打率.243、1本塁打、2打点と散々な結果に終わった。

 

“何か変えなければいけない”。春季リーグ後、考えた末に谷口がたどり着いた答えは、肉体改造をすることだった。

 

 イチローも取り入れる初動負荷トレーニング(R)

%ef%bc%91 谷口は強化トレーニングのために、大学の近くにあるワールドウィング(R)へ通っている。ワールドウィング(R)は鳥取県に本店を構える初動負荷トレーニング(R)を展開するジムだ。イチロー(マリーンズ)をはじめ、山本昌(元中日)らプロ野球選手も御用達のジムとして知られている。

 

 初動負荷トレーニング(R)は、小山裕史氏が創案開発した、神経と筋肉の協調性を高める画期的なトレーニング方法だ。谷口は父・忍の勧めで中学2年から、初動負荷トレーニング(R)を行なっている。横浜商科大に入学してからは通う時間がなくなり一時は辞めていたが、昨年春から再び通い始めた。毎回リーグ戦を終える度にコーチングスタッフと話し合い、トレーニングプログラムを見直している。

 

 今年の春季リーグが終わったあとに、谷口はコーチングスタッフに3つの要望を伝えた。「下半身を強化して粘りが出せる様に」「全体的なパワー向上」「動きにキレを出す」。これに沿って、6月からは主により骨盤や股関節の動きを高め、上半身とも連動させることを強化するプログラムに組み替えられた。

 

 谷口はトレーニングに対する意識も改善した。「前までは1時間とか、1時間半とか長めのメニューだったので、“疲れたから今日は無理だ”と、妥協していた部分がありました。そういうところも変えようと思った」と話す。1回のトレーニング時間を以前よりも短くし、週1、2回だった頻度を週3、4回に増やした。

 

 誘導にあたるスタッフは、彼の身体の変化をこう語る。「以前は取ることができなかったポジション(姿勢)も取れるようになった。野球で必要な“リラックスしながら、身体の根幹から末端へ力を伝える”という理想的な順序での動作ができるようになりました」。谷口自身も「バッティングフォームがしっかりと固まってきた。今数字を残せているのは、初動負荷トレーニング(R)のお陰です」と、トレーニングの効果を実感している。

 

 4番で主将を務める谷口だが、決して野球のエリート街道を歩んできたわけではない。中学時代は、スタメンで試合に出ることすらできなかった。ひたむきに努力を重ねた結果が、今に繋がっている。佐々木監督は「それはもう我慢強い」と谷口を評価する。

 

 愛知県出身・谷口の原点は、ナゴヤドームにある。あるプロ野球選手を見て、「オレはこれをやりたい」と、一気に野球のとりこになった。

 

(第2回につづく)

 

<谷口諒(たにぐち・まこと)プロフィール>

1994年1月10日、愛知県出身。小学4年で野球を始める。中学3年時には春日井ボーイズで第39回日本少年野球春季全国大会優勝を経験。済美高では3年時に主将を務める。甲子園出場には至らなかったが、3年夏は愛媛県ベスト4まで進んだ。13年に横浜商科大に入学すると、1年時からスタメンで試合に出場した。3年秋は打率.293、3本塁打、9打点でベストプレイヤー賞と打点王を獲得。今年から主将としてチームを牽引する。身長178センチ、体重80キロ。右投右打。

 

☆プレゼント☆

 谷口選手の直筆サイン色紙をプレゼント致します。ご希望の方はこちらより、本文の最初に「谷口諒選手のサイン希望」と明記の上、住所、氏名、年齢、連絡先(電話番号)、この記事や当サイトへの感想などがあれば、お書き添えの上、送信してください。応募者多数の場合は抽選とし、当選発表は発送をもってかえさせていただきます。締め切りは2016年11月28日(月)迄です。たくさんのご応募お待ちしております。

 

(文・写真/安部晴奈、取材協力/ワールドウィング町田)

 

shikoku_ehime


◎バックナンバーはこちらから