松山聖陵(愛媛)のエース、アドゥワ誠については、この夏、当欄でも触れた。そのアドゥワが先のドラフトで5位指名された。私の目には“ダイヤモンドの原石”のように映る。

 

 周知のようにアドゥワはナイジェリア人の父とダイエーでプレーした日本人バレーボール選手との間に生まれた。身長は196センチもあり、ヒョロっとした印象だが、逆にそれだけ鍛え甲斐があるということだ。

 

 前回のコラムでも書いたが甲子園での北海(南北海道)戦、ピンチの場面ではギアを一段上げ、内角をビシビシと突く度胸には恐れ入った。もっとノーコンかと想像していたが、そうではなかった。ここ一番ではプロですぐにでも通用しそうなボールを投げていた。

 

 スカウトに聞くと「2、3年じっくり2軍で鍛える」という育成方針のようだ。同感だ。プロで20年はメシが食える下半身をつくって欲しい。

 

 しかし、私は、案外早く1軍で活躍しそうな気がしている。来季は無理でもオリンピックが東京で開催される頃にはローテーションの一角を担っているのではないか。

 

 高校時代の関係者に話を聞くと、確かに下半身はまだ細いが、決して弱くはないとのこと。体のバネや柔軟性には天賦の才を感じるという。

 

 最速は145キロだが、あれだけの長身から、しかも腕が遅れ気味に出てきたら、バッターはタイミングが取り辛いだろう。リーチが長いのも魅力だ。18.44メートルの距離がバッターには数字以上に近く感じられるのではないか。

 

「これは思わぬ掘り出し物だ」「よくこれほどの素材が5位まで残っていたな」。キャンプが始まるや、評論家からは、こんなコメントが聞かれるのではないか。本人は、「しっかりと体をつくって3、4年後には活躍できるようにしたい」と抱負を口にしている。

 

(このコーナーは二宮清純が第1、3週木曜、書籍編集者・上田哲之さんは第2週木曜を担当します)


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