大迫勇也が絶好調だ。

 ケルン3シーズン目の今季。9月21日、アウェーの第4節シャルケ戦で2016~2017シーズンのリーグ戦初ゴールを挙げると、続く25日のホーム・ライプツィヒ戦で2試合連続ゴールをマークした。

 

 このライプツィヒ戦のゴールは、インパクトが大きかった。前半25分、ペナルティーエリア内で相手を背負い、左サイドにいる味方からボールを呼び込む。パスを右足アウトサイドでトラップしてターン。隣にいたもう1人まで振り切り、角度のないところからニアサイドに立つGKの上を思い切り打ち抜いた。確かな技術、一瞬のスピード、判断力。まさに“ハンパない”一発だったと言えよう。

 

 昨シーズンはトップ下、サイドで起用され、リーグ戦はわずかに1点止まり。しかし今シーズンは本来のフォワードに戻り、その期待に応えている。

 

 今回のロシアW杯アジア最終予選イラク、オーストラリア戦では招集を見送ったヴァイッド・ハリルホジッチ監督も「フィジカル的にも興味深い。得点を取り続けてくれれば面白い選手になると思う」と関心を示している。このまま活躍が続けば、11月のサウジアラビア戦で招集される可能性が高い。

 

 大迫は昨年6月のロシアW杯アジア2次予選のシンガポール戦以来、代表には呼ばれていない。ハリルホジッチ体制では3試合に出場しているものの、ゴールはない。フォワードとしての結果を求める指揮官の期待に応えられず、代表から遠ざかってしまった。

 

 だが彼にとって代表は、絶対に戻らなければならない場所。ロシアW杯の大舞台でブラジルW杯の悔しさを晴らすという己に課した宿題があるからだ。

 

 ブラジルW杯では初戦のコートジボワール戦、2戦目のギリシャ戦に先発起用されながら、ゴールを奪えなかった。グループリーグ敗退が決まり、ベースキャンプ地のイトゥを離れる際に彼はこう誓っていた。

「個の成長が、チームの成長に繋がると思う。今回感じたのは、ゴール前で最後の個の部分で相手に守られていたと思うし、その半歩だったり、一歩だったり……そこでやっぱり変わると思うから。その半歩、一歩を先に行けるように、そこの個で勝てるようにしていかなくちゃなとは思います。今は本当に、悔しさしか残っていないというか、自分の不甲斐なさというか。ただ、このままじゃ終われないから。これで終わっていたら、ダメだからね」

 

 落ち込んでいる暇などなかった。

 

 ブラジルW杯後、彼は2部1860ミュンヘンからケルンに移籍した。だが、不慣れなトップ下で起用され、葛藤の日々が続いた。チームの守備的な戦術もあって、大迫自身も守備に追われる時間が長くなった。先発の座をつかみきれず、10月からウインターブレイクに入るまでの3カ月間、先発したのは2度しかなかった。

 

 それでも大迫は腐らなかった。彼は言った。

「葛藤はあったけど、練習するしかないと思ったんで。激しくやれていたし、これを続けておけば絶対、大丈夫だ、と。出られないときに頑張れば絶対にチャンスが来るって、常に強く思うようにしていました。絶対、絶対に大丈夫なんだって、心のなかで決めていたというか、しっかりやることが次につながるんだ、と。あの状況では、それしかできなかったので……。メンタルの面は難しかったですよ。でもしっかり練習をやれていたので、充実感がすごくありました。やれる自信もずっとありましたから」

 

 リーグ戦終盤にはスタメンをつかみ取り、フォワードとして結果を残した。最終節のヴォルフスブルク戦まで7試合連続で先発出場。最後の最後で、自分に打ち勝つことができたシーズンになった。

 

 ブラジルW杯での悔しさ、ケルン1年目の葛藤が、今に活きている。

 

 ライプツィヒ戦の鮮やかな得点シーンをもう一度振り返ってみたい。 

 ボールを受け取ってから個の部分で相手より半歩、一歩先を行ってあのゴールが生まれたのだ。

 

 ロシアW杯でのリベンジに向け、大迫勇也は着々とその準備を進めている。


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