A代表は今月、W杯アジア最終予選が2試合ありました。6日のホーム・イラク戦は2-1で勝利を収め、11日のアウェー・オーストラリア戦は手堅く1-1で引き分け。日本は勝ち点7の3位です。11月11日にカシマスタジアムでオマーンと親善試合を行い、15日にはホームで最終予選B組首位(勝ち点10)のサウジアラビアを迎えます。オーストラリア戦での勝ち点1を意味のあるものにするためにも、しっかりとサウジアラビアに勝利して欲しいです。

 

好調の大迫がメンバー外

 

 10月の代表戦では、ドイツ・ブンデスリーガで2試合連続ゴールを決めていたFW大迫勇也の招集が期待されました。ですが、結果は選外。手続きの関係上、海外組には2週間前に招集レターを送らなければなりません。ヴァイッド・ハリルホジッチ監督は「大迫が点を取り出したのは(2週間の期限を過ぎた)その後だった」と、大迫を選外とした理由を説明しました。これはタイミングの問題。大迫には10月に選外になったことを発奮材料にして、11月の試合では招集されるように頑張って欲しいです。

 

 また海外組の中ではクラブチームで出場機会に恵まれていない選手が多いですね。これを受けて、「試合に出ている国内組を使ってほしい」という意見が目立ちます。海外で試合に出場していない選手を代表で起用すべきか、それとも起用しない方が良いのか。僕は起用しても良いと思います。彼らは、自分がどの位置にいて、何をしないといけないと常に考えています。それに普段から海外で揉まれ、外国人のフィジカルコンタクトの強さに慣れている。したがって、海外組を起用することに僕は賛成です。

 

 海外組が重宝されることで国内組が士気を落としてしまっては良い競争が生まれません。むしろ海外組の調子が悪い時に「自分が代わって試合に出て、もっといいパフォーマンスをしてやる」という意欲や向上心が欲しい。出場機会を得るには、単純に実力で海外組を上回ればいいわけです。そういったライバル心が日本代表の選手層を厚くするのではないでしょうか。国内組には、もっとレギュラーを脅かす活躍を期待したいです。

 

タイトルを獲らないとわからないこと

 

 国内の大会に目を移すと、ルヴァンカップ決勝が15日に行われました。ナビスコカップから大会名称が変更になって初の決勝とあって注目度も高かったですね。対戦カードは浦和レッズ対ガンバ大阪。PK戦までもつれた熱戦で、勝利を手にしたのは浦和でした。

 

 この試合、浦和は開始早々に失点しました。いつもの浦和ならば、焦って攻め急ぎ、カウンターを食らい2点目を相手に与えてしまう。しかし、今回は苦しい時間帯を耐え抜いて、セットプレーから途中出場のFW李忠成が同点ゴールを決めました。その後も粘り強くゲームを進めたことが優勝に繋がりましたね。

 

 ハーフタイムにFW興梠慎三が「守備陣がこれ以上、点を入れられなければ、絶対オレたちが1点とる。とりあえず0-1で耐えてくれ」とチームメイトに声をかけたようです。鹿島アントラーズで多くの優勝を経験した興梠の言葉がチームを落ち着かせて、結束させたことは僕も嬉しいです。

 

 我慢を覚えてタイトルを獲得したことは、浦和にとってすごく大きいでしょう。栄冠を手にするためには、時にしぶとく耐えることも必要です。プレッシャーの懸かる一戦で、いつも通りの綺麗なサッカーができるとは限りません。大舞台での勝ち方を知った浦和はJリーグのセカンドステージも制するのではないでしょうか。

 

 2ステージ制およびチャンピオンシップ制は今年限りです。ファーストステージ覇者・鹿島の“赤”と浦和の“赤”の対決が見られれば面白いなと思います。

 

●大野俊三(おおの・しゅんぞう)

<PROFILE> 元プロサッカー選手。1965年3月29日生まれ、千葉県船橋市出身。1983年に市立習志野高校を卒業後、住友金属工業に入社。1992年鹿島アントラーズ設立とともにプロ契約を結び、屈強のディフェンダーとして初期のアントラーズ黄金時代を支えた。京都パープルサンガに移籍したのち96年末に現役引退。その後の2年間を同クラブの指導スタッフ、普及スタッフとして過ごす。現在、鹿島ハイツスポーツプラザの総支配人としてソフト、ハード両面でのスポーツ拠点作りに励む傍ら、サッカー教室やTV解説等で多忙な日々を過ごしている。93年Jリーグベストイレブン、元日本代表。

*ZAGUEIRO(ザゲイロ)…ポルトガル語でディフェンダーの意。このコラムでは現役時代、センターバックとして最終ラインに強固な壁を作った大野氏が独自の視点でサッカー界の森羅万象について語ります。


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