ポストシーズンゲームともなれば、スターターの中3日は珍しくない。しかし、先発して110球を投げた後、中1日でリリーフのマウンドに立ち、中2日おいて、また先発というハードワークには驚いた。ドジャースのエース、クレイトン・カーショーのことである。

 

 メジャーリーグで3度のサイ・ヤング賞に輝くカーショーと言えば、当代きってのサウスポー。ドジャースでは広島から移籍してきた黒田博樹とメジャー同期にあたる。大車輪の活躍を見ていると、まるで黒田の“男気”が乗り移ったかのようだ。

 

 ポストシーズンゲームの戦い方とレギュラーシーズンのそれは全く別物である。思い出すのがダイヤモンドバックスとヤンキースとの間で行われた2001年のワールドシリーズだ。

 

 ダイヤモンドバックスには2人の大エースがいた。右のカート・シリングと左のランディ・ジョンソンだ。レギュラーシーズンの成績はシリング22勝6敗、ジョンソン21勝6敗。監督のボブ・ブレンリーは、シリングを初戦、4戦、7戦、ジョンソンを2戦、6戦に先発させた。必勝シフトだ。

 

 驚いたのは第7戦、1点ビハインドの8回途中である。前日、104球を投げたばかりのジョンソンがリリーフのマウンドに上がったのだ。リードしているならまだしも、負けている場面である。4つのアウトを奪ったジョンソンの男気なくしてダイヤモンドバックスの世界一はなかった。

 

 そこでジョンソンである。といっても、こちらは広島のサウスポー、クリス・ジョンソンだ。横浜DeNAとのCSファイナルステージ初戦では3安打完封勝ちを収めた。昨季14勝、今季15勝。広島で最も頼りになるピッチャーである。

 

 北海道日本ハム有利が伝えられる22日から始まる日本シリーズにおいて、広島に勝機があるとすれば、ジョンソンの起用がはまった時だろう。中3日で1戦、4戦、7戦に先発させるというのは愚策だろうか。疲労が心配だというのなら、シーズン途中でリリーフから先発に回ったブレイディン・ヘーゲンズを7回専用に戻し、ブルペンを厚くするという手もある。日本シリーズに5人も先発はいらない。さてシリーズ初陣となる緒方孝市監督は、どう出る!?

 

<この原稿は16年10月19日付『スポーツニッポン』に掲載されています>


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