欧州の所属クラブでポジションを勝ち取れ――。

 日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督が号令をかけるなか、レスターのFW岡崎慎司やインテルのDF長友佑都、ドルトムントのMF香川真司が出場機会を増やし始めてきた。MF清武弘嗣(セビージャ)、MF宇佐美貴史(アウクスブルク)たちは依然として厳しい戦いを強いられているものの、成熟期にある20代なかばの彼らにはさらなる奮起に期待したい。

 

 一概に年齢でくくるつもりはないが、30歳以上のプレーヤーとなると出番を求めて移籍を模索することも簡単ではなくなってくる。ACミランで苦境を抜け出せていないMF本田圭佑の動向は非常に気になるところだ。

 

 本田は大きなチャンスを逃がしてしまった。

 10月25日のアウェー、ジェノア戦で今季初先発。右ウイングで起用されたものの、シュートゼロに終わって後半17分に途中交代。前半11分には味方がオフサイドトラップを仕掛けたところで最終ラインに1人残ってしまい、失点にも絡んだ。ヴィンチェンツォ・モンテッラ監督からの信頼を得ることができなかった。

 

 冷遇が続く本田に対してイタリアの現地メディアは今冬、移籍の可能性を報じている。来年6月でACミランとの契約が切れるため、クラブ側が移籍金を得るには今冬のタイミングで放出するしかない。今のところACミランが本田に対して契約延長をオファーしたというニュースは届いていない。

 

 移籍先の候補としてメディアが報じているのが、中国スーパーリーグの上海上港、江蘇蘇寧、米MLSのクラブなどである。今夏はエバートン、サンダーランド、クリスタルパレスら英プレミア勢からのオファーがあったようだが、出番のない「ミランの10番」に対して引き続き関心を持っているかどうかは定かではない。

 

 ACミランは今年8月、中国資本への株式売却を発表しているだけに、中国とのパイプは太い。

 上海上港は2005年にスタートした新しいクラブ。元イングランド代表監督のスベン・ゴラン・エリクソンを招き、JリーグでもプレーしたFWフッキを60億円以上の移籍金でロシアのゼニトから獲得している。ACL(アジアチャンピオンズリーグ)は準々決勝で敗退しており、さらなる補強がウワサされていた。

 

 また江蘇蘇寧もチェルシーからMFラミレスを獲得。資金力にモノを言わせて「爆買い」を続けているクラブである。中国資本が絡んでいるクラブから日本代表のエースを獲得しようとする動きが出るのは自然な流れだ。

 

 移籍金は4億円程度と見られている。そう考えるとJリーグのクラブが手を挙げてもいい。本田というビッグネームを営業利益に結びつけられれば、むしろ安いぐらいではないだろうか。

 

 Jリーグは来季から英動画配信会社のパフォームと10年、約2100億円の大型契約を結んだ。クラブへの賞金も増額を図るため、「本田獲り」は絶好のタイミングだと言える。本人に欧州を出る選択肢があるのなら、資金力のあるJリーグのクラブには積極的に動いてもらいたい。

 

 もし本田が日本でプレーすることになれば、Jリーグ人気復活の起爆剤にもなる。代表の強化合宿にも参加することができ、日本復帰は本田にとっても決して悪い話ではないはずだ。

 

 セルティックで活躍した中村俊輔は31歳で横浜F・マリノスに復帰し、2013年シーズンには自身2度目となるJリーグMVPを獲得している。

 

 日本サッカーの未来のため。

 欧州で活躍した選手が日本に戻って経験を還元する。その流れを定着させていくためにも、本田には日本復帰をぜひ検討してもらいたいものである。


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