161028iyo 今月1日から本大会がスタートした第71回国民体育大会「希望郷いわて国体」は11日に幕を閉じた。伊予銀行テニス部は愛媛県代表として成年男女の部に出場。男子は6位、女子は優勝でテニス競技の総合成績4位に貢献した。特に女子は過去最高の3位を上回る成績で男女通じて初の国体制覇だ。

 

 

 1年後に行われる地元開催の「愛顔(えがお)つなぐ えひめ国体」へと大きな弾みをつけた。

 

 2日に開幕した成年女子の部にはプロ選手としては初の国体出場となる波形純理と、伊予銀行3年目の長谷川茉美がエントリー。秀島達哉監督も自信を持って送り出したコンビだ。第1シードに入った愛媛は、まず1回戦で高知県代表にストレート勝ちした。第1シングルスに登場した波形が8-1、第2シングルスの長谷川が8-3と危なげなく2回戦へとコマを進めた。

 

 国体は今年も8ゲームプロセットセミアドバンテージ方式を採用している。通常の大会での3セットマッチとは違い、出だしで相手にペースを許すと、そのまま押し切られてしまうこともある。ゆえにアップセットが起こりやすいレギュレーションである。

 

 愛媛は続く2回戦も兵庫県代表にストレート勝ち。準々決勝では埼玉県代表と対戦した。秀島監督が「これが次戦以降につながっていた気がします」とキーポイントに挙げる試合だ。実は岩手入りする前からの長谷川は、あまり調子が良くなかった。秀島監督によれば「力が入っていたことと、ボールへの入り方が遅かった。それなのに腕の力だけで打っていて、手打ちになっていたことが原因でした」という。それを現地して入りからの練習ドリルと、適度な緊張感で試合をこなしていくことで、クリアしていった。

 

 波形が流れを作り続けたことで、長谷川もそれに乗れた。埼玉戦では波形が8-0でバトンを渡すと、長谷川も8-3で続いた。次の準決勝も秀島監督が「歯車が噛み合った」と胸を張ったように、静岡県代表相手にいずれも8-0という完勝だった。指揮官は「2人も楽に勝ち上がったわけではないが、要所要所を抑えてくれた」と称える。波形と長谷川のコンビは一度もダブルスも回ることなく、愛媛初の国体決勝進出を果たした。

 

161028iyo2 迎えたファイナルは第2シードの京都府代表が相手だ。大会前から秀島監督も「要注意」と勝ち上がりを予想していた強豪。愛媛側としてみれば、対策は万全なはずだった。だが、それは京都にしても同じ。第1シングルスの波形はいきなり1-5と大きくリードを許す苦しい展開だった。8ゲーム先取ということを考えれば、かなり厳しい状況と言ってもいい。

 

 窮地に追い込まれても、グランドスラムにも出場経験のあるベテランは冷静だった。「流石にプロ。ペースを落として、そこからしつこいテニスに切り替えた」と秀島監督は舌を巻く。徐々にペースを掴んでいくと、5ゲーム連取で逆転に成功した。タイブレークまでもつれた熱戦を制し、9-8で第1シングルスを取った。

 

 このまま第2シングルスも取って、優勝を決めたかったが、長谷川は7-9で落とした。第13ゲーム終了時点では7-6とリードしていたものの、タイに戻される。すると試合途中で足がつるアクシデントにも見舞われてしまう。そのまま相手に押し切られ、勝負は最終戦のダブルスへと持ち越された。

 

 幸いにも長谷川が痛めた足は軽傷だった。波形とのダブルスは問題なく組めた。この時点で3時間半近く経過していた熱戦は、ダブルスになっても拮抗した。デュースが続き、ブレーク合戦。勝負所で力を発揮したのは、9学年下の長谷川だ。思い切ったプレーをして、それがうまくハマった。リターンゲームでストレートを多用。それが効いたことで、長谷川が前衛でネットプレー、波形の後衛からのストロークも噛み合った。最後は相手を突き放し、8-5で競り勝った。愛媛に初の栄冠をもたらした。

 

 秀島監督は4日間の戦いをこう総括した。

「愛媛国体も波形は中心になる。今年は波形と長谷川でどういう展開になるか試金石だった。長谷川がよく頑張って結果を出してくれたことは大きい。ただ課題もいっぱいある。愛媛国体に向けて修正しなければいけないところも見えてきた。非常に意味のある岩手国体でした」

 

 大黒柱・波形を軸に岩手の地で結果を残した成年女子。笑顔で終えて、来年へと期待を繋いだ。今大会は6位の男子も、来年はプロの片山翔が県代表争いに加わり、大きな力になる。当然、更なる躍進が望まれる。4位だった男女総合成績も目指すは頂点。愛媛国体まで残された時間は多くない。愛媛県、そして伊予銀行の戦いは続く――。

 

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