2020年東京オリンピック・パラリンピックに隠れがちだが、その前年にはラグビーW杯が日本で開催される。

 

 

 ラグビーW杯は過去8回開かれているが、開催国・地域はいずれもティア1。(北半球ではイングランド、スコットランド、ウェールズ、アイルランド、フランス、イタリア、南半球ではオーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、アルゼンチン)。ちなみにティア(tier)とは英語で「階層」という意味だ。

 

 すなわち日本大会は、ティア1以外では初めてのW杯となる(日本はティア2)。もちろんアジアでは初めてだ。

 

 2015年イングランドW杯で日本はW杯2回優勝の南アフリカを破るなど3勝をあげた。これにより、2019年に向け国内のラグビー熱も高まりつつある。

 

 11月にはジェイミー・ジョセフ新ヘッドコーチの下での初めてのテストマッチが行なわれる。相手は前回W杯4位のアルゼンチン。これまでの対戦成績は日本の1勝4敗。腕試しには絶好の相手と言えよう。

 

 このアルゼンチン戦に照準を合わせ、準備に余念がないのが38歳の大野均(東芝ブレイブルーパス)だ。目下、大野の日本代表キャップ数は日本歴代最多の98。大台まで、あと2つと迫っている。

 

 11月にはアルゼンチン戦を含めてテストマッチが4試合組まれているため、100試合出場達成の可能性はきわめて高い。

 

 ちなみにラグビーではフル代表の国際試合に出場した数をキャップと呼ぶ。17世紀、イングランドでは同じチームの選手が同じ帽子を被って戦い、後に出場の名誉として帽子が与えられた。その慣習に起因するものと言われている。

 

 代表だけではない。トップリーグでも大野はハイパフォーマンスを披露し続けている。

 

 去る9月2日にはNECグリーンロケッツ戦に途中出場して、リーグ史上初の150試合出場を達成。開幕からの4試合全てでピッチに立っている。

 

「本当に謙虚でリスペクトできる選手。練習も休まない。代表選手の手本です」

 大野に最大級の褒め言葉を贈ったのは日本代表前ヘッドコーチのエディ・ジョーンズだ。

 

 それを受けて、大野は語ったものだ。

「チームで一番体の大きい人間が痛がったり、弱っているところは見せられない。士気が下がりますから。強がらなきゃいけない時もあるし、すぐに立ち上がって走らないと……」

 

 ラグビー王国と言えば、W杯で3度の優勝を誇るニュージーランドだが、子供たちが最も憧れるポジションがロック(LO)だという。もちろん、大野もこのポジションに誇りを持っている。

 

「世界的に見れば、僕はLOとしては小さい方。しかし、まだまだ強くなれる。技術的にもうまくなれると信じています」

 

 38歳のモットーは「灰になっても、まだ燃える」。過去、日本で40歳を超えてW杯に出場した選手はいない。「現役である以上は……」。静かに3年後を見据えている。

 

<この原稿は『サンデー毎日』2016年10月9日号に掲載されたものです>

 


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