初めての試みとなった日本代表候補のGK合宿。浦和レッズの守護神・西川周作をはじめ新顔のシュミット・ダニエル(松本山雅FC)、リオ五輪代表の中村航輔(柏レイソル)ら国内組のGK計6人が招集され、大阪府内のトレーニング施設でヴァイッド・ハリルホジッチ監督やGKコーチの指導のもと、みっちりと汗を流したようだ。

 

 このGK合宿は、指揮官の強い要望で実施されたと聞く。11月には首位を走るサウジアラビアとのホーム戦が待っているだけに、Jリーグ再開までのわずかな時間を使って強化を図れたことはハリルホジッチ監督にとっても有意義だったに違いない。

 

 1-1で引き分けたオーストラリアとのアウェー戦。

 指揮官が最初の交代カードを切ったのは後半37分(小林悠→清武弘嗣)だった。続けて本田圭佑を浅野拓磨に、終了間際には原口元気を丸山祐市に替え、結局は3枠を使い切っている。後半途中から前線の選手たちの疲労度が色濃くなっていたため、引っ張り過ぎた感は否めない。報道によれば、指揮官は会見の席で交代についてこのように述べている。

「オーストラリアはFKやCKでしか点を取れないので、そこを管理する選手が必要だった。本田と小林は(守備時の)FKで正確な役割を果たしていた。齋藤(学)や浅野のような経験がない選手ではプレッシャーに負けてしまうのではないかという不安もあった。フレッシュな選手を出すべきだったかもしれないが、危険なのはFKだけだったのでそのための選手を入れた」

 

 相手のセットプレーに対する処方箋として本田、小林を交代させづらかったこと、新たに丸山を入れたこと。そして攻撃的な手としては、齋藤、浅野の名前を挙げ「プレッシャーに負けてしまうかもしれない」と起用しなかった(浅野の場合は投入のタイミングが遅れた)理由を語っている。

 

 アウェー、それも首位を走るオーストラリアを相手に1-1という展開ならば確かにリスクマネジメントに重点を置く采配は理解できる。ただ、もしハリルホジッチ監督がキレキレの齋藤を手元に置き、もっと指導する時間があったらどうだったか。

 

 リアリストの監督ではあるものの、守備的な手当てではなくて最後の最後に勝ち切る可能性に懸けたかもしれない、と筆者は思った。「プレッシャーに負けてしまうかもしれない」とは、信頼されていないことを表している。選手が信頼を得るのは何も試合ばかりではない。監督がトレーニングの段階から「この選手は最後に何かやってくれそうだ」と感じれば、積極的な交代に打って出る可能性もあったのではなかったか、と。

 

 ハリルジャパンは欧州組が主体である。

 所属チームで出場機会に恵まれない状況でも、ファーストチョイスは彼らであることに変わりはない。国内組にも、調子のいい選手はいる。だが呼ばれなかったり、使われなかったりするのは、Jリーグを視察できても直接指導できないことと無関係ではないように思えてしまう。

 

 国内組の底上げは、日本代表にとって不可欠。過去の代表を見ても国内組で基盤をつくって底上げをすることで、チーム全体のレベルアップを呼び込んできた。欧州組よりも国内組の方が代表の活動に参加できるというメリットを活かさなければならない。

 

 昔と比べると、監督が直に指導できる強化合宿の回数が減っている。今年、国内組代表候補の強化合宿を行なったのは今回のGK合宿以外では3月のみ。Jリーグのチャンピオンシップ制移行など年間カレンダーがパンパンで、合宿に時間を割く余裕がないという事情はわかる。しかしながら日本代表がW杯本大会に出場できなくなれば、その影響はJリーグにも必ず出てくる。

 

 監督におんぶに抱っこでいいわけがない。日本協会もJリーグも、代表監督をさらにバックアップしていく必要がある。

 その意味でGK合宿はヒットだった。全体練習が難しいというなら、次はストライカー合宿などいかがだろうか。


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